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抜け感コーデ

 私は芯を食ったお洒落さんではない。

 若い時は髪を長く長くブレーズに編み込み、頭にはターバンをして全身に布を巻いてラスタカラーを好み「ヤーマン」と言ってみたり、18センチの毒毒しいハイヒールにコルセットをぎゅうぎゅうに縛ったまま演奏をしていた時期があったり、フラッパーガールになり切りたい時期もあった。
 見た目上、その3種類に共通項はないが、未だにそれらは私の愛すべきスタイルである。その中のジャンルの小物ならばいつ見ても「ウヒョッ」っと心踊るものだ。
 そこでである。 
 このとこよく見る若者の余裕について気付いた事がある。
 若者の引き算の巧さについてである。

 私は引き算が苦手だ。全て足したい。前述した3種類の違った時代、違った地域発祥の全く違うファッションでも、私を通すとそれぞれのジャンルで引き算なしの盛り盛りコーディネートとなるのが唯一の共通項かも知れない。
 基本的にターバンでも、ビーハイブチックな盛り髪でも、羽根飾りでも頭上に高さは出したい。それに可能ならば全ての指に指輪がしたい。持っているもの全てを装備したい。
 でも、世にも恐ろしい「抜け感コーデ」と言うのが数年前からなんとなく地面を覆っている事は知っていた。これは何も若い子だけのものではなく、幅広い年齢層に受け入れられ急速に発達し、その間に「抜け」の種類は多岐に渡り、流行の息が長いように思う。
 抜けない私は大ピンチである。
 抜けてるっぽいアイテムを見るも、抜けてるっぽいものを全て装備してしまっては無意味だし、そもそも抜きたくない人には無理なのだ。抜け感コーデの芯を食った人のコーディネートは度肝を抜かれるほどに考えられており、彼女、彼達が出掛ける前の支度を覗いてみたくて仕方がない。
 もはやガラスの様に抜けている。何を抜いているのか想像も出来ない。
 かといってそれは「シンプル」なだけかと舐め回すように見てみるとそうではない。色々しているのだ。
 考え抜かれた引き算、また、無意識だとしたらそのセンスは無理だ。敵わない。と感じる。

 それはそれとして、いくらファストファッションを否定する声が聞こえて来たとしても、若い子達のあのアンニュイなオーバーサイズの服に、なんでもないバックパック。そしてざっくり切って少し濡れたまま家を飛び出して来たかのようなだけのように見える髪型に、透けているのに真っ赤に発色するリップ。量産型と呼ばれようがなんだろうが彼女達は、
かわいい。本当にかわいい。

 その他、今には今のストリートファッションを楽しみ、ド派手な子も勿論たくさんいる。でも、でも!何故だかどこかちゃんと抜いていてゴテゴテしながらも爽やかさと脱力感をコーディネイトし、抜いてる感さえ纏う事を忘れない。なんなんだろう。素晴らしい。
 そこで私は思ったのだ。 
 もしや若い子は抜けてるんじゃなくて、自然と抜いてるんじゃないのか?と。
 SNSに支配され、現実とネット社会の区別が付かずゲームにばかり課金している、とか言われるが果たしてそうだろうか?
 ずっとスマートフォンを見ているのは最早年齢は関係ないだろう。
 それに誰でも発信力を持つ今、青少年を守る為に一人でも多くの大人がおかしな事を発言しないよう以前より一層気をつけなければならない事は変わらない。
 それにしても、彼らは無気力かのように見えて本当は柳のようにうまくしなだれる処世の術を既に持っていて、大人より情報の取捨もずっと上手で、半ば諦めも、今日敢えてしてこなかった指輪や髪飾りさえもたっぷりと纏って歩いているのではないか?
 次世代は脱力する方法を若くして体得している。そう感じるのだ。
 そういう「物質の時代は終わる」事を自然と体現できるのが次世代の大人達であり、今の若い子達なのかも知れない。そうじゃなきゃ息勇む年頃にあんなに透明で落ち着いていられないだろう、と思ってしまう。

 ファッションは繰り返しだ、とよく言われる。 
 スケートボードにも波にも乗りやしないのにデカデカとロゴの描かれたストリートブランドが好きだった。
 最近のハイブランドとストリートブランドの激突デカロゴコラボ、ごっつい厚底の靴。私にとっては初めての流行の一週目を感じている所で、とても素敵だと思う。

 そこで私は今夏、産まれて初めて大きなTシャツとスポーツサンダルを買ったのだ。

 少しは抜けるといいのだが。
 しかしまだどうしても目に見える物を必ず頭に付けてしまう。
 あの子達それぞれの「脱力感」を見習い、精進したい限りである。

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アルトサックスプレイヤー/コンポーザー コラムや日記、短編小説を書きます。 演奏動画もアップしていきます♪ 機嫌の取りづらいヴィンテージ楽器の操作と幼児の育児に奮闘中!よろしくお願いします。

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