【短歌】「図書館」其の弍

「オオカミ」

東屋で
いねむりしてる
人の背は
顔知る人で
家の無き人

いつもなら
図書館にて
本を読む
名もなき人の
暮らしを奪う

密やかに
身を案じてた
その人の
無事を知って
ホッと息吐く

世の中の
群れに属せず
生きている
名も無き人も
我もオオカミ

陽(ひ)が動き
そろそろ帰る
我の家
声には出さず
「また会う日まで」


あとがき

 いつも図書館で会う人を案じていました。その人は暑い日も寒い日も、静かに本を読んでいました。私は図書館で、その人を見かけると、なんとなく無事を確認していました。

 そんな中、コロナの自粛がありました。その人は、どこで過ごすのだろう。雨を凌げる場所はあるのか、暑くはないか寒くはないか。おそらく彼は、住民票もなく、この地に存在しない人かもしれません。でも私は、その人を存在を知っていてます。その人の静かな日常を奪った、感染症の感染を憎く思っていました。

 寄り道した公園で、その人の姿を見かけた時の、歌です。

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