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カッコ悪くてもカッコ良く生きたい/映画レビュー『ヤクザと家族 The Family』(試写会)

分かっていても、その男にはそれしかなかった。

ヤクザとして生きていくしかなかった男が、不器用ながらも愛を求め続けた物語。しかし時代は変わりゆき、残酷にも社会が存在を抹殺していく。それでも仁義を貫き、家族に憧れ、もがいた先の結末とは…

これは、ただの任侠映画でも救いのない物語でもなく、人それぞれの善も悪もリアルを描ききった作品。

反社への風当たりが厳しくなるなか、それが必要悪だとしても悪は悪だ。駆逐されるべきだと考える人が大多数だろうが、その大多数が当たり前のように生きている社会の裏に蔓延り、誰もが足を踏み入れる可能性がある世界で、そこで実際に生きている人たちがいる。みんな毎日食べていくことに必死なんだ。

そこに斬り込んだ作品。ただ残虐ななかにもクスッと笑える、その世界での日常の掛け合いもあり、緩急の使い方が流石である。みんな同じ人間だ。

『新聞記者』に続き現代社会をエンタメの力で軽やかに抉り、ますます藤井道人監督が面白い映画をつくっている。

目線のカメラで臨場感を演出したり撮影も巧み。そこ反射で映り込まないの?とヒヤヒヤするぐらい。笑

そして綾野剛の三時代を演じ分け、役の一生を生ききった芝居が素晴らしい。舘ひろしは渋すぎし、北村有起哉など実力派名バイプレイヤーたちが周りを固める。どの役もこの人しかいないという見事なキャスティング。綾野剛は『新宿スワン』と『日本で一番悪い奴ら』に続いて、こういう役が定着してきたか。

また主題歌のmillennium parade「FAMILIA」は、常田大希にしかつくれない異次元の曲。

あらゆるパーツにこだわり抜いた珠玉のファミリーでつくり上げた映画である。

与え合いの恩贈りで巡る世の中になったらいいな。 だれでも好きなこと、ちょっと得意な自分にできることで、だれかのためになれて、それが仕事にもできたら、そんな素敵なことはないですね。 ぼくの活動が少しでも、あなたの人生のエネルギーになれましたらうれしいです。