菅原裕子『「ボヘミアン・ラプソディ」の謎を解く』光文社新書
本書は、クイーンの名曲「ボヘミアン・ラプソディ」は、そのボーカルであるフレディ・マーキュリーがゲイであること告白したカミングアウト・ソングであるという仮説について、その真相を明らかにしようとしたものである。
著者は、クイーンのマニュアックなファンではないが、中学生のころ、80年代には洋楽漬けの毎日を過ごしていたという。「ボヘミアン・ラプソディ」を初めて知ったのは、ギリシアの女の子との海外文通からだという。
2018年11月9日、映画『ボヘミアン・ラプソディ』が封切られたが、その公開直前、あるラジオの映画紹介で、よくある有力な説として、この仮説を耳にしたことから始まる。
「ボヘミアン・ラプソディ」は、コンプレックス・ソング(複雑に入り組んだ曲)だという。元々3曲を別々に作ったものを合体させている。異なるジャンルの曲が共存している。初めて聴くと、次を予想させないオキテ破りの曲だ。
歌詞でも、”Mama”という呼びかけはロックとしては異質であるという指摘があるという。母親を”Mama”と呼ぶのは、イギリスではきわめて限られた上流階級だけだ。フレディが実際に母親を”Mama”と呼んだとは到底思えないともいう。
著者は、「カミングアウト説が嘘でも本当でも、映画版が意図的にフレディをアイコン化したのだとしても、どちらでもよいのではないか」と言う。クイーンの楽曲を愛する者にとって必読の書であると思う。
愛知サマーセミナー2019での講演をきっかけに、さらにリサーチして、光文社新書のnoteに連載したものがもとになっている。
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