ゲームを『楽しむため』に必要なチュートリアルって何ぞや
ゲームの「チュートリアル」や「説明」、「解説」などについてのゆるい記事です。
最近のゲームを始めると、クソみたいな「チュートリアル」とかいういらねえ説明が始まることが多くあります。なんだあれ。
そこらへんについての文句と、「本当に必要な説明って何ぞや」ってこと、さらにeSportsと呼ばれるものの「観戦」と「応援」なんかについても触れます。
0.Egoraptor氏の解説動画とLiT_Japan氏の翻訳
「チュートリアル」とかそのへんの話をするのに、この動画を外すわけにはいきません。
Egoraptor氏の「Sequelitis - Mega Man Classic vs. Mega Man X」という動画です。
動画は英語なのですが、LiT_Japan氏による日本語字幕つきの動画があります。
素晴らしい内容と翻訳なので、ぜひ見てください。私の記事を読む時間があるなら、この動画を見た方が良いです。
1.いらねえチュートリアル
最近の、特に「ソシャゲ」と呼ばれる種類のゲームをいくつかプレイしたことがある人なら体験しているでしょうが、ゲームを始めると「チュートリアル」と呼ばれる謎の行事が始まります。
タップしてね!ゲームが始まるよ!「キャラ」のところをタップしてね!キャラ一覧画面に移動するよ!「編成」のところをタップしてね!チーム編成画面に移動するよ!「戦闘」をタップしてね!自動で戦闘が始まるよ!「プレゼントボックス」をタップしてね!石がもらえたね!「確認」をタップしてね!「ガチャ」をタップしてね!ガチャが回せるよ!
もう言葉が見つからない。なんだよこれ。まあスキップ機能がついてたりもするんですが。
問題なのは、こんなクソみたいな誰に需要があるのかわからない説明はあるくせに、ゲームの「楽しさ」や「魅力」には全く関係ないというところなんですよ。説明すべきなのは、そこじゃない。
2.自分で勝手に楽しむ。「楽しめる」。
画像は「東方神霊廟 〜 Ten Desires.」です。ゲームスタートを選ぶと、すぐに「シューティングゲームを楽しむこと」ができます。操作方法がわからなければ、自分でマニュアルを読めば済む話です。
東方は公式もそこらへんがわかっています。東方神霊廟の「ゲームの進め方」は、
敵弾に当らないように避けて、敵を撃破するゲームです。
各ステージの最後にはボスが居ますので、それをやっつけると
ステージクリアです。
というシンプルなものです。シューティングゲームというのは、それを楽しむゲームです。ゲームの楽しみ方の説明として、必要十分でしょう。
あるいは、みんな大好き「Getting Over It with Bennett Foddy」。
説明なんて不要です。クセのある操作性で、障害物を超えながら登っていくゲームなんだと、すぐに体感できます。画像にある最初の木を越えようとする時点で、全てを把握できると言っても過言ではありません。
こういうゲームだと、ゲームの楽しさなんてのは説明されなくてもわかります。わからないことがあったら自分で調べます。それでいいと思うんですけど、どうなんでしょう。
3.足りねえチュートリアル1:音ゲー
2.で挙げたようなゲームで説明不要ってのは、「何度でもやり直しができるから」という理由があるからでもあります。シューティングゲームで操作方法がわからずにやられてしまったら、一回操作説明を読んで、またやり直せばいいです。
ただし、取り返しがつかないゲームだとそうはいきません。例えばゲームセンターでシューティングゲームをやるならば、操作方法がわからなければすぐに100円を失ってしまいます。
シューティングゲームの操作がわからないって人はあまりいないかもしれませんが、音ゲーが結構酷かったんです。最近のは多少マシなんでしょうか。
私がよくやってたbeatmania IIDXの筐体なんて十字キーや決定/キャンセルボタンがついてないんですよ。もう操作が意味不明。GuitarFreaksはもっと意味不明だった。
しかも曲が始まって、クッソ遅いスピードで譜面が降ってきます。ハイスピと呼ばれる、譜面の降ってくる速さの調節ってのはとーっても重要なんですが、それの説明もない。というか説明されても意味不明。
そしてわけわからんまま曲をプレイさせられて、クリアできなくて、100円失って終わり。
音ゲーってのは、「降ってきたノーツに対応するボタンや画面をタップする」ってゲーム性は基本的には共通してて、それこそが音ゲーの楽しみ方です。
そして、どの音ゲーでもそれを楽しくプレイするために必要なのは「ハイスピの設定」です。どんな音ゲーをプレイしても、この設定をまず探します(設定できない音ゲーももちろんありますが)。
「音ゲーを楽しむために必要なチュートリアル」って、それだと思うんですよ。特にゲーセンだと、100円失わないために超重要。
FPSなんかだと、「マウス感度」ってクソほど重要なことだと思うんですが、ゲーム内のチュートリアルであんまり説明されません。PCゲーをあんまりやってこなかった人は、そもそも「マウス感度」って概念を知らずにデフォルトのクソハイセンシでやってたりする人もいますね。
4.足りねえチュートリアル2:対戦ゲーム(麻雀)
APEXとかで例えたほうがいいんでしょうが、私が一番やってるであろう対戦ゲームが麻雀なので、それで説明させてください。
麻雀のルールは、ややこしく、めんどくさいです。覚えることも結構あります。それでも、覚えようとするならすぐ覚えられるんですよ。私もインターネットで適当にルールを調べて覚えました。
最近流行りのネット麻雀「雀魂 -じゃんたま-」では、ゲーム内にチュートリアルがあります。
こんなのとか、
こんなのとか。はっきり言って、大して役に立ちません。「よくわかる麻雀教室」で「手牌の対子と他家の打牌と刻子を組めたらポンして晒すことができます。ポンによって刻子を作ることができます。」て書かれても意味不明でしょうよ。
結局自分でアレコレ調べたり、教えてもらったりしながら実践したらルールなんてのはすぐ覚えられます。
そんなことはどうでも良くて、重要なのは、ここからです。
上記のような「チュートリアル」ってのは、「麻雀をするために必要なチュートリアル」です。
記事のタイトルにもあるように、「麻雀を楽しむために必要なチュートリアル」って何ぞや?ってのが重要なことだと思うんですよ。
麻雀をするだけなら、ルールを覚えればできます。しかし、麻雀を楽しもうとすると、もう少しいろいろなことを学んでいかなければなりません。
麻雀の面白さって、考えることにあるんですよ。もちろんそこに運の要素が絡むのも面白い要因なんですが、ただ「牌が揃ったー!やったー!」というだけのゲームではありません。初めはそれでもいいかもしれませんが、それはまだ麻雀の楽しさに触れられていません。
繰り返しますが、麻雀ってのは考えるのが面白いゲームです。では、「何をどう考えるのが楽しいのか」。これが伝えられていないんじゃないかと思うんです。
5.もう一歩先へ。
今でも多くの人口がいる麻雀っていうゲームですが、新規の人が増えそうな出来事が定期的にあります。
例えば、「咲-Saki-」のアニメ化。あるいは、新しいネット麻雀「雀魂 -じゃんたま-」のサービス開始。ちょっと前だと、人気の配信者やVtuberの人たちによる麻雀大会とか。
それらのきっかけから、麻雀を始めた方も多いと思います。役やルールなんかはすぐ覚えられて、上に画像で貼ったようなチュートリアルが何の意味もないこともわかるでしょう。
そして、なんとなく「和了れたら楽しい」ぐらいの楽しみ方はできていると思うんですが、もう一歩先へ、なかなか行けない人が多いと思います。
麻雀というゲームは、どういうことを考えて、どういう選択をするのか?そういう上達も楽しいゲームです。「そのための」チュートリアルというものが、残念ながらほとんどありません。
いわゆる「プロ」と呼ばれる人たちがいて、「麻雀の普及活動」のようなことをしている人もたくさんいます。多くの人が麻雀に触れています。
しかし麻雀は、そろそろいい加減に、もう一歩先へ進む段階です。じゃんたまも、あんなクソみたいなチュートリアルを載せてる場合じゃありません。
麻雀というゲームを楽しむために必要なことを、チュートリアルとして載せるべきではないでしょうか。
例えば、「牌効率」。基本中の基本で麻雀においては死ぬほど大切なんですが、麻雀のルールや役を知っているだけの人は、もしかしたら「牌効率」という概念すら知らないかもしれません。
あるいは、「5ブロック」というものを知っているとかなり和了れるようになります。このへんを知っているのと知らないのとでは、麻雀の面白さが全く違います。
守備に関して言えば、もう書ききれないぐらい膨大な知識や考え方があります。基本中の基本の「現物」や「スジ」ぐらいは知っている人も多いでしょうが、もっともっとたくさん考えることがあり、それが麻雀で一番楽しいところだと私は思っています。
ゲームを『楽しむための』チュートリアルって、そういうことだと、私は思うのですよ。
じゃんたまで言えば、そこらへんの牌効率とか守備の基礎を学んでいけば、金の間でそこそこ勝っていけるぐらいの実力にはなれると思います。雀傑から雀豪になれるんじゃないか?ぐらいになれば、十分に麻雀というものの楽しみ方は身についていると思います。
上記のような内容は、麻雀だけの話ではありません。ゲームだけではなく、スポーツでもです。
例えば野球なら、ルールは教えられたり調べたりすればわかります。しかし、野球というスポーツを楽しむためには、もうちょっといろんな能力が必要です。
ピッチャーがちゃんとストライクゾーンにボールを投げられたり、簡単なフライや内野ゴロなんかはちゃんとアウトにできてこそ、野球というもんです。
まったくストライクが入らず四球ばっかりだとか、内野ゴロが取れなくてバットに当たりさえすればヒットになるとか、そんなのだと野球は楽しくないと思うんですよ。
野球を楽しむためには、ある程度の能力が必要です。もちろんその程度ってのは難しい話になるんですが、より高度なレベルになるほど、楽しめるというのは間違いないでしょう。
6.eSportsの「観戦」や「応援」でも、だよ
本稿のタイトルは、「ゲームを『楽しむため』に必要なチュートリアルって何ぞや」です。
そして、今となっては「ゲームを楽しむ」というのは自分でプレイするというだけでなく、eSportsの観戦のような楽しみ方もあります。
以前に、「興行目的のeSportsはつまらないんだよ」という記事を書きました。ありがたいことに、多くの人に読んでいただけました。
長々と書いてるんですが、「わかりやすくするためにレベルを下げちゃ駄目だよ」「『簡単なことはわかりやすいから良い』ってのは間違いでしょ」ってだけの記事です。
ゲームを楽しむってのはeSportsの観戦も含まれます。では、eSportsの観戦を「楽しむため」に必要なチュートリアルって、何でしょうか。
競技のレベルを下げてわかりやすくするんじゃなくて、視聴者に適切なチュートリアルを与えて、多くの人が楽しみ方がわかるようになるのが理想だと思います。
多くの人の意見として、「わかりにくいゲームは興行に向かない」というものがあります。そこらへんに対する意見は私の過去の記事で書いてるんで割愛するんですが、重要なのは、ゲームが理解できていても、eSports観戦を「楽しめるか」どうかってのは、別の話だということです。
私が今まで観戦した中で最も面白かったeSportsは、「PUBG Nations Cup 2019」です。最近また見直しました。
私がeSportsの観戦がイマイチ盛り上がらないと思っている理由が、「応援するチームがない」ということです。これは別の機会に詳しく記事にするかもしれません。
このPUBGの世界大会は、日本代表という人たちを応援すればよいのです。わかりやすい。
また、PUBGというゲームの性質上、日本代表のチームが早々に敗退してしまうマッチも多くあります。しかし、それでも他のチームが国の戦いということで、応援チームでなくとも、見ていて楽しめます。あんまり上品な話ではないですが、アメリカとロシアが撃ち合ってて、隣でベトナムが潜んでるとか、楽しいに決まってる。中国とイギリスの戦いに「アヘン戦争」とかコメントするのはよくないよ!
この「観戦」ということにおいて、「楽しむため」のチュートリアルは、既に済んでいるのです。PUBGというゲームを知っていて、出場国についていろいろと知っている。日本人なので、日本チームを応援する。これで十分楽しめます。
逆に、こうした国際大会ではなく、国内のeSportsの観戦を「楽しむため」のチュートリアルは、まだまだ不十分です。
ハイレベルな選手たちによるプレイングを見ることは楽しいは楽しいんでうが、すぐに飽きます。プロの人が連続ヘッドショットを決めたぐらいではもう大して驚かなくなっています。
では、国内のプロリーグの観戦を楽しむためには、どういうチュートリアルが必要なのでしょう。
その一つが、やはり「チームを応援する」という要素だと思います。上記のような国際大会だと応援するチームはほぼ自動的に決まるし、日本チーム以外の戦いを見ても楽しめます。
先日、「PUBG MOBILE 企業対抗戦 2021」が行われました。これも、特別に応援するチームがないとしても、企業同士の戦いというのは見ていて楽しめます。市役所のチームに「税金グレネード」などとコメントするのは上品ではないですが、面白いです。
国内のeSportsチームの、よく知らないチームのよく知らない人たちが戦っていても、申し訳ないですがあまり楽しめません。その人たちを応援する理由がないからです。もちろん何らかのきっかけでチームのファンだという人も多くいるとは思いますが。
7.「スポーツ」では。
「スポーツ」の方だと、やはり「地方」が重要な応援しうる要素です。広島の人は広島カープのファンになる人が多いでしょうし、東北の人は楽天イーグルスのファンになるでしょう(私は横浜の人じゃないのに横浜ファンですが)。私の両親も野球なんか全く知らないのに、甲子園の県代表の試合は気にしてます。
あるいは、私は数年前はJリーグの試合の観戦によく行っていました。入場ゲートでチケットを渡すと、簡単なパンフレットのようなものがもらえます。これに、選手の特集や予想フォーメーションなんかが載ってました。
これを見ることで、「相手チームのこの選手は最近かなり点を取ってるから要注意だ」というようなポイントが、簡単にわかるようになっています。
観戦を「楽しむためのチュートリアル」が、ここで行われているわけです。
日本のプロ野球の場合だと、中継に選手のデータが映し出されます。数字を見て楽しむというのもプロ野球の楽しみ方の一つです。そのために必要な情報が画面に提供されます。また、Yahoo!のSportsnaviでは選手の情報や特徴などをすぐに知ることができます。これらも、「楽しむためのチュートリアル」といっていいでしょう。
ここらへんは、eSportsには足りてない要素だと思います。eSportsの試合をやっていても、それがどういう試合で、どういうチームが出場していて、どういう選手なのかってのが、ほとんど伝わりません。
プロの試合の配信コメントでも、「これ何試合目?」「勝ったら世界大会なの?」といったコメントが割と多く見られます。それを知るために公式サイトを見に行っても、何が何やら全然わからないことが多くあります。
いや、マジで公式サイトくらいはちゃんとしてくれ。Twitterでテキトーにつぶやいて終わりにしてんじゃねえ。
8.まとめ
・必要なのは、ゲームの「説明」ではなく、ゲームを「楽しむため」のチュートリアルなんだよ。
・ゲームをより「楽しむため」にはある程度の技量や知識が必要だったりもするので、その手助けになるようなものが「必要なチュートリアル」でしょうよ。
・ゲームの「プレイ」だけでなく、「観戦を楽しむ」ためのチュートリアルってのもあります。eSportsはそれに関しても頑張ってほしい。
ネガティブな後記:
この記事を書こうと思ったきっかけは、「PSO2 ニュージェネシス」です。PSO2は初期の頃はかなりやっていたので久しぶりにプレイしてみようと思ったら、チュートリアルで飽きてしまいました。なんやねんと。
あるいは、麻雀のところで書いている、「もう一歩先へ」というようなことは昔から思っていましたし、最近は別のゲームでも感じるようになっていました。
Overwatchをやるようになって、いわゆる「プロ」や「元プロ」と呼ばれる人達による解説動画を見たりもするんですが、はっきり言って何の意味もない説明動画がかなり多くあります。キャラの説明だけされても何の意味もない。
「興行目的のeSportsはつまらないんだよ」の記事でも書いたんですが、大衆受けするためにレベルを下げるのは間違いで、プレイヤーや視聴者もレベルが上がることが理想だと思うんですよ。
「間口を広めるために」とかで、簡単なところから始めるのはいいとは思います。しかし、それだけではそのゲームの「楽しさ」には不十分でしょう。「もう一歩踏み出せば、もっと楽しめるのに」と、ずっと思っています。必要なのはそのためのチュートリアルだと思うんですが。
需要がないと言われれば、それまでです。みんな課金してガチャするのが大好きなので、課金してガチャするやりかたを教えればみんな楽しめるのか。それが「ゲームを楽しむためのチュートリアル」なのかもしれない。
それで楽しいなら、それでいいと思う。
2021/07/05 山下
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