山と仏と御嶽山登拝 ~御嶽最後の強力(ごうりき)と若いYouTuberを繋ぐ物語~
2022年7月、御嶽山に登拝してきました。
御嶽山とは
御嶽山とは、長野県(木曽町・王滝村)と岐阜県にまたがる標高3067mの山です。
信仰の山として、今でも多くの方が白装束を身にまとい「登拝」しています。
なかなか登れなかった「御嶽山」
長い間、御嶽山に登りたいと思っていましたが、
御嶽山は御嶽本教や御嶽教といった御嶽信仰の総本山。
なかなかヨソモノがおいそれとお参りできるところではないかな・・・という感じ。
そうかと言ってふらっと一般登山で、
私(僧職系登山男子)が行くのも違うかなと思い、
今まで登ることができずにいました。
御嶽登拝のご縁が繋がってきました
転機となったのが、ある法話会でした。
私が高野山にいたときからの法友である長野県岡谷市の真福寺副住職さん。
6月に真福寺で行われる法話会に、布教師として法話をしています。
今年は副住職さんと私、さらに小河内神社(長野県箕輪町)の宮司さんと3人でお話をするという企画でした。
法話会が無事に終わり、
宮司さまと夕食をご一緒させていただきました。
その席でかねがね御嶽山に登りたいと思っていることをお伝えすると、
御嶽神社にご奉仕されている神職さんを紹介してあげると声を掛けていただきました。
御嶽神社と言えば御嶽山・御岳信仰の総本山。
これはすごいと早速連絡を取ってみますと、一緒に登ってくださるとのことでした。
御嶽登拝のご挨拶にしっかり袈裟を付けて「正式参拝」
私が修行した高野山では、
修行の節目ごとに麓にある天野大社という神社にお礼参りに行きます。
その時は紋白という袈裟を身に付け、正装で「正式参拝」をします。
神主さまからお祓いを受け、お勤め(もちろん読経をします)をして、
修行が無事に終わったことを報告します。
高野山にならい、
紋白袈裟の正装で御嶽神社に登拝のご挨拶に行きました。
「正式参拝」をし、同行いただく神職さまからお祓いを受け、当日の打ち合わせ。
そのときに「御嶽最後の強力」さんにも同行いただいてはどうかと提案を受けました。
強力(ごうりき)。
その時に頭に浮かんだのが、新田次郎の「強力伝」。
重い荷物を歩荷する職業かなぁ・・・という印象でした。
でも、御嶽山の昔のことに詳しい方とのことでした。
そして、御嶽登拝の重要な作法。
入山前に必ず滝行をして禊をすること、というお沙汰でした。
そこで、私の友人である山伏の天狗堂通信さん・漫画家の山伏ガールたなべみかさんに声を掛け、厳しい滝行をしてからのいよいよ御嶽山登拝!!
・・・というところは、次からの「御嶽山登拝編」でお送りしましょう。
登拝後のご縁を繋ぐ物語
今回は、その後の物語をお話します。
御嶽神社の神職さま、御嶽最後の強力さんお二人の話はとても貴重で、
恐らく普段でしたら聞くことができないことばかりでした。
かつてはたくさんあった「御嶽講」も年々数が少なくなってきています。
御嶽講の登拝のサポートをする「強力」さんも年々減ってきて、
今ではたったお一人だけになってしまいました。
そして、あとを継ぐ方もいらっしゃいません。
御嶽山最後の「強力(ごうりき)」という職業
強力という職業。
私は歩荷だけが仕事だと思っていたのですが、
全く違いました。
参拝者の荷物を背負い、登山道の情報や道案内・登山のサポート、信仰上の行場や拝むところの案内など、そのサポートは多岐にわたりました。
ときには「人」も背負うとのこと。
「あの世に行く前にどうしてもお参りしたい」という高齢の信徒さんを背負って登るそうです。
「重い荷物を背負うことが修行ではないでしょう」とのこと。
頂上にお参りすることが修行であり、登拝なのです。
登山ガイドさんも登山のサポートをする職業ですが、同じような仕事をするようでいて、強力さんはあくまで「登拝」つまりお参りのサポートなのだと感じました。
さて、
その神職さん、強力さんが私の思い、
「一般登山ではなく、信仰としての御嶽山をご紹介したい」という思いに共感してくださって、
本当に素晴らしい取材、撮影ができました。
(配信はお盆明けくらいを予定しています。僧職系男子的にめっちゃ繁忙期なんです・・・)
一つ一つ、大切な話を丁寧に話してくださって、
きっとご覧いただく皆さまにも伝わる、素晴らしい撮影ができたと思います。
自分の姿を残したいという強力さんの想い
帰りましてからすぐに、強力さんからお電話をいただきました。
私の撮影を通じて、自分がやってきた「強力」の文化を記録として残したいと思ってくれたのだそうです。
そこで、強力の本来の姿、
ちゃんと御嶽講の登拝に同行しているところを撮影してもらえないかとのことでした。
ところが、お盆前はお坊さんにとって一番の繁忙期。
それは強力さんもわかっていて、住職としては難しいだろうから誰かご紹介してもらえないだろうか、ということでした。
正直そんな話、私が駆けつけて撮影したいと思いました。
反面、それは私ではない方が良いとも考えました。
そこで、友人でもあるYouTuberの「けいし」さんに撮影をお願いしました。
長い伝統を持つ御嶽山登拝。
それを支えてきて、
今、消えていこうとしている御嶽の「強力」文化。
その「強力」を、これからのアウトドア業界を牽引する若いインフルエンサーでありYouTuberの「けいし」さんが撮影する。
これからの未来に向けて、なにか素晴らしいものができるはずだと考えました。
「強力」のうしろ姿を若きYouTuberへ!!
自分の最後の姿を撮影してほしいという御嶽最後の「強力」。
私は、そのうしろ姿を若いYouTuber「けいし」さんに託しました。
恐らく歴史に残る撮影になると思います。
そしてきっと、素晴らしい作品になります。
皆さま、お二人の姿を応援よろしくお願い申し上げます。
合掌
山と仏 小雪童
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?