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11月2日、仙台。

初めて訪れた東北は、空気がひんやりと澄んでいて、少し早い冬のはじまりを感じさせるようだった。

集合場所からバスに乗り込み、最初の目的地・山形県寒河江市へ。ほんの10分前に出会った人たちと1時間半バスに揺られるのは、内心不安だったはずなのに、自然と自己紹介が始まり、気付けば笑いの絶えない車内になっていた。(ちなみに私の周りの席には、ハタチの起業家、服飾学生、ECのコンサルタント、パタンナー、売れっ子漫画家、、、これだけですでに面白い!)

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最初にバスが停まったのは、お昼ごはんのお店「エンドー」さん。山に囲まれたこの土地にイカのスルメを持ってきて、ふやかしたものを揚げて食べたのがルーツとされる、「ゲソ天」で有名なお店。勝手に想像していたランチより、驚くほど豪華でボリュームたっぷりの(あれ、なんだか失礼、、ごめんなさい)お昼ごはんをいただいた。白と黒のゲソ天はもちろん、筋子の乗ったごはんも絶品だったけれど、個人的には、あったかくて具沢山のお味噌汁と、ご当地お漬物の数々が沁みたなぁ、、、。

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そして、こちらでは参加者全員で簡単な自己紹介も。
やっとみなさんのお顔も見られ、いよいよツアーらしくなってきた。「せっかく集ったのだから、一緒に楽しいひとときを過ごせたら」というダイキくんの言葉通り、とっても和やかな雰囲気の昼食会に、緊張が少し解れた気がした。

食後は再びバスに乗り込み、いよいよ工場見学へ。
途中、今回のツアー目的地の1つである奥山メリヤスへ立ち寄り(バスから看板が見えたときは、静かに鳥肌がたったな、、)社長の奥山さんにもご乗車いただき、車内でお話を伺いながら最初の工場・月山紡績へ向かった。

月山紡績で見せていただいのは、文字通り「糸を紡ぐ」工程。今まさに稼働している工場の中を、実際に働く方に案内していただきながら見学させていただいたので、語り手の表情、工場内の音、大きくて繊細な機械の数々、、、目に飛び込んでくるもの、聞こえる音、その全てにすごくリアリティがあって、なんだか心がざわざわした。

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私たちが普段身につけている衣類のほとんどは糸からできている。当たり前のことだけれど、それを意識して着ている時間が、これまでにどれくらいあっただろうか。そんなことを考えていると、「モノに敬意を持って生きたい」なんてふわっと考えたりしていた自分が、急に恥ずかしくなった。

続いて2つ目の工場・山形整染へ。
こちらでは、紡いだ糸を「染め、整える」工程を見せていただいた。私だけかもしれないけれど、理想の色味を出せるのは職人さんの熟練の技(感覚のようなもの)あってこその工程だと勝手に想像していた。でも、工場に入って最初に通された小さな部屋には、モニターと見たこともない形状の機械。「色を決めるのはこの機械で」との言葉。決して感覚的なものではなく、緻密に計算された色作りがなされていることにとても驚いた。そして、隣の部屋には、まるで実験室のようにずらりと並んだ薬品に、たくさんの試験データとサンプルのストック。「納得の色が安定して出せるように」とデータを丁寧に管理されているところに、真摯に仕事と向き合う姿勢が感じられ、なんだか頭の下がる思いがした。

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そんな整染の頭脳のような部屋の先には、大きな機械が並ぶ工場。あちこちで湯気が上がり、次々と染め上げられていく糸たち。高い天井に付けられたたくさんの窓から差し込む陽の光が、機械から上がる湯気を優しく照らす光景は、ため息が出るほど美しかった。(この陽の光で、染めたての色を見るのかなぁと、素人のわたしはちょっと想像してみたり)

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この工場では、ただ染めて終わりではなく、その先の糸を使った製品の風合いを整える工程も担っているそうで、その過程も見せていただいた。クライアントが求める風合いに仕上げたり、その素材が最大限に活きる状態まで高めたり、、、見学をするまで、正直なところ「整染」という言葉がピンときていなかったのだけれど、説明を聞いていくうちにその意味も言葉も自然としっくりくるようになっていた。

月山紡績の裏に美しい河が流れる景色が広がっていたように、山形整染の周りにも、穏やかな自然が広がっていた。そんな環境で永く続いてきた工場では、水を汚さない工夫など自然との共存も当たり前のようになされていることもチラッと教えていただき、そこでもまた心があたたかくなるのを感じた。工場の外で大きく深呼吸をした時の、澄んだ空気とたっぷりの日差しが本当に心地よかった。

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いよいよ工場見学も終盤、最後は奥山メリヤスへ。
ここでは、ニットを編む工程の見学と、リンキング体験が待っていた。それぞれの糸に最も適した針を選んで編み立てることへの想いを聞き、繊維から紡がれ染め上げられた糸が、いよいよ編み上げられていく様子を見ていると、なんだか子どもの成長を見ているような、なんとも言えない喜びと少しの寂しさのようなものが入り混じった気持ちになっていた。

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ニット作りにおける最終工程で、熟練の技術と多くの時間が求められる「リンキング」も体験させていただいた。これは、以前ダイキくんやnariwaiさんの記事で目にして以来、わたしがものすごく心惹かれていた工程。編み上がった生地を一目ずつ縫い合わせるこの作業は、もちろん人の手によるもの。仕上げの工程と共に、その効率の悪さからやめてしまう工場も多いという現実とは裏腹に、それでも続ける道を選ぶ奥山さんからは、「良質なモノを大切に着てもらいたい」という、シンプルながら揺らぐことのない信念をまっすぐに受け取ることができた。

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体験したリンキングは、手袋の片手を縫い合わせる作業。目数にして100目にも満たないはずなのに、悪戦苦闘。それでも、褒め上手な職人さんたちに「とっても綺麗ですよ」と声をかけていただき、糸の始末とアイロンの仕上げ工程まで教わった。蒸気で整形し、出来立てほかほかの手袋を手にした時は、不揃いな目面も愛おしく見えて、自然と笑みが溢れた。同時に、職人さんたちの技術の高さを肌で感じる時間となったことは言うまでもない。

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3つの工場見学を終えると、外はもう夜。東北の厳しい冬をうっすら連想させるような、冷たい空気に包まれていたが、心はとってもぽかぽかしていた。午後の数時間、多くの職人さんたちの手を止め、間違いなくお仕事の妨げになっていたはずなのに、どこの職人さんからも嫌な顔ひとつ見えず、むしろ歓迎の気持ちさえ伝わってきた。柔らかくて穏やかな空気で迎えてくださった工場の方々の、少し照れ臭そうな優しい笑顔が、とても印象的だった。

あたたかい人たちが生む、あたたかいモノたち。そんな生産現場を覗かせていただいたことで、大好きな服との距離がこれまで以上にぐっと縮まり、愛おしい服たちがさらに愛おしく見えるようになった気がした。

そんな気持ちを持って向かったツアーの最終目的地は、宮城県仙台市にあるセレクトショップnariwai。今回のツアーに合わせて「普遍的なデザイン」をキーワードに、BATONERとCIOTA、2つのファクトリーブランドのポップアップイベントまで用意してくださっていた。
工場巡りをしたその足でお店に向かい、さっき目の前で生まれる様子を見てきたニットに手を触れる。たくさんの作り手の方の息遣いが伝わるようで、ドキドキが止まらなかった。

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初めて東北を訪れたわたしは、もちろんnariwaiのお店にお邪魔するのも初めて。以前、インターネットを通してお買い物をさせていただいた時の心躍る感覚が忘れられなくて、いつか絶対にお会いしてみたかった山下さんにもお会いすることができた。Instagramでの発信を、一方的に、貪るように読んできた、CIOTAの荒澤さんにもタイミングよくお会いできて、目の前でフィッティングまで見ていただいた。
これまでインターネットを通してしか見ることが叶わなかった光景が、自分の目の前に現実としてあること。インターネットなのにあたたかい買い物をさせてくださった方と、実際に顔を合わせてあれこれ言葉が交わせること。それは決して大袈裟でもなんでもなく、ただただ贅沢で夢のような時間だった。

インターネットが普及し、SNSなんてものまで浸透し、なんでも簡単に手に入る、誰とでも簡単に繋がることができる世の中。面白いことで溢れている気がするけれど、どこかに冷たさのような、虚無感のようなものを感じていたのも事実。そんな時に出会った今回のツアーは、とても自然に自分に馴染んだ。(実際、フルタイムで働く二児の母にはなかなかハードルの高い話だったことは、ここだけの話 笑)
耳にする音も話も、目にするものも景色も、どれもこれも刺激に溢れ、モノの向こう側にある人のパワーを全身で感じた時間は、何ものにも変えがたい経験となった。一緒にツアーに参加した方の表情を見ていても、それはひしひしと感じられて、なんだか嬉しくてたまらなくなった。想いを持った人が生み出すものには、人の心を動かす力が宿っていて、それが、つくる人から届ける人へ、そして纏う人へと丁寧に伝えられる。当たり前のようで、当たり前になって欲しいけれど、すごく難しいその過程。それらの点をひとつの線で繋いで見せてくれたこのツアーに、感謝の気持ちでいっぱいになった。

今、服が好きで、人が好きで、本当によかったと心から思う。

「僕らが纏うモノに敬意を」

2019.11.17 江原茉美(MAMI EHARA)




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