第22回: 展示会の使い道 (Mar.2019)

 エキスポやカンファレンス等、業界内外の人間が集まって交流し、最新情報を仕入れ、経験を共有する機会が世界各地・各業種で催されている。15年ほど前は東京オフィスに座ってひたすら二次情報を搔き集め、“2年前の最新統計に因ると。。。” などと各国事情を語っていたが、インド・新興国を主戦場とするようになってからはとんと、肌感覚を伴わない数字・情報の羅列に意義を見出せなくなった。殊に一国と括るには大きく多様に過ぎるインドでは、漠とした市場動向にはまるで意味がない。どのような機会が現実的か、どう素早く動けるかを探る方が結果が近い。

 見て来た限り、日本企業はこれらエキスポやカンファレンスの機会をまだまだうまく使う余地がある。毎年決まった機会に出展する大企業は恒例のお祭り気分、補助金を得て初出店する中小企業は物見遊山気分での訪問になりがちだが、もし本気で成果を目指すのであれば爾後1-2週間は現地に残る出張日程を組むようお勧めしている。会場で出会った相手と少なくとももう1回、できれば何回かの面談を重ねて具体的な協業機会に仕立ててしまうためだ。さもなければ、日本に戻った後にメールをやりとりし、数か月後に再会したところで、warming upにかかる手間は “初めまして” と大差ない。

 殊に日本からの参加企業は言語対応ばかりを気にして資料の翻訳や通訳の手配に奔走しがちだが、そこが問題ではない。むしろ、言葉の不自由さを口実にブースの奥に隠れたきり来訪者に声も掛けない、折角の会議で何も質問することがない、といった参加姿勢に課題がある。

 奥ゆかしい日本人故、国内外問わずそのような機会は苦手という向きもあろうが、海外に足を運ぶのであればもう少し積極性が欲しい。わざわざ重いサンプルを船便で運んだという建材メーカーは、会期中に売ることは諦めて日本へ送り返すことにした、という。現地の規格に適っていないことを指摘された為というが、ちょっと声をかければその程度の加工をできる同業者は会場内にいくらでもいたはずだ。医療機械メーカーはブースの机にポツンとサンプルを置き、“Not for Sale” という張り紙以外、用途や機能を含め製品説明が一切見当たらない。聞けばやはり、当地で売るには認可が必要だが、その手続きが間に合わなかった。もし欲しいと言われたら困るから、敢えて何もアピールしていない、と。わざわざそこまで出向いておいて、杞憂に過ぎないか。

 これらの機会では、まず広く業界関係者の反応を見る、というのが定石だが、どこまでその気があるのか疑わしいケースも少なくない。“あくまでプロモーション目的なので、営業活動は行わない” とか、“まだ当地で事業をすることを決めたわけではない” などと屁理屈を捏ねて商談を避けたがる傾向が見て取れるが、それでは何のために時間も旅費も割いて来たのか、と外国企業は首を傾げる。日本の技術・品質を取り込み、または商売のネタにしたいとアプローチされているのに、勿体ない。

 暫く前、インド・新興国市場の先駆者と報じられる大手メーカーから受けた相談も似たものだった。毎年、各国の主要な展示会に出展し、その都度、各地で数千枚を下らない名刺を集めるが、その後の活動につながっていない、という。ITによる効率化の相談かと思ったら、集めたまま倉庫に眠っているだけで見返してすらいない、とのこと。長年、欠かさず一等地に大きなブースを出展しているのは何のためか、ブランド認知には貢献したかもしれないが、随分と呑気で気前が良い話に聞こえる。

 これらの機会を最大活用するには、事前準備から一連の現地活動の核となり、業界事情にも精通したコンタクトポイントを持つのが有効だ。当社は、見込み客を探索して関係構築とプレ営業を済ませ、当日、出張者も含めた商談をリードして爾後に現地でのフォローアップを継続する “バーチャル駐在員” を提案している。海外エキスポ・カンファレンスの機会は、実際の営業・事業開発の場としてもっと活用されるべきだ。

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