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AIが変えるUC「ロービジョン革命から」

「ロービジョン」(視力障碍)は、生まれつきの人もいますが、不慮の事故や病気、また高齢化により引き起こされます。メガネやコンタクトなど通常の矯正方法では、見え方が足りません。ルーペ(拡大鏡)を活用して読書したり、日常生活に不便を強いられます。

高齢化により最近は、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、角膜混濁などの眼疾患によりロービジョンなってしまうケースも増えているようです。色や物、人を識別できない日常生活は、ほんとに大変です。

眼は、社会の窓。私たちは生活する上で多くの情報を、眼から得ています。聴覚、味覚の前に、まず視力。他者を判断する時でも私たちは、脳と直結した相手の眼から情報を読み取ろうしますよね。それほどに眼は重要です。

ロービジョンは、快適な日常を奪ってしまいますから「不便を我慢して生活」せざるを得ないのですが、テクノロジーの進歩はすごいですね。AIが世の中を変えつつあります。

人間から仕事を奪うとされるAIが、同時に、人間の平等性を高めてくれるのです。ノーマライゼーションが目の前に来ています。

参考までに、ノーマライゼーションは1950年に提唱されました。障害者と健常者が均等に当たり前に生活できるような社会がノーマルであるとする考え方です。

さて、もし、あなたがロービジョン生活を送ることになったとします。あなたの生活はどう変わるでしょう。仕事をしている人は、今の仕事を続けられますか?

資料を読めない。取引相手の顔が分からない。金銭のやり取りができない。車や徒歩、電車で移動できない。家でも、料理、掃除、洗濯、色や形を識別できなくなったらどうなりますか。

進化するロービジョン支援システム

【1】メガネに着けるOrCam MyEye 2(オーカムマイアイ2)

OrCam MyEye 2(オーカムマイアイ2)は、ネット接続を必要としないスマートデバイスです。本、雑誌、資料、メニュー、道路標識も全て読み込むことができますし、もちろん、スマートフォンやPCなどのデジタル面も読み取れます。

デバイスは高齢者含めて誰もが簡単に操作できますし、機能を追加すればスーパーの商品のバーコードも認識します。もちろん、様々な製品のパッケージは、文字読み取り機能を使用して読み取ることができます。

しかも、顔、色、紙幣なども全て認識します。あらかじめ登録しておけば、知人や親戚が来た時に人名を案内してくれるわけです。

買い物で、財布から札を出せばその種類を読み上げ、着替える時には服の色をガイドしてくれます。もちろん日本語対応。

オーカムの難点は価格が高いこと。自治体によっては給付制度が使えるようです。詳しくはこちら。

【2】視覚障害者の「目」になるアプリ Seeing AI(シーングアイ)

Microsoftが開発しているSeeing AI は、文章を読み上げる、色を読み上げる、カメラで見た景色を言葉で伝える、お金の種類を読み上げるなど、スマホやアイパッドのカメラが捉えた画像を分析して、声で情報を教えてくれるアプリです。iPhone、iPadで無料利用出来ます。

クラウドとAIの力を組み合わせて、1日のナビゲートを支援するように設計されています。障害者をAIで支援する5年プロジェクト「AI for Accessibility」の一環で、2500万ドルの予算が組まれているそうです。

短文 テキストがカメラの前に表示されると瞬時に読み上げる。
印刷物 撮影して読み上げる前に、音声ガイダンスで撮影案内してくれる。
人物 事前に登録した人物を認識、音声で知らせる。
通貨 紙幣を識別し音声で知らせる。表裏、逆さでも認識可能。
風景 AIが周りの状況を音声で説明。
  カメラが捉えた色を識別、音声で説明。
照明 音で現在の部屋の明るさを知らせる。

ユニバーサルデザインが常識になる

「AI for Accessibility」のアクセシビリティとは、ユーザビリティと同義語。ユニバーサルデザインの概念に基づくものです。

ユニバーサルデザインは、バリアフリーよりも一歩進んだ考え方で、社会からバリアを取り除いていくのではなく、全てのデザインが最初から、誰もが平等に使えるように設計されるべきという考え方。

先般、駅員のいない駅での車いす利用者とのやり取りが話題になりましたが、ユニバーサルデザインの基本原則に則り、鉄道側が日本政府の進めているUG概念を理解、予測対応しておくべきだったといえるでしょう。

UGは、車イスだけでなく、乳母車、足の悪い人、障害者、子供、日本語の読めない外国人全てに公平に対応できる社会を指しており、既に今日、実際の製品設計にはUGが奨励されています。

【参考】ユニバーサルデザインの7原則

原則1 誰でも公平に利用できること
    例・スロープ・エレベーター
原則2 使う上で自由度が高いこと
    例・右利きも左利きも使えるハサミ
原則3 使い方が簡単ですぐわかること
    例・音響機器などのコードとプラグの色分け
原則4 必要な情報がすぐ理解できること
    例・信号機のように色・音・床面なども活用
原則5 うっかりミスや危険につながらないデザインであること
    例・扉を開けると加熱をストップする電子レンジなど
原則6 無理せず、少ない力でも楽に使用できること
    例・レバーを上下すれば使える水道蛇口
原則7 アクセスしやすいスペース・大きさを確保すること
    例・多機能トイレ、商業施設の駐車場など

このようにピックアップしてみると、ユニバーサルデザインは、ロービジョンだけでなく、様々な人に恩恵をもたらすことが分かりますよね。AIが、これを進化させています。

視覚障害の95%はロービジョンだと言われています。日本眼科医会によると、ロービジョンの症状に悩む日本人は約150万人に上り、多くの人が生活するうえで困難を抱えているそうです。誰もが日々を快適に過ごせるような、やさしい社会になってほしいです。

そういえば、すでに頭の中で考えるとAIが回答してくれるウェアラブルの試作品も完成しています。このプロジェクトは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)やMS(多発性硬化症)などの言語障害を持つ人々のコミュニケーションを支援することができます。

しかしコレ、人間とコンピューターをシームレスに統合する可能性があるため、将来、AIが頭脳に統合されて「第二の自分」に進化する可能性もあるとか。そう考えると、ちょっと怖い???。