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出産しようとしたらペリーとエドモンド本田が日米和親条約を締結した話

「今日入院できる?」


その日は突然に訪れました。

最近は無痛分娩の人も多いですが、「一度は腹を痛めるという体験をしてみよう」という気軽な考えで自然分娩を選んだ私。


ある日の検診、このまま予定日まで自然に陣痛が来て生まれるのを待っていたら赤ちゃんが大きくなりすぎて下から出れなくなってしまうので、今日これから入院をして陣痛誘発剤で生みましょう。と提案されたのです。


予定日はまだ先、突然の提案に心の準備ができないまま入院準備を整えるべく帰宅しました。


旦那はちょうど出張中で帰ってくるのは明後日、その間に生まれてしまうかもしれない・・。


でも元々立ち合い出産には否定的だった私。すべてを見られることで女性として見てもらえなくなるかも・・とも考えていたので出張中なのはちょうどいいのかもしれない・・。

というかもう明日のこの時間には生まれているのかも・・等と心も頭もぐるぐると落ち着かないままに入院の準備をして病院に向かいました。


✳︎✳︎✳︎



通常、出産は

①日常生活を送るうちに子宮の入り口が少しずつ開く→
②突然の陣痛!病院へGo→
③子宮の入り口がある程度開くor破水(赤ちゃんを守る袋が破れる)→
④いきんでええで~→
⑤よしきた!おらーーーーーー!!→
⑥爆誕!

という段階を踏みます。


私は陣痛誘発剤という薬を使って人工的に②陣痛を起こす処置を行うこととなりました。

ただ①子宮の入り口も全然開いていなかったので、まず広げるためにバルーンというものを入れて一晩過ごすことに。

バルーンというのは魚肉ソーセージサイズの水風船に生理食塩水を入れたもの。

これを子宮の入り口にぶちこまれ、力技でこじ開けるわけです。

下腹部にやってくる重苦しい鈍痛、いうなれば重い生理痛のような感じ。


いってぇぇえ・・・。

しかし人間とはすごいものでしばらくすると慣れ、いつも通り元気に飯を食らい就寝しました。


…翌朝


先生「全然wwww開いてねぇwwww」


だよねーーーーーwwwwwwwwwww

全然痛くなくなったのはつまりそういうこと。


先生「もっと大きいの入れるわ。」


先生が持ってきたのは昨日の魚肉ソーセージ の3倍120ml。

さらに進化したサラミサイズを淡々とぶち込まれました。


WOW!!!!


半端なくいってぇぇええええええええ!!!!!!!!!!!!


昨日とは比べ物にならない鈍痛と腰が重くなるようなだるさがこんにちは。
3倍なんだから痛みも倍だよねそうだよね。

夫や友達に痛すぎわろたwとラインをしつつ朝飯を食らい、余裕こいてたところに突然襲うさらなる腰の痛み・・・。


なんだこれは??
陣痛ではないんだよな?


「あの、すいません。陣痛促進剤っていつ入れるんですか?」
「え?もう入ってるよ?」


え?あ?そうなの?
昨日からしていたこの点滴にいつの間に薬が混ざっていたのね。

言ってよ!!!

てことはこれがすでに陣痛の始まり??

ラブストーリーは突然に、と小田和正は言いましたが、陣痛も突然に。


何から伝えればいいのか わからないまま腰は痛んで
浮かんでは消えてゆく 痛いという言葉だけ


どんどんと痛くなる腰。

私はただただ「痛い!」しか発することのできないbotへと成り下がりました。


友人は陣痛を「腰を白鵬に鈍器で殴られているような痛み」と表しました。


私は背骨の中に侵入した無数のエドモンドホンダがただただ一点に向かって百裂張り手を絶え間なくかましてくる、そんな痛みに感じました。
(集まれ!ストリートファイター世代!!)


腹でも腰でもない、背骨!背骨にくるのよ!!


じわじわとHPが削られる中、そこに容赦なく襲う第二の関門。

「いきみたい!!」

いうなれば強烈な排便感といいましょうか。
大が出そうで出そうで踏ん張りたくなるのです。

助産師さんに「私・・トイレに行きたい・・」
と訴えても、「それ赤ちゃんだから!!我慢して!!」と一蹴されます。

でも子宮の入り口が開くか、破水をするまで踏ん張ってはいけないのです。


想像してごらん。めちゃくちゃ大がでそうなのに我慢しなくてはならない状況。


想像してごらん。いつ開くのかわからない子宮口を待ち続け、エドモンドホンダの攻撃に耐えながら。


ほら、簡単でしょう?


私の中のジョンレノンがImagineを弾き語り始めます。


憎い…名曲が今はただ憎い…

さて、そこで活躍するのが

テニスボ〜ル〜。
(ドラえもん、大山のぶ代の声の方で再生してください。世代なんで。)



ご存知でしょうか?

これでお尻をゴリゴリと押すと、きばりたい気持ちが幾ばくか和らぐのです。


通常は誰かが付き添って腰をさすってくれるのでしょう。
でも私は一人。

親にも「すぐ生まれないだろうし、仕事休まなくても終わったらくればいいよ~!」と余裕をかましてしまった。


一人で痛い腰をさすりながら、お尻をテニスボールで押さえる私。


手が・・・2本じゃ足りない・・・。

この時ほど千手観音を羨ましいと思ったことはありません



手が生えぬなら、増やしてしまおうホトトギス。
親に出動を緊急要請します。


「きて」


本来なら腰をさすりたいその手を止め、ダイイングメッセージの如く命からがらラインを送ったもののいまいち伝わらず


「お昼食べたらいくね!」


と余裕の返事・・・。


伝えたい伝えられない。もどかしい気持ちで…
この腰、はちきれそうだよ!!


ELTのいっくん、うたばんでめっちゃいじられてたなぁ…と走馬灯のようないっくんが大量に頭を駆け巡るほど余裕がない今。


一分半ごとに訪れるこの痛みといきみ欲。


おまけに瞼を閉じると目の血管が切れてしまうらしく、目をかっぴらいて両手を使って腰と尻をさすり続け、ひいひいいいながら痛みといきみを耐え続けます。

想像してごらん。目をひん剥いて両手で腰と尻をさすり続けるババア…


呻きながらジョンレノンと再会している中、助産師さんが私の子宮口の開きを確認しに来ます。


先生「だめだ、全然開いてない」


OH!!!!!


「開国シテクダサ~~~イ!!!開国シテクダサ~~~イ!!!」 

私の中のペリーが叫び続けます。早く開け私の浦賀港!!!!!


うううううう~~~~~~と一分半ごとにうめき続ける私。

痛みが和らいだ!と思ったら一分半経つとまた地獄の痛み・・というサイクルが永遠に繰り返されます。


陣痛きたかも~と別の患者さんがカーテン越しの同室で待機していたのですが、私のあまりの悲痛な叫びに色々イマジンしてしまったらしく部屋の外へ行ってしまいました。


(ごめん・・・でも謝る声も出せないくらい痛い・・)

そんな中、下のほうで水が出たような感覚が。


「助産師さん・・なんか・・でた・・・」
「え?どのくらいのスピード?」
(スピードって・・なんだよ・・・。)
「粘度がある?水っぽい?」
「わかんない・・前者?」
「じゃあ破水じゃないわね!」


うめき続ける中でおかん到着!

神よ!!!

四手観音に進化した私はここぞとばかりに腰をさすってもらいます。が、しかし


「いつ!!!!いつ終わるの!!!終わりがみえないーーーー!!!!」


私はペリーと共に余りの鎖国の硬さにぶちぎれます。


黒船もう来てるんですけど!!!!


エドモンドホンダの手も緩まず、痛みは増しスーパー頭突きまで加わってきました・・。


そして先生の巡回

「あれ!もう破水してるよ!」


だーーーーかーーーーらーーーさっきいったじゃーーーーん!!!!!


「あれ何時頃でした?」


この状況で時間なんてみてねぇよ!!


お前は!!!!ペリーと一緒にエドモンドホンダと戦っているときに!!時計を!!!見れるんですか!!!!!



「わからないぃいてえええええ・・・・40分前かああああああああ??」


✳︎✳︎✳︎



そこからは早かった。
赤ちゃんが大きくてなかなか出なかったので吸引分娩でスポンと。

この世に機械で引っ張り出されて、頭の形がプレデターぎみになりつつ生を受けたかわいいわが子とご対面。


ああ・・やっと終わったんだ・・・・。よかった・・。


開国したよ・・。


エドモンドホンダとペリーが無事日米和親条約を結んだんだ・・。

満身創痍で分娩台で放心する私の耳に入ってきたのは

先生「あれ?もう一人の陣痛室の〇さんは?」
助産師さん「私、まだまだだと思いますってさっき帰られました。」

(私のせいで・・イマジンさせすぎてごめんよ隣人・・)

これで終わりかと思いきや、この後股が痛すぎて座れず入院中即ドーナツクッションをぽちりました。


✳︎✳︎✳︎


出産は腹を痛めて生む、とよく言いますが実際は腰を痛めて生むものだと広く知っていただきたい。


私の腰をエンドレスでさすり続けた妙齢のおかんが翌日筋肉痛になったほどの痛みといえば伝わるでしょうか。


そして私は無痛分娩宣教師ザビエルとして生きていくことを決めました。

みんな!!無痛is最高だよ!!!!!


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