僕とぴろとのキッチントーク
家に新しい同居人が来てふた月が経とうとしている。
彼の名前はぴろ(from.キュウ)。
同い年で、物静かで、波長が合う。
何かにつけて意見も合う。
でも当然住んでみて分かる違いもある。
ぴろの靴は二足だけ。同じ靴。交互に毎日どちらかを履く。履き潰したらまた同じ靴を買う。
僕のスニーカーは15足全部adidas。汚れたらJASON MARKのスニーカークリーナーで洗う。
ひょんな事から一緒に住むようになったぴろと、話し込む事が多い。
今までの生活ではそんな事は無かった。
なぜなら前の同居人は、朝起きて洗濯をしてバイトに行き、昼過ぎに帰って来て夜またバイトに行き、決まった時間に帰って、決まった時間に寝るタイプ。
非常に規則正しい生活をする巨大快便役人サイコオネエだったから。
夜、我々は各々の部屋を隔てるようにあるキッチンに、ぴろはハイボール僕はコーヒーを片手に集合する。
いつも決まって、売れたかどうかの確認をする。
ご存知の通り2人共売れていないが、一応の確認だ。売れた気がした日もあったが、気のせいだった。
そこから延々と、主に精神について近況を交えて話すのだが、最近あった事や思ったり感じたりした事を人に話すのはいい。
喋りながら整理されていくし、気づく事も多い。喋りながら、
「あ…これ間違った事言ってるな…」
「これ人前だったらやばかったな…」
と思う事もあるがここなら大丈夫。相手はただの仲のいい酔っ払いだ。
話すと同じくらいぴろの話しを聞く。
何も知らないくせに決めつけや固定観念の凝り固まりがひどく、人の話を撥ね付ける大人にはなりたくない。
それにしても(こいつ...何言ってんだ...?)と思う事もあるが、まあ酔っ払いなので仕方がない。
そんな我々でもたまに2人ともが膝を打つ、素敵な結論に至る事もある。至り次第、すぐに紙に書き留めてコルクボードに貼り付けるのがこの家の習慣だ。
今のところコルクボードにはこれが貼ってある。正直何の結論がこれになったのか、よく分からないのもある。『マイク・タイソン』に関しては何の事かさっぱり分からない。
ちなみに我々の大きな議題として、“このキッチンをいかに充実した空間にするか”というものがある。
砂利を敷き詰めて枯山水庭園風に仕上げる、壁をぶち抜いて両部屋にちっちゃな機関車を開通させる、といった名案が出たが、今のところ我々が探しているのは…
樽だ。
一度ジモティで出品されていたがタッチの差で貰い手がついてしまい入手できなかった。悔しい。
我々2人は今、生半可なドンキーコングよりも熱く樽を欲しているので、もし樽が余っている、不要な樽をお持ちの方はご一報いただきたい。
或いは…
こういうドアをお持ちの方もご一報下さい。
コーヒーが飲みたいです。