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ハッピーエンドでもバッドエンドでもなくグレー/映画レビュー『花束みたいな恋をした』

でもそれが生々しいリアルで恋愛の面白さ。

さすが坂元裕二の脚本。独自の細かすぎる皮肉の効いた穿った視点のオンパレードで、終始ボディーブローのように笑わされた。言葉選びとセリフ回しが巧みで、早くも次回の脚本賞ではないだろうか。

思わぬ偶然や共通点が重なり恋に落ちていく男女の物語。2時間で5年分のふたりの時間を追体験しているよう。恋愛あるあるでニヤニヤが止まらない。

やりたいことをやりたくても現実は日々生活していかなくてはいけない。日々“普通”に流され忙しく過ぎゆき、人生において本当に大事な時間、幸せをいつしか忘れてしまう。それですれ違っていくふたり。

特別ドラマチックな展開があるわけではないのに最後までぐいぐい惹き込まれていく。花束とは決して豪華なものでもなく、食卓に飾られるような日常のささやかな彩りなのかもしれない。

クライマックスでの菅田将暉の涙のシーンは見どころだ。有村架純とのふたりがなんとも微笑ましい。

監督の土井裕泰は同じく坂元裕二とタッグを組んだドラマ「カルテット」や、「逃げ恥」、アカデミー賞受賞の映画「罪の声」などと勢いを増している演出家。ユーモアを散りばめ、緩急の効いた間を見事に操る。

文字通り、恋愛が恋しく愛くるしくなる珠玉の作品。

与え合いの恩贈りで巡る世の中になったらいいな。 だれでも好きなこと、ちょっと得意な自分にできることで、だれかのためになれて、それが仕事にもできたら、そんな素敵なことはないですね。 ぼくの活動が少しでも、あなたの人生のエネルギーになれましたらうれしいです。