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ごはんについて書くための習作44

東海道新幹線の回数券(6枚綴り)は残り3枚。往復で使っていれば偶数枚残っているはずだが、奇数になっているのは先週実家に帰った妻に1枚渡したから(帰りは私が車で迎えに行った)。その残り3枚の回数券のうち1枚を取り出し、歩く速度を変えずに改札に通そうとすると紙の端が隙間にうまく入らず、足を止めて入れ直した。私は回数券をポケットから取り出す前、駅の中にあるパン屋で少し早いが昼食を済ませていた。

今日は13時から印刷会社との打ち合わせがあり、都内へ向かっている。新術御苑あたり。ウェブデザイナーの私は印刷会社との打ち合わせ、というものを多分、やったことがない。単身。うまくできるだろうか。
午前中、別件の制作チームだけの打ち合わせを終え、11時過ぎに家を出た。少し雨が降っている。傘はまだ必要ないがメガネが霧吹きで吹かれたように濡れるので、アーケードのある側を選んで駅まで歩く。都内で昼ごはんを食べるのも何となくリスクを感じて、乗車予定の新幹線まで30分あったので駅にあるパン屋で「カレーパン on カレー」を食べることにする。

右の窓に目をやると広い空き地に同じ型で同じ色のトレーラートラックの頭部分(荷物を繋いでいない状態)が何十台も並んでいるのが見えた。視界から消える前に下りの新幹線に視界を遮られる。この文章は東海道新幹線上りの1両目(進行方向に対しては一番後ろ)に乗りながら書いている。

店内は思った以上に混んでいて、外のロータリーに向かって座るカウンターに空きがあったので、そこに座ろうと決めた。荷物は席に置かず、注文する。「このメニューはご飯が入っていない代わりに、カレーパンが乗せられているものですが大丈夫ですか」と聞かれる。「大丈夫です」と何度か注文したことが伝わるような余裕を感じさせる優しさを含めて返事をした。
一緒に注文したカフェラテと紙ナプキンの上に乗せられたナイフとフォークとスプーンが乗ったトレーを持って席につく。駅に向かう時には見えにくかった雨が、ロータリーの奥にある高台の黒い壁とのコントラストではっきりと見える。たくさんの小さくて落ちる速度の遅い雨粒が見える。雨粒の中にパン屋に何かを納入するための車が停まり、青と水色のコンテナが薄緑色の運ばれているのが見える。運んでいる人の制服は白と薄緑色。

終点東京が近いアナウンスが聞こえる。ここで一旦パソコンを閉じる。

ここから帰りのロマンスカーの車内で書いている。

乗車時間的には一本前のEXEに乗れたが、赤いGSEの方が好みなので、新宿駅のロマンスカー乗り場にあるカフェで生ビールを飲みながらEXEを見送る。そのカフェはロマンスカーの線路の始点(もしくは終点)の目の前にあり、カウンター席に座ると目の前、正面にロマンスカーが入ってくる(もしくは出ていく)。
このカフェのカウンターと、ロマンスカーの線路の切れ目の間には通路があって。カウンターから見て右手が乗り場、左は普段使ってないホームなのだが、このカウンターと線路の切れ目の通路の先(使ってない左側のホームの手前)にはちょっとしたスペースがあり、ベンチもある。人混みを避けて、ロマンスカーを正面から見れる場所なのだが、あまり利用する人はいない。入っていいのかどうか少し迷う雰囲気がある。
今日は60代くらいの男性が座っていた。肩掛けのビジネスバッグの中からお菓子を取り出して食べている。チャック付きの透明な保存袋に、小分けになっていない歌舞伎揚の大袋が収まっている。湿気らないようにしているのだろう。こんな時間にビールを飲んでるのが気になるのかチラリチラリとこちらを見ている気がする。

私がビールを飲んでいる間、彼は歌舞伎揚をいくつか食べて、私とロマンスカーの間の通路を通って右側の賑やかな乗降するホームに向かっていった。
ここをロマンスカー新宿駅の淵とした。淵とは河川の流れが穏やかで深くなっている部分を指す。

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