マガジンのカバー画像

「ヨコハマメリー学」への誘(いざな)い

32
2018年12月12日発売の『白い孤影 ヨコハマメリー』(ちくま文庫)をより深く読み解く上でのヒントをまとめてみました。 宮崎駿の映画『風の谷のナウシカ』を論じた『ナウシカ論』… もっと読む
運営しているクリエイター

#ドキュメンタリー

メリーさんの白塗りに関する補足的な考察

彼女の白塗りを「謎」という人たちがいますが、あれは謎と言うより世代間ギャップではないかという気がします。 自然美を目指す近代美容は、白塗りメイクではなく「素肌を活かすメイクこそが美しい」としています。しかし近代以前の世界では、素肌を隠すメイクの方がむしろ一般的でした。 近代以前の女性はコルセットで腰をきつく締めたり、「バッスルドレス」のようにフレームを入れてスカートを膨らませるなど、服もメイクも不自然でした。 この傾向は日本も同様で、白粉、お歯黒などの風習がありました。

語られずにいるキーパーソン、元次郎さんのほかにいたもう一人の友人

映画「ヨコハマメリー」の主役は、メリーさんではなくシャンソン歌手の元次郎さん。 実際に映画を目にした人の多くは、こう感じたにちがいない。 そのせいだろう。メリーさんを語る際、元次郎さんに絡めて語るブロガーは少なくない。 人によっては、彼女が化粧品を買っていた「柳屋」やクリーニング店「白新舎」、馬車道の老舗レストラン「相生本店」、「ルナ美容室」などに触れるケースもある。いずれも彼女を見守っていた優しい人々のお店で、心温まる交流にじんとなる。 しかし彼女を語る際、ずっと触れら

横浜の街から失われた港情緒が、メリー伝説に与えた影響

拙著『白い孤影』の終盤で書いたように、彼女のイメージはなんども変遷しています。 そのひとつはいまでこそ「終戦後のパンパン」の生き残りのように語られる彼女ですが、80年代当初は「ミナトのマリー」と呼称された、ということです。つまり米兵ではなく、マドロス(外国人船員)相手の女だと捉えられており、文字通り「ミナトの女の伝説を生きる最後の一人だった」とイメージされていたのです。 〈六十代とおぼしきそのおばさんは、白いロングドレスに白いストッキング、おしろいで顔も真白で、全身これ白

メリーさんに瓜二つのハリウッド女優…ほんとうに偶然なのか?

メリーさんのお姫様ドレスと白塗りは、彼女のトレードマークであり、エキセントリックさの象徴でもあります。しかし白塗りで有名なエリザベス一世の件もあります。こういう人は案外珍しくないのかもしれません。 だからという訳ではないのでしょうけれど、とあるハリウッド映画に、メリーさんそっくりなキャラクターが登場しているのです! それは1962年に制作された『何がジェーンに起ったか?(原題:What Ever Happened to Baby Jane?)』という作品です。 天才の誉

友田 健太郎・評 『白い孤影 ヨコハマメリー』檀原照和・著 【プロの書き手による 書評】

2018年の12月に本を出した。 世の中の著者たちは、いったいどうやって自分の本を宣伝しているのだろう? いろいろな方法が考えられると思う。 ・友人・知人への口コミ ・SNSやブログでの拡散 ・イベントをひらく  ……といったところが一般的か。 一通りやってみたが、届いている気がしない。 そこで歴とした文芸評論家に直接書評を依頼することにした。 友田健太郎さん。 慶應義塾大学文学部元講師。群像新人文学賞評論部門優秀作受賞者。書評媒体として有名な『週刊読書人(https:

再生

AI朗読『白い孤影 ヨコハマメリー』プロローグ

2018年12月12日発売の『白い孤影 ヨコハマメリー』(ちくま文庫)を著者自らAIに朗読させてみました。 「プロローグ」のパートをお楽しみ下さい。 (再生時間:24分55秒) 娼婦が変わった格好をしていたのではない。 変わった格好をしていた女が娼売をはじめたのだ。 白いドレスで40年間街角に立ち続けた一人の老婆。 「愛した米人将校を腰が曲がるまで待ち続けた」と噂された彼女だが、ほんとうに「待つ女」だったのだろうか? 年老いるまで、そのスタイルを貫いた意味とは? 地方出身の一女性が、街の都合で伝説に祭り上げられていく過程をひもとく。

再生

AI朗読『白い孤影 ヨコハマメリー』(ちくま文庫)第一部(前半)

2018年12月12日発売の『白い孤影 ヨコハマメリー』(ちくま文庫)を著者自らAIに朗読させてみました。 「第一部」の前半をお楽しみ下さい。 (再生時間:84分) 娼婦が変わった格好をしていたのではない。 変わった格好をしていた女が娼売をはじめたのだ。 白いドレスで40年間街角に立ち続けた一人の老婆。 「愛した米人将校を腰が曲がるまで待ち続けた」と噂された彼女だが、ほんとうに「待つ女」だったのだろうか? 年老いるまで、そのスタイルを貫いた意味とは? 地方出身の一女性が、街の都合で伝説に祭り上げられていく過程をひもとく。

再生

AI朗読『白い孤影 ヨコハマメリー』(ちくま文庫)第一部(後半)

2018年12月12日発売の『白い孤影 ヨコハマメリー』(ちくま文庫)を著者自らAIに朗読させてみました。 「第一部」の後半をお楽しみ下さい。 (再生時間:82分20秒) 娼婦が変わった格好をしていたのではない。 変わった格好をしていた女が娼売をはじめたのだ。 白いドレスで40年間街角に立ち続けた一人の老婆。 「愛した米人将校を腰が曲がるまで待ち続けた」と噂された彼女だが、ほんとうに「待つ女」だったのだろうか? 年老いるまで、そのスタイルを貫いた意味とは? 地方出身の一女性が、街の都合で伝説に祭り上げられていく過程をひもとく。