『相談支援の処「法」箋――福祉と法の連携でひらく10のケース』(現代書館)

 弁護士の青木志帆さんの新著『相談支援の処「法」箋――福祉と法の連携でひらく10のケース』(現代書館)を読みました。帯の謳い文句には「断らない相談支援――この「無茶ぶり」に備えるために」とあり、出てくるケースも、高齢者、障害者、ギャンブル依存、ひきこもり、シングルマザー等多種多様。そして、この本の最大の特長であると思われるのが、それらが微妙に絡まったケースばかりで、より実態に迫ろうとしているところです。実際問題として、相談が持ち掛けられるケースというのは問題が複合していることが多いはず。高齢者の問題だと思えば、実は子どもが障害者で…というケースも少なくないはず。青木さんのこの本は、問題ごとの「縦割り」にとらわれないで、あらゆる分野のノウハウを使って複合的な問題を解決しようとしており、リアリティーに即したものとなっています。
 障害者分野からは、障害者差別解消法の合理的配慮という概念を非常にわかりやすく解説されています。ケーススタディとしては、「人工肛門をつけた人が市営プールの使用を禁止された。プール側は、もしもプールを汚した場合多額の損失があるというが、これは障害者差別にあたるのだろうか?」というもの。この本には、プール側にこうしたことを言われたときに、どう考えていけばよいか、ということが書かれています。
 私は、この本を読み、人々が本当に多様であることを改めて認識させられました。同時に、法制度や行政も、多様性を前提とした設計を望まれると強く思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?