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酔いどれランナーの孤独

3年前の8月8日、閉会式の直後に本来のマラソンコース42.195キロを走った。たった独りの東京オリンピック。このとき宿題を作った。本来のマラソンコースは国立競技場をスタートし、国立競技場に凱旋する。これが真の東京オリンピック。国立競技場に入れるはずもなく千駄ヶ谷の駅からスタート。

昨年、復活した新宿マラソンで国立競技場を走るチャンスを得たが、ハーフと10キロはPCR検査が義務付けられた。まだ3年前から時計が止まっているのかよ。10キロ走にエントリーしていたが、アホらしくなって当日ドタキャンした。だから今年は3キロにエントリー。痛みが年々ひどくなる腰にはそれでもキツい。マラソンは今年で最後。国立競技場を走って東京オリンピックにケリをつける。

5時33分に起き、7時過ぎに大久保駅から総武線に乗る。3年前は22時31発だった。あの夜の見物人とは違い爽やかな表情。東京体育館では卓球の試合があり、まだ8時前なのに行列ができていた。

国立競技場は隈研吾の設計、施工は大成建設。高さ47.4mと低く、スタジアムというより遊園地に近い雰囲気がある。

Hゲートから中に入るとアップ中のランナーたち。ガチ勢だ。こちトラ昨夜のロゼと白ワインが残っている。二日酔いではないが、走りたくない。

なんとカッコいい密閉と解放。素晴らしい。晴れてようが曇ってようが関係ない。こんなにシックで男性的な造りに振り切ったのか。陸上競技より格闘技イベントが似合う。

スタンド席に荷物を置いて競技場を散策。

外には野見宿禰。旧・国立競技場にあったものを移転。解体前に訪れて感激したが、相変わらず素晴らしいフォルム。当麻蹴速と日本初の角力(相撲)を取ったのは桜井市。帰省したとき相撲神社に行ってみよう。力をもらう。

国立競技場の天井は鉄骨と木材のハイブリッド。47都道府県から集めた木材が温かい。

9時のスタートに備え、8時20分から招集。ランナーは外のアスリートロードを潜ってトラックに入る。オリンピアンになった気分。ボランティアスタッフの方々が「頑張ってください」と笑顔をくれる。これは病みつき。

陸上トラックから見上げる新宿の空。ここで大歓声を浴びたら。やはり東京オリンピックのマラソンは東京で、有観客でやるべきだった。もう取り返しがつかないが、10年以内にもう一度TOKYOで五輪をやったらどうだろう。

人工物の塊なのに、森に居るような錯覚。その犯人は隈研吾が木漏れ日をイメージしたというスタンド。そしてキノコのような客席。まさにPERFECT DAYS 。次に東京五輪のドキュメンタリーとを撮るならヴィム・ヴェンダースだ。

ハーフマラソンにこれだけのボランティアスタッフ。新宿力、ここにあり。

9時スタート。まずは中学生から。一般の部がスタートする直前に、スタジアムがドーンと揺れた。演出にしては過剰だと思ったが、どうやら震度4の地震だったらしい。

最初は陸上トラックを一周。のんびり歩いていたら恐竜に抜かれた。どんなオッサンかと思いきや女性ランナー。

国立競技場を飛び出して神宮を一周。

少しペースに乗ってくると神宮球場の前で恐竜に追いついた。沿道の子供たちにも大人気。ナイス・ラン。今日のMVPだ。

神宮外苑を見る暇もなく通過。十二月に開催すれば黄葉の絶景が見られる。あと2ヶ月早くできないか。

あっという間に1.5キロ。ポカリスエットの給水。寒いのに本当にありがたい。

目の前は国立競技場。もう終わりか?と思いきや外周。そりゃそうだ。

首都高の下を抜け国立競技場へ。

スタジアムに凱旋する瞬間がたまらない。シドニーの高橋尚子になった気分。ハーフやフルなら、この感慨は何倍も大きい。

陸上トラックをピクニックラン。そしてゴール。

ようやく東京オリンピックと決着がついた。これで河瀬直美の映画も見れるし、もう宿題もない。2024年1月28日。東京オリンピックから俺は卒業した。

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