
穴①
横浜での小学校高学年くらいの頃の話。
近所に鶴見川というそれはそれは汚い川(当時日本で2番目に汚いと報道されていた)があり、その川沿いには何段か増水に備えた段差が設けてあった。
その段差の一番上はサイクリングロードになっていて、友達何人かと自転車でよく目的も特になく遊びに行っていた。
ある日穴を見つけた。
サイクリングロードの1つ下の段のコンクリートが途切れて、そこに大きなトンネルのようなものがあった。
直径で2.5メートルくらいだろうか。川に向かっていくように掘られたその大きな穴は、水路の様で、少しだけ水が流れていた。
僕たちは気になった。
一体この穴はどこに繋がっているのか?
こうなると小学生男子は入るしかない。
穴の出口(僕らにとっては入り口)から川まではやや距離があり、一旦平坦なスペースがあったあと川に向かって急な下り坂になっていて、どこからか来た水が川に流れ込むといった具合だ。その水が一体どこから来るのか。
僕らは穴の上に自転車を止めて、段々を降りて、平坦なスペースから穴の入り口に降りて恐る恐る入っていく。
足下を幅40cmくらいちょろちょろと水が流れていた。流れる水に足を入れないように、SASUKEのファーストステージの一番最初の飛び石の要領でまたぎながら足を進めると、急に筒状だった道が開けて、右側に2畳くらいのスペースとそこに椅子が置いてあった。
今考えるとそんな訳はないが、誰かがそこで暮らしている形跡だと思った。
外の光が届くのはこの辺りまでで、そこから先は真っ暗で進めない。とりあえずこの謎のスペースを探索すると、壁に赤いスプレーで大きく「3」と書いてあった。
「ぎゃー!!3だー!!」
と言ってみんなで外に飛び出した。
なぜ3が怖かったのか分からないが、必死で外に出てみんなで怖い怖いと言って爆笑した。
翌日の学校での話題は穴の事ばかり。
「もう一回行こう」
「次は長靴を履いて行こう」
「懐中電灯もいる」
みんな口々に計画を話した。
数日後、家から各々懐中電灯と長靴を持ってまた穴に集まった。
つづく
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