森川秀樹

小説家。大阪在住。甲南大学法学部法学科卒。アミューズメントメディア総合学院 大阪校(現:専門学校)ノベルス学科卒。『縁結び神社の悪魔さま』『招福招来 福を招くと聞きまして。』『この世の土産さがしもの帖』他。お仕事のご依頼はh.morikawa009@gmail.comまで。
固定された記事

霧の世界 いち

早く起きすぎたのかと思った。だが、枕元のデジタル時計は06:00を指している。朝だ。薄暗い。今日は天気が悪いのだろうか。 稲美はベッドから這い出た。尻がかゆい。スマー…

霧の世界 きゅうじゅう

真っ赤な血が流れていた。地面に流れ落ちたその赤い液体は、灰色の霧に滲んでいる。稲美の意識は朦朧としていた。自分が今いる場所はとっくに分からなくなっている。霧の中…

  • 招福招来 福を招くと聞きまして。 (富士見L文庫)

    森川秀樹
  • この世の土産さがしもの帖 (富士見L文庫)

    森川秀樹

霧の世界 はちじゅうきゅう

霧に埋もれた世界は静かだった。未幸は足首の痛みを堪えながら灰色の世界を走った。痛みは激しい熱を伴い、やがて感覚を曖昧にさせていった。何処か遠くから叫び声が聞こえ…

霧の世界 はちじゅうはち

稲美は考えていた。霧は世界の風景を覆い隠し、色んなものを見えづらくしたのだろうか。むしろ明確にしたのだろうか。霧が出なければ、稲美は彼女と関わり合うことはなかっ…

霧の世界 はちじゅうなな

女は未幸の腕を掴み、彼女を引き寄せた。未幸はよろけた。首を包まれた。女の手が未幸の首をがっしりと掴んでいた。冷たい掌だった。未幸は女の手を引き剥がそうとした。だ…

霧の世界 はちじゅうろく

元モップの凶器が床に落ちた。深い霧があったが、異変に気付いた誰かが悲鳴を上げた。稲美と少年は双方の腕を掴み、膠着状態となった。少年の掴むナイフが小刻みに震え、鈍…