横浜で謎の「ホームレス歌人」を追った本と引き比べてみる
『白い孤影』を書く際に、念頭に置いた本が2冊ある。
ひとつはあとがきに書いた塩野七生さんの『サロメの乳母の話』。
もうひとつは新潮ドキュメント賞の候補作にもなった、三山喬さんの『ホームレス歌人のいた冬』である。
『ホームレス歌人のいた冬』は、横浜の寿町を舞台にしたノンフィクション作品だ。素性も正体も知れないホームレス歌人・公田耕一を追う物語である。
読者は著者が公田の謎を解いてくれるものと期待して読み進める。しかし同書は二重構造になっており、リーマンショックで「年越し