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たったの自分だけが残った

勢いで付き合っちゃったけど、やっぱり付き合わなければ良かった…そういう理由で彼氏に振られた。遠距離恋愛で始まってまだ1ヶ月半しか経っていない。

簡単に言ったら上の一文になるけれど、正確には、ちょっとだけ違う。

彼とは、元々仲の良い友達だった。7月から10月までの間、彼が仕事で愛知から山口に行くことになって、離れて数日したくらいで私がLINEで告白して、彼からの電話で付き合うことになった。だから、彼氏彼女としては会ったことすらない。初めから遠距離で、会えない状態で付き合うことになった。それがどれだけ大変なことなのか想像もできずに、ただ素直に好きな人と付き合えたことが嬉しかった。でも、結果、一度付き合おうと決めた私たちは、付き合うことをやめることにした。

彼は付き合う前、彼女は作らないと言っていた。昨年から海外に行くことを決めているから(コロナの影響でいつ行けるかは目処が立っていないみたいだけど)、今付き合ってもどうせ離れ離れになってしまうから、ということだった。私はそれを分かっていたけど、日本にいる間はできるだけたくさん一緒にいたくて、何よりシンプルに彼のことが好きだったから、告白した。好きということだけ伝えて、付き合うかどうかは決めていいよと話した。付き合ってみて、海外に行くってタイミングが来たら、そのときにどうするかは考えたらいいとも思ってた(ついていくのも場合によってはアリだと考えていた)。ついていく考えもあるなんてことは彼には内緒にしていたけれど「海外行くことはそのときの2人で判断すればいいんじゃないかなと私は思う」とも言った。彼女は作らないと言っておきながら、なんだかんんだ私のことを好きだろうし告白したら付き合うんじゃないかと、正直変な自信もあった。結果「俺も好きだから付き合いたい」と彼は付き合うことを選んでくれた。

それから、1ヶ月半。私たちは明らかにうまくいってなかった。遠距離で会えないとなると、LINEや電話が全てになってしまうことをひたすら思い知らされた。意図していない伝わり方をしたり、お互いの状況を配慮し合うにも汲み取るのに情報がなさすぎてすれ違ったり、些細な我慢が募って、やけによそよそしくなっていった。

ある日、どうしてもスッキリしたくなった私は、「友達のままだったらよかったのにって考えちゃう」と送った。すると彼から「正直、愛知に戻ってからちゃんと答えを出せば良かったかなって、ちょっと思った。」と返ってきた。これを受け取ったときは、ショックだった。正直私は、友達のままだった方が良かったなんて本音では思ってなくて、それくらい悩んじゃってるってことを伝えたかっただけだったから、彼は付き合わなければ良かったと思ってるのかあと考えたら、後に引けなくなった。だから、「付き合う気はなかったのに私が急かすようなこと言ったからだよね、それは薄々気づいてたよ」と送った。彼からは「気持ちに嘘はないけど、今でもやっぱり悩んでしまうときはある」と返ってきた。これはもう、だめだなと思った。彼は、言葉にこそしなかったけど「愛知と山口で3ヶ月離れているだけでも寂しい思いをさせてしまうなら、海外に行ったらもっと寂しいだろう。せめて愛知に戻ってから付き合えば、こんなことにもならなかったのに」という気持ちだったんじゃないかと思う。それは私にとっては、”遠距離でも寂しい思いをさせないように尽くせるほど好きではない”というようにしか受け取れなかった。だから、そんな人とは、遠距離だろうと会える距離に帰ってこようと、幸せになれないと思ってしまった。
でも、「別れよう」と言えるほど付き合っている実感もなくて、「分かったよ。いろいろありがと!楽しかったから大丈夫。付き合ったとも言えないから別れたとも言えないし、変な感じになることもないと思うから、またみんなで遊んだりする感じでいよう!」と送った。「本当にごめんね。寂しい思いをさせたし、嫌な思いもしたよね、ごめん。それなのに、そんなふうに言ってくれてありがとう。」と返ってきて、私たちは友達に戻った。


私は彼と一緒に過ごす時間が楽しくて大好きだった。私が不機嫌になってもふざけて笑わせてくれるところと、友達とみんなで人狼をやったときに弱すぎて笑われるくらい嘘がつけないところと、内弁慶で可愛いところが特に大好きだった。それに、彼と付き合ったら、幸せになれると思った。恋愛の駆け引きとか、何とも説明ができない煮え切らない関係とか、そういうのに疲れたところで自然と彼と一緒にいることが多くなって、誠実で真面目な彼に惹かれて、この人と付き合いたい、そう思った。だけど、幸せにはなれなかった。この1ヶ月半の感想を一言にすると「もっと尽くしてくれるかと思った」だ。


自分のことを好きでいたいのに、弱るとすぐにそれを誰か他の人に丸投げしてしまう。分かっているのにいつもそうだと、改めて思った。でも、好きな人に自分を好きになってほしいと思うことはもはや生理現象で、変えられはしない。好きな人に好かれなくても十分なくらい自分のことを好きになりたい。それがもう今ならできると思って1年ぶりに人と付き合ってみたけど、まだだめでした。このタイミングでそれに気づけただけでも良かったと思う。

彼と付き合うことをやめることになった後、急に思い立ってコンビニに歩いて行って、ラッキーストライクと灰皿を買って帰った。

私は煙とライターが何故だかすごく好きで、好きな人や綺麗な女性がタバコを吸う姿を見てずっと憧れがあった。だけど、吸わない方がモテるしと思って吸わなかったし、母が嫌煙家なので実家にいるときは諦めていた。一人暮らしをしてからは吸っていた時もあったけど、生理痛を軽くしたくてピルを飲み始めて、お医者さんにやめろと言われて素直にやめた。それくらい、あんまりハマってなかった。ピルを飲み始めて生理痛が軽くなったし、正直、避妊効果の安心も大きかった。彼氏を作らなくなった代わりに元彼やセフレと寝るようになって、ここ1年はもはやそのためにピルを飲んでいたところもある。でも、もう男に好かれることで自分の自尊心を保つのはやめようと思った。元彼といいセフレといい、都合いい相手なだけと言いながら、実際はちゃんと顔がタイプな人だけだったし、自分のことを好きでいてほしい相手だった。私はいちいちイキって理由をつけて「別にそういう関係じゃない」ってイケメンと一緒にいたりするけど、実際自分のことを好きでいてほしい気持ちでいっぱいだった。だから、もう彼氏もセフレも欲しがるのをやめようと思った。ちょうどピルも切れていて、1ヶ月以上飲んでいなかったし、これを機にピルを辞めてタバコを吸おう、と決めた。色々言ってるけど、ただの自暴自棄かもしれない。


タバコとライターと灰皿を持ってベランダに出て、ケホケホとラッキーストライクを吸った。iPhoneも持たずに、夏の虫の声と車がコンクリートをなぞる音を聞きながら揺れる煙を見ていたら、たったの自分だけと一緒に過ごしている実感が湧いて、私に必要だった時間はこれだったんだと思った。ああ、なんかやっぱり寂しいな、素直にそう思ったら、やけにスッキリした。彼に気付いて欲しかった本音は、たったの自分ひとりでも、ちゃんと気付いて認めてあげるべきだったんだな。

タバコの火を消してしばらく夜風にあたりながら、今日のこの瞬間を忘れないでおきたいと思った。


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