見出し画像

日本の給料は安い?~日米の具体的な職種で給与比較をしてみると~

近ごろ日本人の給料が安いと言われますが、
実際のところはどうなのでしょうか?

恐らくアメリカの平均給料が7万5000ドルで、
日本では461万円(男性567万円、女性280万円)
との情報を比較した報道等の情報を見聞きして
その様に言われているのでしょう。

更に円安なので7万5000ドル×140円などで
計算してアメリカでは平均1000万円なの??
日本は貧しいじゃん、、、とショックを受けた
人が多かったのでしょう。

ただ、これ、あまり大げさに受け止めなくてよいと思います。

為替を購買力平価で計算すると

で、実際はどうなのでしょうか?
アメリカに住んで働いたことがある人は、
日本の倍は豊かだと思う人は、
あまりいないのではないでしょうか?

そもそも現在の為替レートで計算して
単純にその金額だけ比較すると現実の感覚とズレます。

購買力平価では1ドルは(ざっくりと)100円程ですので、
その水準で計算すべきでしょう。
そうすると7万5000ドルは750万円程となります。

アメリカの人々は日本人よりも2倍近く豊かなのか?

それでも日本の1.5倍の金額ですが、
貧富の格差が非常に大きく一般の人々は日本人の
1.5倍も豊かではありません。

大学の学費は日本の数倍ですし、
昨今はインフレで物価上昇が激しくて大変です。

大学の学費4年分の奨学金を借りていますので、
日本人の感覚で言うと社会人1年目から
住宅ローンを抱えているようなものです。
しかも家賃は非常に高くて、アパートは
見ず知らずの人とシェアして暮らすのが
例えばNYでは常識です。

しかも、極めつけは医療費が非常に高く、
国の医療保険は(貧困層を除いて)ありません。
自分で民間の高い医療保険に入る必要があります。
(以前私は年間5千ドルの医療保険に加入していました。
今はもっと高いでしょう)

このような事情を考えれば、アメリカでは
日本のように新卒社員の年収が300万円では暮らしていけません。

雇用制度の違いも認識した上で比較

それでは、具体的に個別の職種ごとの
年収はどの程度の金額水準なのでしょうか?

ただ、前提として述べておくと、
アメリカは日本と異なりジョブ型雇用ですから、
職種それぞれに金額がついています。

メンバーシップ雇用の日本はそうでなくて、
会社の給与水準が年齢ごとのバンドに付与
されている制度が多いです。
加えて、厚生年金や国民健康保険などがあります。

その違いがあることを認識しておいて下さい。
単純に金額の違いを煽りたくありませんので(笑)

職種ごとの年収水準を比較すると

それでは、例として、アメリカの経理職を
取り上げてみましょう。

サラリードットコムで経理の仕事を
レベル別に初級から部長クラスまでで調べてみました。

まず、経理の事務について、平均年収は下記でした。
ベース年俸+ボーナスの総額です。


・経理事務(ベース年俸+ボーナス)
Accounting Clerk I:$43,211 
Accounting Clerk Ⅱ:$48,261  
Accounting Clerk Ⅲ:$54,687

どうでしょうか?
1ドル100円で計算すると、
初級のAccounting Clerk Iが430万円とすると
月給25万円×16(12か月と賞与として4カ月分)で
400万円ですね。
日本の経理事務職だと月給20万円+賞与で
300万円台前半くらいかなと思いますが、
社会保険の会社負担分などを加えると
あまり変わらない感じです。

ではアカウンタントを見てみましょう。
日本では経理の総合職社員をイメージすると分かりやすいです。

・アカウンタント(ベース年俸+ボーナス)
Accountant I:$60,992($59,503+Bonus)
Accountant III:$88,785 ($85,804+Bonus)
Accountant V:$146,619 ($132,208+Bonus)

Accountant Iは少し良さそうに見えますが、
日本の水準と比較すると、
経理の総合職3年目くらいの人や、
公認会計士資格やUS C.P.Aを保有している
20代若手の年収を(社会保険の会社負担や
福利厚生など加味すると)そんなものかもです。

違いはアカウンタントⅤですね。
14万ドルを超えています。
これは後述する組織的には上位職の
アカウンティング・マネージャーよりも高いです。
ジョブ型雇用らしい水準です。
日本ではこの様なことは珍しいですよね。

そして、経理のスーパーバイザーから
部長や本部長クラスを見てみると下記の通りです。

・経理管理職(ベース年俸+ボーナス)
Accounting Supervisor: $87,044($83,945+Bonus) 
Accounting Manager: $126,386($118,178+Bonus)
Accounting Director:$214,198($182,709+Bonus)
Top Accounting Executive:$296,792($239,094+Bonus) 

スーパーバイザーとマネージャーは、
アカウンタントⅤよりも低いのが印象的ですね。
管理職だからという理由だけで高いのではなくて、
部署のマネジメントは行わないけれども、
経理の専門スキルが求められるポジションには
この値段がついているということです。
このあたりメンバーシップ雇用の日本と異なります。

で、水準ですが、マネージャーが12万ドル程、
つまり1200万円くらいだとすれば、
国内のジョブマーケットの感覚で言うと
中堅~大手企業では経理マネージャー(課長)が
600万円~800万円くらいのイメージですので、
日本の水準が安く見えます。

ただし、ここも社会保険制度があって、
且つ、その金額の半分を会社が負担していること、
諸手当、退職金制度、簡単に解雇されない、
など諸々の数字に見えにくい価値も踏まえると、
400万~500万円の違いは大きいのか、それほどでもないのか。

因みに、アメリカは管理職もシニアクラスになると
ボーナスの金額が大きくなりますね。

とは言え日本の給料は上がって欲しい

具体的な職種を例にとって日米比較してみると、
金額自体に差があるのは確かですが、
雇用制度や社会制度の違いを踏まえると
それほど大きなものではないかも知れません。
少なくともアメリカの方が2倍以上も豊かだ、
ということはなさそうです。

ただし、日本では給与水準は何年も据え置きで、
収入格差も広がってきて、物価も上がっており、
見えない物価も上昇しています。
(商品の中身が少なくなっているの腹立ちますね、笑)

頑張って働いたら、生活費だけでなく、
レジャーの費用や自己研鑽の費用なども
ある程度まかなえる年収水準を全ての人々が
享受できる労働環境になってほしいものです。

(2023年2月27日)
山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?