メディアの話その107 CLUBHOUSEと理想のラジオ。

CLUBHOUSEは「理想のラジオ」を無料で実現してしまった。
今朝、瀬尾さんと川崎さんのCLUBHOUSEを、ハンズフリーで、自動車で通勤途中に聴いていた。
昨日、国道16号線を走りながら、土江さんのCLUBUHOUSEをやはりハンズフリーで流しっぱなしにしていた。
どちらも完全に「ラジオ」番組として聞いていたのである。
CLUBHOUSEが日本で一気に普及してまだ3週間もたっていない。
これまでSNS、ミクシイからはじまり、ツイッター、フェイスブック、LINE、インスタグラムが広がるプロセスを、割と初期からユーザーとして付き合ってきた。
CLUBHOUSEの普及スピードは桁違いに早く「見える」。
なぜ「見える」を「」にしたのか。それは、この普及スピードが早く見えるポイントが、従来のSNSとまったく異なるからである。
瞬時に、マスメディアのひとたちと、マスメディアで活躍するセレブリティの「ツール」となった。
ここがいままでのSNSとまったく異なる。
これまでのSNSは、まず無名の人たちが自分たちでネットワークを広げてきた。ある意味で従来のマスメディアの文脈やネットワークやビジネスモデルをおびやかす価値紊乱者として登場した。
このため、マスメディアのひとたちの多く、企業も、セレブリティも、多くが、SNSを当初おそれ、場合によると憎んだ。
はじめるときも、おずおずと、こっそり、ゆっくりだった。
メディア企業は、社員の利用を取り締まったりした。
ところが、CLUBHOUSEは、知られるようになって最初の1週間で、セレブリティたちがすぐに降り立った。浅野忠信さん、こじはるさん、古市憲寿さん、村上隆さん。。。
アーリアダプターにして多数のフォロワーを有するひとたちが、在野ではなく、既存のマスメディアで活躍するセレブリティたちが中心となった。
なぜだろう。それはCLUBHOUSEが、シンプルに「リアルタイム」で「声だけ」のSNSだから、だ。
「リアルタイム」で「声だけ」というのは、要するにライブである。生放送である。この状態で、「雑談」を「メディアコンテンツ」に昇華させるには、「能力」が必要である。
その「能力」を誰が持っているか。「生で、声だけ」のメディアに対応できるひと、それは、ラジオやテレビのような「声」のメディアの勝者たちである。
「生で声だけ」はハードルが高い。必然的に「有名人だ!」「おもしろい」「ためになる」コンテンツに人々が集まる。この三要素が集まっていたらもう最強である。
かつてマクルーハンが看破したように、「声だけメディア」のラジオは呪術性と宗教性がある。ひとりひとりに話しかけているようでいて、一方的。リスナーは自分だけに話してもらっているように思う。そして主従がはっきりついた関係。ヒットラーがラジオを活用した話は有名である。
CLUBHOUSEは、ラジオのもっている呪術性と主従がはっきりついたうえでのインタラクティブ性を瞬時にバージョンアップした。それが、リスナーを壇上にあげる機能だ。
ルームの主催者は、あらかじめ選んだメンバーで話をしながら、まるで深夜ラジオの投稿葉書を読むように、リスナーを突然番組に招くことができる。ラジオがおそらくはやりたかったことを、インターネットサービスはいともたやすく実現してしまった。
おそらくそうやって壇上にひきあげられたリスナーの中から、かつてハガキ職人から大槻ケンヂや大川総裁が生まれたように、新しい才能が開花するかもしれない。が、基本は、話し手とリスナーの主従関係がより強化されるシステムである。
そして、ここが重要なポイント。
いまうまく動いているCLUBHOUSEのルームは、主催者が同時にキャスティング責任者兼番組プロデューサー兼編集長兼インタビュアーのポジショニングで「回している」ケースである。
昨日の瀬尾さんの田原総一朗さん企画や、村上隆さんの質問コーナー企画がそうだった。
瀬尾さんの編集プロデューサー能力、村上さんのセルフプロデュース能力があるからこそ、「雑談」ではなく、「番組」になっていた。初期から以上のポイントにとっくに気づいていたのは成毛眞さんですね。
一円もお金が動かずに、ラジオのマス番組以上の「番組」が、主催者がキャスティングすれば実現してしまう。しかも、スポンサーがいないから、内容は忖度されない。ラジオ的な自由がマックスになる。
ラジオにしろ、テレビにしろ、キャスティング責任者と番組プロデューサーと編集長(ディレクター)とインタビュアーはそれぞれ独立した仕事である。でも、CLUBHOUSEは一人でこなせちゃう。すると、すごいひとを、場合によるとその場でキャスティングできちゃう。究極の生放送である。
CLUBHOUSEは無料で最強の「ラジオ」となってしまうかもしれない。

つまり、「ラジオ」を「だれでもマスメディア」化してしまったのだ。

そんなとき既存のラジオは何ができるだろうか? ラジオのひとたちに聞いてみたい。
注)ここではCLUBHOUSEの多様な利用のされ方については、あえて言及しない。新しい利用方法が発明されるに決まっているからだ。むしろ既存メディアをCLUBHOUSEが侵食する話に絞っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?