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おとぎ鬼草子~復活編~

原作 近畿怪談俱楽部 (ぺるそな、三浦たまの)

登場人物

酒呑童子
一条天皇の世 大江山を根城にして都を襲い強奪を繰り返し恐れられていた。
鬼一族の頭 鬼神王とも呼ばれる。 実は都に蔓延る。妖魔を人知れず退治して
貧困や病気で親を失った子供達を山へ連れ帰り育てて居た。
都の公家の策略にはまり源頼光率いる妖怪退治のエキスパートに倒され
老坂峠に首を埋められた。茨木童子のおかげで復活すると同時に反魂術を身に付ける…

茨木童子
酒呑童子の首に呪術者や武芸者を倒し集めた精気を注ぎ
蘇らせた酒呑童子の右腕的存在。全国を渡り歩き名の通った人間に勝負を挑み勝ったらその精気を奪い取っていた。その際、都の一条戻り橋で
渡辺綱に腕を切られるが後に取り返している。
それから江戸時代前期までひたすら精気集めを行い、酒呑童子を蘇らせた。

あまくさ鬼草紙 酒呑童子復活編
老いの坂峠 里に有る山の頂上 
小さな山が異様な気を巻き散らしてる。
里のものは神さんの首塚と呼び、首から上の病に効くと言われ村全体で大事に祀り上げていた。

夜も更けて綺麗な月が雲の間を泳いでいる
秋の夜 周りは空気が少しづつ冷えて来ている様に感じる季節だ。
その祠近く 二人の鬼が岩に腰を掛け語らって居る。
濃い蒼色の空にたまにきらりと星が光る

ナレーション (酒呑童子役が語る)
長セリフだからゆっくりと・・・
「あれから俺は数百年眠り続けた。少し残った妖力を使い茨木の運んでくれた精気を増幅し首を跳ねられる前より完璧な身体で蘇る事が出来たのだ。」

「流石に鬼神王と呼ばれた俺でも首だけからだと時間と手間が掛かる。」

「大江山での唯一の生き残りの茨木を探し出し、蘇る為の力の元に成る特別な能力のある人間の精気を集める様に指示したのだ。」

「俺は酒呑童子としての意識だけはかろうじてこの世に留めていられたので鬼として
蘇りその後の事を考え、色々と策を講じていた。」
「元々茨木は鬼になる前は床屋の両親に育てられ腕の立つ腕は立つから大して心配はしていなかったが、奴が一度だけ非常にワクワクしたと話してくれたのが一条戻り橋であの妖怪退治の渡辺綱と出くわした時だったそうだ。」

京都一条戻り橋
綺麗な満月が雲を避けながら浮かんでいる。
洛外から都へ戻る馬に乗った侍が一人。
渡辺綱・・・大江山で俺達を退治しに来た妖怪退治の専門家あの源頼光の片腕とも言われる一の家来である。
渡辺綱 
「月がぽっかり浮かんで風情がある夜に、このまま帰るのがもったいない位だ。」
ゆるりゆるりと一条通りを進む綱。
渡辺綱
「馬のヒズメの音さえも心地よく聞こえるわ。ほんに良い月じゃ。こんな夜は綺麗な女官と一献かわしたいものだ。」
どの時代も男はそういうものだ。そんな時目の前から一人の女官がしなりしなりと歩いてくる。顔は着物で隠してはいるが、
上品な色気を漂わせている。つい綱は目で追ってしまう。
渡辺綱
「そういや帰り際に晴明殿がこんなことを言って居ったなぁ」
安倍晴明
「綱殿・・・今夜は月が綺麗ですなぁ。
こんな夜は綺麗な女官の妖(あやかし)が出るやもしれんので帰り道充分にお気をつけ召されよ。特に綱殿はあやかしには滅法強いが女にはほとほとお弱いで。はははははは」
渡辺綱
「いやいや晴明殿、流石に綺麗でも妖はあの臭いで分かります。奴らはいくら化粧をしていても身に沁みついた奴ら独特の臭いが消える事は無いのです。」
その時その女官が綱に声を掛けてきた。
女官
「もし・・・そこなお侍様、申し訳ございませんが、その馬で送って頂けないでしょうか
女独り身ではこの都は恐ろしくてなりませぬゆえ。」
渡辺綱 心の中で運が良いと思いつつ顔には出さぬようにして軽く臭いを嗅いでみた
があの独特の臭いはしなかった。
渡辺綱 少し安堵の表情で
「そうであろうな、都やその近くにはまだ妖(あやかし)が出るそうだからな。先日鬼の大将を倒したってのに未だ都やその種変での妖が一向に減らん。未だに食われる人々が後を絶たんのだ。何故だか倒す前より食われた人の数が増えている様に感じる事もある。」
女官 にこりと微笑みながら
「まぁ・・・あの大江山で鬼の一族退治をされたお侍様でしたか。道理でお強そうだと思いましたわ。」
渡辺綱
「あの時はうちの大将が最後首を跳ねたのだが、その首は最後まで迎い追ってうちの大将の兜食いつき居ったからな後で見たら三段仕込みの兜を牙が貫いていた。普通の兜なら大将は頭を砕かれて死んでいただろうなと話したら・・・
源頼光
「しかしあの神の守護を頂いた兜を貫くとは流石鬼神王と呼ばれた酒呑童子だけある。」
と言われて居ったわ。ははははは」
女官
「大変なお仕事でしたのね、ほれぼれ致します。綱様、良ければ送って頂く道すがらその武勇伝の続きをお聞かせ下さいませぬか?」
渡辺綱
「うむ、良いぞ。ではわしの後ろに乗るが良いぞ。」
女官はいそいそと綱の馬に腰掛けた。
渡辺綱
「ではまいろうか、でおぬしの屋敷はどこにあるのじゃ?」
女官
「はいこの先をまっすぐでございます。」
渡辺綱
「うむ・・・まっすぐとな? このまま進むと僻地に向かうが、屋敷は鞍馬か貴船なのか?」
女官
「まぁそんなところです。ふふふ」
女官は含み笑いをする。しかしその眼が金色に光るのを綱は見逃さなかった。
渡辺綱
「ぬし、人間ではなかろう・・妖か?正体をあらわせ!」
綱は馬から女官を落とし、刀を抜き構える。
女官は身軽に着地し伸びた鋭い爪で威嚇してくる。
女官
「ばれたか・・・そう俺はあの時の鬼の生き残り、茨木童子だ。」
渡辺綱
「茨木童子だと? 酒呑童子の右腕と呼ばれたあの茨木童子か? ほほうよく生きて居ったなぁ・・・うれしいぞ。俺は叶うならばもう一度お前と死合ってみたかったのだ。」
茨木童子
「俺もあの山での一件以来、お前らを捜して居ったのだよ。仲間を惨たらしく殺してくれたお前達をな。」そういうと茨木童子は腕を伸ばし綱の髷を握り、渾身の力で地面にたたきつけた。
綱はよろけそうになるも踏ん張りながら頼光に貸して貰っていた髭切を左右に振り回し逃れた。
渡辺綱
「あぶねぇ・・・もう少しで首ごと持っていかれるところだった。」
茨木童子
「惜しいなぁ・・・もう少しだったんだが、
まぁ簡単に殺しても面白くないからな、もだえ苦しませて殺してくれようぞ。」
渡辺綱
「そう簡単にはこの命くれてはやらんよ。
おまえこそこの綱にあった事後々公開するが良いわ。」
茨木童子
「ゆうてくれるわ、人間風情が。」
綱の髭切と茨木の爪がぶつかり合い剣戟を振るう度に火花が散る。
渡辺綱と茨木がやり合っているシーン。。
茨木の爪が綱の頭上をかすめた時、綱が髭切を下段から上段へ薙ぎ払う。
茨木童子
「ぐわっ!!」
茨木童子が腕を押さえている。
渡辺綱
「どうだ、観念せよ、茨木童子。もう戦えまいて。」
茨木童子
くそっ不覚、この茨木が貴様ごときにやられるとは。」
渡辺綱高笑いをしながら
「ふん、この腕は記念に俺が頂く。悔しければ取りに来るがよいわ。要らぬならよいがな。
は、は、は、」
茨木童子
「必ず取りに参る、その時までおぬしに預ける綱!。」
茨木童子はそう言い残すとその場から霧のように消えて行った。
渡辺綱
「茨木童子か・・・中々厄介な奴じゃ、その分この腕は自慢に成るな。」
綱は茨木童子の切り落とした腕を拾い自宅へ戻っていった。

山の頂上のシーンに戻る
酒呑童子
「で、その腕はどうしたのだ? 今見るとちゃんと着いて居るが。」
茨木童子
「ええ、あの後、奴の叔母に化けて綱の家にまで行って取り返してやりましたよ。ただあの安倍晴明が術を掛けて居ったのでてこずりましたがなんとか。」
茨木童子 笑いながら斬られた左腕をさする。
酒呑童子
「間に合ってよかったな。少し遅れたら流石に鬼でも元に戻らなかっただろうにな。」
茨木童子
「ええ本当にギリギリでした。綱がお人よしだったから助かりましたよ。」
酒呑童子
「そういや、この前苦しんで死にかけている小鳥を拾ってなぁ、ゆるりと撫でてやったんだが、急に元気に成って飛んで行き居ってなぁ。」
茨木童子
「なんと、不思議な事ですなぁ、蘇った時に何かあったのでしょうかねぇ。」
酒呑童子
「もしかして精気を集めた者の中に優秀な術師が居って、魂を呼び戻す術でも(反魂)を身に着けてしまったのかもしれんなぁ」
茨木童子
「それは考えられますね。なんせ有名な術者や武将を狙い撃ちしましたからね。中には噂だけの弱っちいのも居ましたが。」
笑う鬼二人。
酒呑童子
「お前は元々腕が立つから人間ごときには負けんだろうよ。奴らのような半分鬼みたいな人間ならいざ知らず。」
茨木童子
「ですね。奴らは特別でした、流石に今はもう土に返って居るでしょうね、我らと違って奴らは普通の人間でしたから。そう思うとあの戦いも懐かしいです。」
酒呑童子
「だな。」
酒呑童子懐かしむ様に思いふける。
酒呑童子の回想シーン
酒呑童子
「鬼の血筋…
俺の一族は昔、今でいう西暦800年代だから
あれこれ千年も昔の事だ。
宮城の有る都の外れの山、大枝山に居を構えて居た鬼の一族で沢山の仲間と共に楽しく暮らしていた。」

鬼1
「今日も都の公家どもからたんまり戴いて来てやったわ。」
鬼2
「若い女もさらってきてやったから選び放題じゃ。」
鬼3
「そう欲しいものが有れば都まで行ってひと暴れすると、公家共は自分達の命が大事だから食べ物や酒、若い女を気味の悪い笑顔でにこにこしながら寄越しやがる。」
鬼4
「そのうち都の役人さえ俺達の言う事を聞かないものは居なくなった。」
鬼1
「確かにのう。うちの親分はこの国で負け知らすの鬼神王だから、仕事がしやすいわ。」
鬼2
「まったくだ、酒呑童子様様だ。 
鬼1、鬼2 鬼4
「わはははは~~~」
鬼3
「人間なんてそんなもんさ。
なんでもこの都が出来る時にこの土地に住んでいた妖怪を
ある山の麓にえらい坊さんが呪術で一箇所に封じ込めたそうだ、
岩を三角に配置して封印したらしいが
俺達鬼の妖力に導かれてその封印のほころびから這い出て来て都で好き勝手暴れて居るそうじゃ。」
鬼4
「食い物から女まで手あたり次第、俺達の獲物を襲い喰らい始めやがった。憎々しい奴らじゃ。」
鬼1
「ほうよ、挙げ句の果てに妖怪共は持っていた疫病を流行らせ苦しむ人間を見て大笑いしてやがった…別に人間どもが苦しむのはどうでもいいが。」
鬼2
「俺達の食い扶持が無くなるのは許せんから
俺達は都で妖怪共を刈りはじめたのさ。」
鬼3
「ほう・・・で親分はどうしたんだい?
鬼4
「そりゃ親分は 切れたよ。だからいの一番に都であやかしをぶちのめしていたよ。
元々気が荒い性分だからなぁ。」

鬼1
「親分は人間の為に立ち上がったのか? あれだけの人間嫌いが。」
鬼2
「人間の為? 馬鹿な事を言うな。食うだけならまだしも疫病を流行らしやがった。食い物が無くなったら俺たちまで全滅する。」
鬼3
「そういや俺も聞いたことがある。都に出ていた仲間が腹が減ったとさ迷っていた所を妖に襲われて生きたまま食われたそうだ。次の日に全身傷だらけで死んでいるのを見つけたんだよ、親分が。」
鬼4
「鬼があやかし位にやられるのか?
あんな野郎どもはひっ捕まえて裂きイカみたいに裂いてやりゃいいんだよ。」
鬼1
「そいつはなぁ・・俺たちみたいに、まだ完全な鬼に成ってなかったんだわ。
所謂なまなりっていう奴さ。せめてはんなりだと抵抗出来ただろうに・・・」
鬼2
「親分が言うには、俺ひとりならなんとか食えて行けるが、小さな子供もいるしな、仲間も沢山居る。
中にはひとりじゃまだ食えない奴も居るから俺が面倒見ないといけないんだってね。」
鬼3
「親分は男気持ってるねぇ、
まぁ普通は縄張り荒らされて、仲間までやられたら腹も立てるわな。」
鬼4
「そういう理由(わけ)で妖怪共を食い散らかしていたらしいけれど、妖怪の中に知恵が働く奴がいてな、人間に取り入って俺たちに騙し討ちをくらわしやがったのさ。」
鬼1.2 うなずきながら聞いている。
鬼1
「そうさ今まで俺たちに従って居た公家共が源とか言う強えぇ奴らを雇って
山に攻め込んで来やがった。なんでも後ろ盾に陰陽師の安倍晴明が居たらしい」

平安京 
都 大内裏の陰陽寮の一室 数人の公家に囲まれ真ん中で陰陽師の安倍晴明が
陰陽道の道具にて占いを行っている。

陰陽師 安倍晴明
羅針盤がくるりと周りある方向を指し示す。
安倍晴明
「最近の都が荒れている元凶は大枝山の鬼の一族と言うご神託が降りました。」
右大臣
「ぬぬ・・・老坂の大枝山に住む鬼と言えば・・あの鬼神王酒呑童子でごじゃるかっ!」

公家1(心の声で)
「なぜ・・・奴が都に疫病を巻き散らすのじゃ? 奴らは我々と協定を結んでおるはず。」
公家2
「右大臣様 これは即急に手を打たねばいけませぬ。」
公家3
「そういえば摂津の国に妖怪退治を得意とする武将集団が居ると聞きましたぞ。」
公家1
「ほう、そのようなものが・・・名は何と言うのじゃ?」
公家3
「確か源頼光とかいう名じゃったような。」
右大臣
「名なぞどうでもよい。早速そのものを内裏へよびつけるが良い。」
公家2
「おうせのままに。」
公家一同 右大臣に頭を下げる。
公家その場をはける。
途中 公家1と公家2の会話
公家3
「そうそうこれは内緒事でござるが、なんでも左大臣様が右大臣様を蹴落とすためにあやかしと組んだとの噂がごじゃるなぁ。」
公家4
「これ、滅相も無い事を言うでない。その首よそへとばしたいのでごじゃるかえ?」
公家3
「いやいや滅相もない。まだまだ生きていたいでごじゃるよ。」
公家4
「では今の話、聞かなった事にして置くでごじゃる。今後一切口にしないで居れ。」
公家3
「はは、助かりまする。」
公家3 公家4に深々と頭を垂れる。

場面変わって 大江山
酒呑童子 ナレーション
「奴らは初めは近くの山から来た山伏だと偽って我が城にやって来て、今日一夜所望したいと言ってきた。」
酒呑童子城内 座敷
酒呑童子
「ほほう、修行の山伏かぁ、泊めてやっても良いが、何か差し出せ。」
山伏1
「これはありがたい、だが我らは修行の身、何も持ち合わせて居らんのです。」
山伏の頭らしい男が言う。
山伏2
「そう言えば,先ほど寄った村で結構な酒を頂きましたので、それを差し出します。」
山伏2
「それもその村で秘蔵して居った酒で名酒だそうです。」
酒呑童子
「何?名酒とな。それは楽しみじゃ。」
そう言うと俺は奴らからその酒の入った瓶を奪い取る様にひったくった。
酒呑童子
「じゃがまだお前らを信用したわけではないぞ。 もし不穏な動きをすればその場でなますにしてくれるからそう思うが良い。」
山伏3
「そこは重々理解しております。山で籠っていると食事が頂けるだけでありがたい事なのです。それにこれだけ新鮮なものを出して頂けるなんて我々は幸せ者でございます。」
酒呑童子
「そうか、では遠慮せずに腹一杯飲みくいせぇ。まだまだ沢山あるでな。」
山伏4
「ありがたい事です。」

俺はあえてそれが若い女を膾にした造りと血の酒と言わずに奴らの前に差し出した。
それを奴らは嫌な顔一つせずにうまそうに食いながら飲みよった。
なんと人間の癖に肝が据わっておると感心した。
それで俺もころっと騙された。
安心して先程の酒の封を開けて俺は飲み始める。

酒呑童子
「酒呑童子の名の通り、俺は酒を呑むのが大好きなのだ。
だから坊主に成れず身を崩して鬼に成っちまったんだがな。」
それはさておき、早速その酒を一口飲んで感動を覚えた。
酒呑童子
「なんと今まで呑んだ酒の中で飛び抜けて旨いじゃないか。この口に広がる純米の香りが何とも言えん。」
俺は我を忘れてその酒を呑み続けた。

いい気分に酔ってふらふらと立ち上がろうとした時、急激な眠気に襲われた。
酒呑童子
「こりゃ、流石に飲み過ぎたか。 すまぬなぁ山伏殿、今日は飲み過ぎたようだ、先に休ませてもらう。」
そう言って俺は寝所へ寝に向かった。
一時して何か屋敷の方が騒がしくなってきているのを感じた。

酒呑童子
「誰か賊でも入ったのか? まさかなこの酒呑童子様の屋敷と知って入る馬鹿は居らんだろうって。」
しかし騒ぎは一向に収まらない。俺は眠気と戦いながら起き上がると今まで感じた事のない
目眩と全身に痛みを感じた。それは全身を走り抜けて自分の妖力と体力を奪い去って行くようだつた。

その時一人の山伏が苦しむ俺に近づいて来た。
先程の山伏の頭だった。
そいつは信じられない事を俺に言い放った。

山伏の頭
「酒呑童子、覚悟せよ、お前が嬉しそうに飲んだ酒な、神便鬼毒酒と言う名の酒で人間が呑むと倍の力が湧き出るが
鬼が呑むとその特殊な力と体力奪いとって
鬼としての能力を封じる事が出来る酒なのだよ。」
酒呑童子
「なに?図ったな貴様。いったい何者だ?」
源頼光
「わが名は源頼光 酒呑童子とその仲間を滅しに来たものだ。」
酒呑童子 ナレーション
源頼光とは都で名の馳せた武将でそれを頭領に
四人のまた豪傑で有名な武将を束ねている。(渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、卜部季武)噂では妖魔退治の四天王として名が売れていると聞いた事が有る。

 ふと見やると残りの奴らも武将姿に成って周りの仲間達と戦っている。うかつだった、
どこに隠れていたのか奴らの手引きで敵側の人数が倍以上に成っていた。奴らの思うつぼにまんまとはまってしまったらしいそれぞれの武将たちは名のりを挙げて鬼たちと刃を交えていた。

酒呑童子
「都では俺達を退治したら大層な褒章がもらえるらしいな、まぁ今までお前ら以外だれも来る奴なぞ誰一人居なかったのだが。」
源頼光
「褒章なぞどうでもよい。わしにとって貴様と戦える事が一番の褒章なのだ。」
酒呑童子
「面白い事を言う。俺はそう簡単にはやられんぞ、頼光。」
源頼光
「そう、普通の刀ならばお前を斬る事さえ難しかろうて、しかし我が手中に有るこの刀は有る方が鬼を斬る為だけに鍛えて下さった業物、名刀鬼切だ覚悟せい。」
酒呑童子 にやりとして
「何?鬼切だと?」
源頼光
「これが。謀(はかりごと)と言う物だ。
何か大事(おおごと)をなす時は何事も慎重に進めて行かねば成らぬでな。
しかも我らにはありがたい事にこの国の神がついて居られるのだ。」
酒呑童子
「ほう、神とな。この鬼神王には向かう神がまだ居ったとはな。」
源頼光
「酒呑童子、お前はやりすぎた。山賊の真似ごときなら見過ごしてやっても良かったが
病をはびこらせるのは頂けん。」
酒呑童子
「病だと? あれは俺達じゃない。比叡から逃げ出してきたあやかし共の仕業だ。」
源頼光
「何をいまさら、鬼神王たるものが見え透いた嘘をつくでないわ。言い訳なぞ要らぬ。」
酒呑童子
「信じてもらえん様なら刃を交えるしかないな。」
源頼光
「望むところ、この鬼切の露にしてくれるわ。」
酒呑童子
「いうてくれるのぉ、頼光。我も本気を出すしかないな。いでよ二天の剣(つるぎ)。」
そう叫んだ酒呑童子の手に異様な刀が出現した。先から雷光が煌めいている。
源頼光
「ほほうこの頼光に雷とはな。しかし神便鬼毒酒を飲んでいてもそれだけの力が有るとは流石、鬼神王と呼ばれるだけある。せいぜい楽しませてくれようぞ。」
酒呑童子
「この鬼神王たるわが力を見くびるでないわ。
まだまだ人間ごときにやられはせぬわ。」
源頼光
「それでこそ鬼神王、酒呑童子。参る!」
源頼光、酒呑童子
戦闘シーン
二つの刀がぶつかり合い火花を散らす。

あの俺が拾って育てていた子供たちは逃げ惑うが雑兵(ざっぴょう)共になぶり殺しにされていた。俺はそれを横目で見ながら何もできない自分が悔しくて泣いた少しでも逃げてくれと願うしかなかった。
酒呑童子 涙を流しながら
「きゃつらを見殺しに居たのは俺だ、許せよ・・」
源頼光
「鬼も子が殺されれば涙を流すかよ。」
酒呑童子
「許さぬ、頼光、許さぬぞ、わが同胞ならば鬼であるがあの子供たちは人間ぞ。」
源頼光
「貴様と共にいる者は皆人ではなく鬼と見る。それは仕方なき事。それに雑兵共にはそんな事わかりはしない、奴らはただ言われるがまま斬り殺してるだけだ。」
俺の身体は時間が経つにつれ毒が回って来たのか二天の剣が重く感じる。
四天王達は少しでも弱いものを護ろうとしている幹部連中を容赦無く切り捨てて行った。
頭領の源頼光が鬼斬りの刀の間合いを計りながら近づいて来る。
源頼光
「ほほう、動けぬか鬼神王殿、さては今頃酒が効いて来たと見える。」
俺が動けないと知ると太刀を振りかざし一太刀入れてきた。
源頼光
「おっと少しずれて肩口に食い込んでしまったようだ。」
鬼切の刃は俺の身体に激痛を走らせる。
酒呑童子 にやりと
「まだまだ、動けるぞ、侍大将殿 がぁぁ。」
俺は頼光の兜に牙を立ててかじりついてやった。 しかし奴には届かなかった…
源頼光
「惜しいのぉ鬼神王。これはな星兜と言う神々が我に与えた兜で神陸により酒呑童子の牙をも届かぬ代物なのだよ。」
酒呑童子
「普通の兜なら俺の一かみで兜毎貴様の首を噛み切ってやれたものを。」
四天王も周りを制圧したのか頼光の元へ集まって来た。茨木童子と戦っていた渡辺綱も居た。
渡辺綱
「頼光殿、兜に噛みついて動く事が出来ぬ内に首級を跳ねてしまいましょうぞ。」
源頼光
「綱、頼む。」
源頼光
「酒呑童子 楽しかったぞ、さらばじゃ。」
綱は頼光の鬼切で俺の首を見事に跳ね飛ばした。兜は首が落ちた瞬間粉々に砕けてしまった。
源頼光
「どんな理由であれ都を荒らした罪は大きい
奴の首は都に持ち帰り晒す事とする。」
そう言うと部下に
源頼光
「そこの首桶に酒呑童子の首を詰め込んでくれぬか。」
酒呑童子 ぎょろりと目を動かす。
「どこかしこも仲間が倒れて朽ちていっている…」
「はて俺はどこへ連れて行かれるのだ…」
「山から流れ出る綺麗な川が血の色で
満ちて居る…魚はもう取れんのかなと」
色々な事を考えていた。

渡辺綱
「おい貴様、幾ら鬼でも死んでしまえば仏だ、丁寧に扱え。」
若い兵士が仲間だった死骸を嬉しそうに蹴り飛ばして居るので綱が咎めている。
四天王に指示されて
雑兵達が首桶を持ち上げる。
「よいしょっと・・・しかしなんとまぁ重い首なんだ。」
雑兵達に担がれゆるりと都へ向かう。
酒呑童子
「俺はこのまま都で帝に逆らった馬鹿者とさらし者にされ笑われるのだろうか。」
そう思うと俺は急に山から離れるのが怖くなった…
先の峠を越えたら、都は近い。
酒呑童子
「離れたくない。山から離れてなるものか。」
帰れなく成ると言う思いが俺に最後の力を出させた。
雑兵達は急に重くなった首桶を道端に落としてしまった。
渡辺綱
「貴様ら何をしている。もう一度持ち上げよ。」
雑兵達はもう一度持ち上げようとしたが
ぴくりとも動かなかった。
坂田金時
「おらが持ち上げてみるべ。なんせおらは
熊と相撲を取って負け知らずの足柄山の金太郎さんだからな。」
坂田金時はその身に渾身の力を込めて持ち上げようとするが持ち上がらず、顔が真っ赤になっただけだった。

困り果てた四天王は源頼光に伝えると
源頼光
「都に不浄のものを入れるなとの事に違いない、さてどうすれば良い物か。
ふと見ると近くにお地蔵さまが祀ってある。
渡辺綱
「頼光様、あの地蔵に聞いてみれば如何かと。」
源頼光
「うむ、ではそうしてみようぞ。」
頼光と四天王が手を合わせる。
地蔵様
「街道筋の小さな山に埋めよ。」
皆の耳に声が響いた。
源頼光
「ご神託が降りた。早速そうしよう。」
四天王は俺の首級を街道筋の小さな山の頂上に引きずりながら持ち上げた。
渡辺綱
「金時、ここに大きめの穴を掘ってくれないか? 首をそこへ埋めるから。」
金時
「あいよ、任しておいて。ほいほいほいと。」
金時は軽々と穴を掘り進めた。
金時
「掘れたよ。でここへ桶毎落とすのかい?」
碓井貞光
「見事なものだな、金時。」
金時 えっへんと威張る。
渡辺綱
「そのまま桶を引っ張って穴の中へ転がり入れれば終わりだ。」
卜部季武
「そのまま桶ごと埋めてしまえばいい。」
源頼光
「これで酒呑童子もこの世から消える。強い鬼だった。今度まみえる時は必ず俺一人で倒す。」
酒呑童子
「頼光、俺は必ず蘇る。それまでお前が生きていたらまた戦おうぞ。今度は一対一の勝負でな。」
それまで深い眠りに着く事にした。

時代が変わり江戸初期の老坂峠の近く
山の蝶のシーンに戻る。

酒呑童子
「そう言えばあれから何年程経って居るんだ?
周りもすっかり変わってしまって居るようだな…」
茨木童子
「そうですねぇ・・・大体大江山からだと大体六百五十年ほどに成ります。」
酒呑童子
「そんなに寝ていたか…道理で調子が良い。都は未だに健在らしいなぁ・・・村人が話して居ったわ。」
「ええ、政治の中枢は幕府とやらに取って代わられてますが、公家共は情けない事に未だにあのままです。お互い足の引っ張り合いをしていますよ。」
酒呑童子
「何年たってもきゃつらは変わらんし情けないの一言だな。しかしてその幕府とやらはなんぞ?」
茨木童子
「昔公家に仕えていた武将たちが実権を握る為作り上げた組織だそうで、まだ公家よりはましかと。」
酒呑童子
「所詮人間、時間がたてば公家と同じ様な体制に成るであろうな。」
うなずく茨木童子
「暗転からスポットで岩に腰を掛ける二人を浮かび上がらせる。
バックはちらちらと星のような光の演出を。」

虫の鳴く声が小さく流れている。それ以外は殆ど何も聞こえない。

茨木童子が立ち上がりセリフ

茨木童子
「この国は都の一部以外は疫病や争いの火種が未だに消えてませぬ…
人間共は相変わらず醜い争いばかりで
代わり映えしません…。」
茨木童子はゆっくりと空を見上げ呟き
そのまま目線を酒呑童子に向けた。

酒呑童子 肩をゆっくり回しながら茨木童子の話に相槌を打っている。

茨木童子
「しかし集めた術師の中にその様な能力を持つ者が居ったとはつゆ知らず…」
酒呑童子
「人間の中にも厳しい修行とやらをして験(げん)を手に入れる奴も居ると聞いた。
俺の元師匠の最澄もそのひとりだったよ。」
茨木童子
「そうでしたね。もし鬼に成って居なければえらい僧侶になっていたのでしょうかね。
想像できませんが。」
酒呑童子
「確かに・・・俺には似合わないな。ぼうずなんて。」
茨木童子
「意外と真面目一辺倒で人気者かもしれませんよ。」
茨木童子 笑う
酒呑童子
「冗談じゃない。人前で偉そうにぶってるより、俺は鬼をやってる方が気が楽でいいわ
。それに坊主は酒も飲めないからな。」

茨木童子
「それはいやですね。やっぱり好きなことしていたいですからね。」

酒呑童子
「ほうよ、それが一番身体によい。」
鬼二人笑う。

酒呑童子
「人間共は特に都に住む公家共は我等鬼を化け物だのなんだのと言いやがるが
奴らの方が余程野蛮で鬼畜だと俺は思って居る…
あないに小さき子らをも俺と居たばかりに鬼の子と決め付け皆なぶり殺して仕舞いよった…奴らの方がよほどわしらより鬼じゃ。」

酒呑童子はその目に涙を浮かべ呟く
そのまま元のいたずらっ子のような顔をして茨木童子に向き直り

酒呑童子
「だからこの反魂術を使いあの子たちを蘇られてやりたかったが時がたちすぎて居るから無理だった。可哀そうになぁ。」

茨木童子
「ただ使いようによってはこの能力は酒呑様を楽しませてくれそうな代物になるような気がしますな。」

酒呑童子

この先 2人芝居が続く 出演者は二人だけなので
掛け合いに成る。呼吸は合わせてセリフはゆっくりめに…
茨木童子
「酒呑様、はてはまた何か企んで居られますな…」

茨木童子にやりと酒呑童子に笑みを返す。

酒呑童子
「まぁな人間共に一泡吹かせてやろうかと思っては居る…」
酒呑童子もにやりと返す。

回想シーン
麓の村人の会話
村人A
「よう、あの話聞いたか? 善さん」
村人B(善さん)
「ん? ああ・・・村長(むらおさ)んとこのよね坊の夢の話かえ?」
村人A
「ほうよ、なんでも神さんが出て来てあの山のてっぺんにある土饅頭の前に祠を立てて
祀りあげよって話じゃ」
村人B
「あの都のえれぇお侍さんが倒した鬼の親分の首やな。」
村人A
「ほうよ。こやすの地損様が都へ持ち込んではいかんとこの山へ埋めよって言われた。」
村人B
「そうそう、その夢を見てからよね坊が毎夜毎夜その鬼の首の夢を見てうなされてるらしいでな。」
村人A
「ならばはように祠立てて祀って面倒見たらなあかんのとちがうか?」
村人B
「なんでもよね坊が言うには、祀ったら首から上の病を治してやるとかなんとか・・」
村人A
「それはありがといのぉ・・・で村長はどうすると?」
村人B
「さっそく木材屋に色々聞いて段取りしていたわ。まぁ孫がうなされてて可哀そうやなんやろな、村長も自分の孫は可愛がっておるでの。」
村人B
「それやと祠の事でもうすぐ寄り合いがあるな。流石に村長も勝手には建てられんからなぁ。まぁ反対する奴は居らんからすぐ決まるやろうけど。」
村人A
「いやそうでもないで、権左がえれぇ反対してたらしいからな。ほんなもんご利益なんかあるかいって。」
村人B
「あいつはひねくれもんやから、気に入らん事はなんでもはんたいしよる。めんどくさいやつじゃ。」
村人A
「いっそ祟られたらあのひねくれ根性も治るんやないか?」
村人一同  笑う
首塚のシーンに戻る。

茨木童子
「あれから数年後にこの地に酒呑童子様の首が有ると周りの村の人間共がこの周りに祠を立てて奉り上げて居ります。何でも首から上の病に良く効くそうですよ。」

酒呑童子
「俺にそんな力が有ったかな?」
酒呑童子が苦笑いしながら頭を捻る。

茨木童子
「もしかしたら蘇る時に使った精気の力が
少しづつ漏れ出して居たのかもしれませんね。
それが人間共にも良い効果を与えていたのでしょう。
まぁそれで公家共の追随を逃れで安全に休息出来たから良しとしておきましょうか。」

酒呑童子はうむうむと頷きながら
ごそごそと懐から
酒杯と酒の入った徳利を出した。

茨木童子
「いつの間にそんな物を…ほほう濁り酒ですか。かくゆう私も酒が好きでしてね。特にこういう濁り酒は米の甘みが生きていてたまらんのです。」

酒呑童子
「そこの祠に備えて有ったのでな…
まぁ祭神は俺だから、呑んでもバチは当たるまいて。さぁお前も呑め。」

酒呑童子は酒杯に並々と濁り酒を注ぐと一つを茨木に渡した。

茨木童子
「確かに…米だけの濁り酒とはまた上等で粋なお供えですね…」
にこにこしながら飲み干す二人の鬼
酒呑童子
「安物だとここの神様は罰を当てるでな。わははは
ほれスルメもあるぞ。 これをちょいちょいと割いて
軽く炙れば旨い酒の宛に成る。」

ナレーション
そう言うと酒呑童子は割いた
スルメを見つめる…
目の色が金色に変わると
スルメからうっすら煙が立ち
程よく焼けたうまそうな
匂いがして来た。

茨木童子
「スルメを焼くのに眼力をお使いとは参りました…」
茨木は思わず笑ってしまった。

酒呑童子
「さぁ、食え。これを宛てに
これからの事を色々考えながら呑もう。良い知恵が浮かぶかも知れんぞ。」

茨木童子
「ですね…これからは今までみたいに山賊の真似事では無く我々にしか出来ない事を商いにするようにと思ってます。人間の世界に噛み付くのは古いですからね‥逆に利用してやる位で無いと。」

酒呑童子
「そうだな…これからの世はそれが一番
良いかも知れん。奴らに出来ないが我々には出来る事を…」

茨木童子
「先ずは実験的に誰かを反魂術で蘇らせてみるのも一興かと。」

酒呑童子
「なるほど…そういえば今、天草の方で偉く派手に人間同士が殺し合いをしているらしいな。そこで誰か適当に見つけて反魂術をやってみるのも面白いかもしれん。」

ナレーション
徳利の酒が無くなると
酒呑童子は
どこからともなくまた酒瓶を持ち出してきた。封も開いていない一升瓶だ。

茨木童子
「それは名案。出来れば優れた才能を持つ者が良いかと。」

茨木は酒呑童子の酒杯に
置いてある一升瓶から並々と注いだ。

酒呑童子
「聞いた所に寄ると一揆の頭(かしら)はまだうら若い少年らしいなぁ‥もし天草で奴の躯が居れば良いがのぉ。」と一気に飲み干す。

茨木童子
「ほほう その小僧はして名はなんと申すのですか?」

酒呑童子
「天草四郎時貞と言う武家の息子らしい 
なんでも豊臣の血を引くと言われて居る…だから幕府は必死で潰そうとしとる。それを蘇らせると面白い事に成ると思わんか?」

酒呑童子はスルメをその牙で引き裂きながら食った。
遠くからでもわかるように大袈裟に。

茨木童子
「それは面白き事、ついでに腕の立つ輩を数人蘇らせるのも良いですな。」

酒呑童子
「幕府からしたら、倒した奴がまた攻めて来るのは
とんでもなく恐怖だろう。伴天連の神を信じておるらしいから余計にな。」

酒呑童子飲みながら続ける。
「負け戦なら四郎自身も神に裏切られたって気持ちが強く残るだろうから
その時の力を利用して一緒に蘇らせた奴らと共に
鬼として暴れさせて朝廷と幕府に一泡吹かせてやるも一興だし、そのまま外の戦場(いくさば)に出してやるのもいいな。」

茨木童子
「なるほど…若い鬼は血の気も多いから手あたり次第どこでも暴れるのでどこかで抜ける場所を作らなきゃいけませんからね。
それが戦場なら奴らも大して怪我もしない暴れ放題出来ますから。」

酒呑童子
「幾末は奴らに気兼ねなく暴れられる場所を与えてやらんといかんし
出来ればそれを商いに出来ないかと知恵を絞って居る所でな。」

茨木童子
「おもしろいですな。一石二鳥でもある。これから先も人間共は争いを止める事は先ず無いですからね。それを商いに出来れば…」

酒呑童子
「先ずは試しに天草へ行こうと思う。まだ始まったばかりの戦場(いくさば)だから、色々試せる。」

酒呑童子はにやにやしながら酒をあおりながら呟いた。
茨木童子もその話を聞いて、にやついている。

茨木童子
「では、もう少し呑んで朝から向かいましょう
少しでも早い方が良いでしょうから」

そう言うと残った酒を注ぎ入れ、
酒呑童子と茨木童子はその酒杯をぐいっと飲み干した。

ナレーション
この後、二人の鬼は天草の地に向かい、天草四郎と言う少年武士と
運命的な出会う。
それから2人の鬼は傭兵会社を設立、世界を相手に兵士の派遣を行う様に成る…
その資金で天草楓が通う中高大のマンモス校「草薙学園」を創立する。

本篇の主人公天草楓が活躍する数千年前の
若き鬼たちの話である。

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