見出し画像

行政との連携を考える - より良い地域医療の実現に向けて

こんにちは、やまとドクターサポートの原田です。毎週開催している「15分間の医師カンファ」では、現場での気づきや悩みをテーマに、やまとの全診療所の医師が様々な視点から解決策を考える場を設けています。今回は、行政との連携について話し合いました。

課題背景

在宅医療を地域に根付かせていくためには、行政との連携が不可欠です。しかし、実際にどのように働きかけていくべきか、具体的な方法についての知見は十分に共有されていません。各診療所の経験や工夫を共有することで、より効果的な連携の在り方を探ることにしました。

カンファレンスでの意見交換

A医師(問題提起):「地域への勉強会などは行われていると思いますが、行政に対する働きかけについて、どのようなことをされているのか伺いたいと思います。例えば、市長さんへの介護保険申請の遅延についての相談や、ヤングケアラーの問題提起、週1回の認知症相談など、様々な取り組みがあると思います。皆さんの経験や成功例を共有していただけますでしょうか。」

B医師:「私たちの地域では、朝食会という会があり、地域のステークホルダーが集まる場となっています。区長や市議会議員、県会議員、国会議員(不在時は秘書)など、様々な方が参加されます。そこで在宅医療から見える地域の問題や医療的な課題について話す機会を得ています。特に地域包括ケアについては、行政任せにせず、積極的に関わっていく必要性を感じています。

また最近、医療政策を考える会があり、災害時の医療活動と地域包括ケアについて意見交換を行いました。具体的な提言として、狭い道路での駐車問題や、予防医療の重要性なども取り上げていく予定です。」

C医師:「行政との関わりは医師会を通じた活動が基本になると感じています。単独の診療所として働きかけるのは難しく、医師会の理事という立場があることで、行政とのやり取りがスムーズになる面があります。また、行政側も一診療所ではなく、組織を通じた関係構築を求めているようです。

具体的な成功例として、医療的ケア児の災害時避難計画の策定があります。病床は不要でも、電源と場所が確保できれば良いという発想で、市の施設の活用を実現できました。このような取り組みが成功した背景には、行政内のキーパーソンの存在が大きかったと感じています。縦割り組織の中で、積極的に動いてくれる人を見つけることが重要です。」

D医師:「私たちの診療所では、地域包括支援センターとの意見交換が中心です。ルールを変えたり地域をより良くしていくには、市長など政治的な立場の方への働きかけが必要だと感じていますが、具体的なノウハウがなく、模索している状況です。」

E医師:「私は既存のコミュニティを大切にする方針で活動しています。例えば、介護保険担当や市民保険担当の方と協力してラジオ番組を制作したり、医師会の行事に積極的に参加したりしています。医療に直接関係ない場での交流が、思わぬ連携につながることもあります。

また、医療現場を知りたいと考えている市会議員の方も多くいらっしゃいます。診療が本業であることを前提に、このようなプラスアルファの活動を続けることが重要だと考えています。」

F医師:「行政との連携で重要なのは、その仕組みを理解することだと考えています。行政は縦割りで、難病対策、介護保険、虐待対策など、それぞれ担当者が異なります。各部署の担当者を把握し、関係を築いていくことで、スムーズな連携が可能になります。

また、行政は年単位で予算を組み、担当者も定期的に異動があります。そのタイミングを意識して挨拶に行くなど、継続的な関係維持が大切です。現在は災害対策に関心が高いので、そこを入り口に『私たちにできること』『一緒にできること』を提案するようにしています。」

今後の展望

カンファレンスでの議論を通じて、以下のような方向性が見えてきました:

  1. 連携の基本的な考え方

    • 医師会を通じた組織的なアプローチ

    • 既存のコミュニティの活用

    • 行政の仕組みへの理解

  2. 効果的な連携のポイント

    • キーパーソンの発掘

    • 定期的な関係維持の工夫

    • 共通の課題(災害対策など)からの連携

  3. 具体的な取り組み

    • 定期的な意見交換の場への参加

    • 医療的課題の具体的な提言

    • 予防医療の推進

おわりに

行政との連携は、単発的な働きかけではなく、継続的な関係構築が重要です。医師会活動や地域のコミュニティを通じた取り組みを基本としながら、それぞれの地域の特性に応じた連携の在り方を模索していきたいと思います。