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メディアの話、その34。会田誠とアートと自然。

いま、会田誠さんの個展を青山でやっている。2月24日まで。

何を展示してあるのか。会田誠さんの考える「夢の東京」である。

会田誠さんの考える「夢の東京」には、まず、いまよりはるかにでっかい都庁がある。

その都庁には、天守閣がある。

こんな感じだ。

いいね!

ちなみにこのラフスケッチには、清書版がある。

だれが描いているかというと、山口晃さんである。

こんな感じだ。

都庁、建て直そう。

これでいい。

この都庁が建つだけで東京の観光客が1000万人増える。

太田道灌も、徳川家康も喜ぶ。

さて、気づいたかもしれない。

いま青山でやっている会田誠さんの個展は「写真とり放題」である。

日本の美術展の多くは、写真を撮らせてくれない。

でも、たとえばかのルーブル美術館にいけば、写真とり放題である。

あのモナリザだって、がんがん撮れちゃう。

こんな感じである。

このスマートフォンの群れは、そのままタダで広報してくれる人たちの群れでもある。アートを「見えない箱」に入れちゃう。アートそのものは、アルタミラの洞窟画がそうであるように、人間が自分でつくった最初の「メディアコンテンツ」のひとつだ。人に伝えて、見せてナンボである。

ルーブルができて、なぜ日本でできない。

会田誠さんは、そんな私たち日本人「観客」の不満と疑問にきっちり応えて下さっているわけだ。

会田誠さんは、この展覧会で吐露する。

「私は2階より上に住んだことがない」と。

自らの住まいの変遷をこう記している。

会田誠さんもまた、「街は1階がすべて」組のひとだったのだ!

「街は1階がすべて」組が増えて、小生はとってもうれしい。

さらに、会田誠さんは、日本橋の復活をこう描く。首都高に隠されてしまった日本橋をどうするか。首都高をなくすか。地下に沈めるか。

こうする。

わはは。

あまりに急坂で、人が落ちてる。

この展覧会でしかし、会田誠さんがもっとも力を入れているのは、「新宿御苑」大改造計画である。

大型の黒板にいくつも構想を書き連ね、なんとジオラマまでつくっちゃう。

会田誠さんの考える新宿御苑大改造計画。

その内容をかいつまんで要約すると、思いっきり高低差をつけて「ダイナミックな水の流れ」をつくり「日本の自然」を集約した場所にする。すると、新宿御苑は、最強の東京の「コンテンツ」になる。というものだ。

メンテナンスは、専門のNPOに任せちゃう。

実は、数年前に森美術館で行った展覧会でも、会田誠さんは新宿御苑改造計画を黒板に描いていらっしゃった。

今回は、それにとどまらない。実物をつくってしまった。

こちらが展示されているジオラマである。

はい。

ここまで書いて、私をよく知る人は、おやっと思ったかもしれない。

この新宿御苑、どこかに似てないか?

こちらです。

三浦半島小網代の谷。高低差はてっぺんが80メートル。70ヘクタール。ちなみに新宿御苑は55ヘクタール。細かな支流が複雑な地形を作り出し、谷川から巨大湿原、そして干潟まで、多様な水の自然がある。関東の自然がぎゅぎゅっと凝縮されていて、NPOが保全してて、春過ぎには一晩にホタルが1000頭飛び交う。

会田誠さんは、おそらく小網代のことをご存知ないだろう。

会田誠さんが、新宿御苑をじっと見据えて、箱庭じゃなくて自然になったらいいのに、と思った。チョークで黒板に絵を描き、ジオラマまでつくっちゃった。日本の自然をここに移植して、ホタルが飛び交う場所にできないか、と夢想した。

そうしたら、不思議なことに、現実の小網代とそっくりなかたちが浮かび上がってきた。

アーティストの夢想。なるほど、小網代は日本を代表するアーティストの夢想を具現化している場所、でもあるわけか。

ちょっとうれしい。

会田誠さんが描いた「夢の新宿御苑」はアートであると同時に具体的な提案でもある。小網代は、ゴルフリゾートになるかもしれなかった谷を手入れをこまめに行うことで保全され続けている、新しいかたちの自然である。どちらも、人が考え、計画し、かたちにし、さらに人に伝えて価値が共有され、次世代に守り継がれる。

会田誠さんをぜひ小網代に連れて行きたいなあ。そう思った展覧会であります。

このジオラマの本物、体験したいかたはぜひこちらへ。

http://koajiro.org

あ、ステマみたいになっちゃったw

続きます。

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