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よい悪い問題

 長らく自分の中で答えが出ていない文語の問題に「よい悪い問題」というものがある。「よい」は平仮名で書く方が腑に落ち、「悪い」は漢字で書く方がしっくりくる。

 「よい」には「良い」と「善い」の二表記があり、それぞれ意味が違う。その違いを意識させない平仮名の「よい」は、言葉の摩擦抵抗が低く、意味の解釈という抵抗感を上げたくない場合には使い勝手がよい。言葉の肌触りとして好ましいのだ。

 対して「悪い」は漢字で書く方が、そのイメージを伝えやすい。ゴツゴツとした視覚イメージと、漢字が持つ暴力性を「悪い」という表記は与えてくれる。平仮名では柔らかすぎるのだ。

 「よい」は平仮名、「悪い」は漢字。しかし、この二つを「よいと悪い」のように対立概念として並べた時に問題が生じる。このように並べる場合、二つの概念は、等価とは言わないが近い重量感を持っていて欲しい。表記の質感が違いすぎると、対立概念に感じないのだ。

 これが、私が長年解決を得ていない「よい悪い問題」だ。「よい」を漢字表記した時の意味の違いも相まって、文章内のバランスが極めて取りにくい。ずっと答えを探しているのだけど、最善手を見つけられず、いまだに考え続けている。

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