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海がきこえる 大嫌いって言ってやる

子どものころから、海がきこえるのリカコが大好きだった。ジブリの中でリカコほど好き嫌いが分かれるキャラクターはいないと思う。

私は高校生活が大嫌いだった。何が嫌かって、あの女子の団結力が嫌だった。
合唱コンクールで大きな声で歌ってない人を、徹底的にハブるあの感じ。あの時張りきっていた人に、あれの何がそんなに泣くほど嬉しかったり悔しかったりしたのか問いただしたい。

高校生の女子はモテる女が嫌いなのだ。中学生は相手となる男子がまだ子どもなので、そこまで露骨ではないのだけれど。
自分たちの仲間でない、群れていない可愛かったり美人な子、彼氏がいる子に対するあの敵意は何だったのだろう。

「ヤナギダ?誰それ、見たことも聞いたこともないわよ。ここに連れてきなさいよ。あんたなんか大っ嫌いって言ってやるから。」

私が一番好きなリカコのセリフだ。

よさこいの練習を真面目に参加していないという理由で呼び出したくせに、何故か「ヤナギダに色目使ってんじゃないわよ!」という話にすり替わっていく。ここで一番かわいそうなのは、見たことも聞いたこともないと言われてしまったヤナギダ君だ。勝手にフラれてしまったヤナギダ君。

家庭の事情で東京から高知に引越してきたリカコ。ただ美人というだけで、ただ群れるのが嫌いというだけで、クラスで浮きまくる。

相手が自分たちの思い通りにならないというだけで陰口を言われてしまう。絶対に悪いのは陰口を言っている方なのに、言われたほうが、「浮かないように上手いことやらなきゃダメだよ。」と、諭される。
私は学校生活のこういう感じが嫌で嫌でたまらなかった。リカコの気持ち、めっちゃわかるよ…。

美人なリカコは明るく朗らかに、よさこいの練習を頑張れば良かったのだろうか。クラス全員の名前を覚え、みんなと仲良くなれば良かったの?そんなのリカコじゃないでしょう?

リカコだって思春期の傷ついた少女だ。みんなと仲良くする元気も、よさこいなんてくだらない物に付き合う余力もないのだ。
リカコが普通の顔をしていたらこんなに叩かれただろうか?東京ではなく、香川や愛媛からの転校生だったら?
何故美人だというだけで、遠くから来たというだけで、こんなに理不尽な事が起こるのだろう。

思春期が一番楽しかった!などという人に、少数派の気持ちがわかるわけない。人と違うこと、それが悪いことでも良いことでも、違っているというだけで攻撃対象となる。

攻撃される方だった私は、それでも言い返すリカコを尊敬する。こんなことをあんた達なんかに言われる筋合いはない!という、真っ当な怒り。

高校を卒業するととたんに、他者に対して寛容になる。半年前までたかがよさこいでプンスカしていたくせに。狭い世界しか知らないというのは、なんて恐ろしい事だろう。

やられた方は絶対に忘れないからな。
自分ではどうしようもない事で、勝手に期待され勝手に嫌われ、あんなに窮屈だった高校生活に、大嫌いって言ってやる。

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