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なぜ"今"クラフトが共感を生むのか。未来の消費の形

■クラフトという言葉に多くの人が魅力を感じ、新しい市場を生んでいる 

お菓子と高級品に対してMinimalはクラフトチョコレートとして新しいカテゴリーに分類されます。素材であるカカオ豆の選定から、チョコレートになるまでの全工程を職人の手で丁寧に造っていくクラフトチョコレートというジャンルはこの10年の世界のチョコレートの新しい潮流として注目されています。

チョコレートに近い「食」分野の成長市場を調べてみると今のトレンドがはっきりとわかります。クラフトビール・スペシャルティコーヒー・ワインなどの国内の消費をみてよう。

クラフトビールの醸造所は2011年~2014年の4年間で1.5倍に増えたそうです。たしかに都内のお店ではクラフトビールを置いていることを多く見かけます。

またコーヒーの消費量は喫茶店の数が減少しているにも関わらず伸びている。これはスペシャルティコーヒーの消費量が伸びているからと推測される。一説では日本の年間コーヒー豆の輸入量の約10%をスペシャルティコーヒー豆が越えたという話もある。

スペシャルティコーヒーマニアとしては確かにどの駅に行っても調べるとスペシャルティコーヒーが飲めるという環境が都内はこの数年で一気に整った気がする。

そして最後はワインの消費量。ワインは栄枯盛衰を繰り返しながら確実に消費量を増やしている。そして2010年頃から消費量が伸びており、その一役を国産ワインが買っているようだ。たしかにこの1年2年で飲んだ国産ワインのクオリティは驚くほど高く、ここにきて存在感を高めていると肌感覚でも実感している。

そう、チョコレートとそれに近い「食」分野の成長市場は、クラフトビール・スペシャルティコーヒー・国産ワインなどから見えるのは、

造り手の顔が見える「クラフト」や、素材の良さを表す「スペシャルティ」「グルメ」と言ったキーワードで、洗練された「デザイン」のプロダクトやサービスをもつブランドが市場を牽引しています。


それぞれコモディティ市場や海外輸入ものの高級ブランドがある中に確実に造り手の顔が見える国内の「クラフト」感のある分野が第3極としてできてきている事がわかります。


■お客さんは何に共感したいのか

ではなぜ、今この”クラフト”というキーワードが日本の中ではとても注目をされているのでしょうか。クラフトで造るモノは、同業界の同じカテゴリー平均的な価格に比べると高価なモノが多い傾向があります。それでもそのクラフトがなぜ買われ、共感を生むのかを考え、理解する経験がありました。

Minimaでは週3回ペースでお客さんと一緒にイベント開催しています。

・豆からチョコレートを造るなど一緒に手を動かすWorkshop
・チョコの食べ比べやペアリングを楽しむTasting Table
・異業種のクラフトブランド組んで3か月かけて実験的な取り組みをしながらクラフト深めるMinimal’s Table

その中で昨年10月~12月に行ったスペシャルティコーヒーの雄である丸山珈琲さんと行ったMinimal’s Tableのお話です。

10月~12月の3ヶ月間、丸山珈琲さんと組ませていただき、お客さんを巻き込んで、商品開発をテーマに行っていました。実は2年前にコーヒーとベストマッチのチョコレートを開発するというペアリングセットを商品化しているので、今回はもう少し踏み込んだ、よりマニアックな商品開発をしようということになりました。

Minimal’s Tableの醍醐味は、始まった当初は最後どうなるか全く白紙である事です。

これが、本当に白紙なのです。だから運営側はとても楽しみながらも、いつもドキドキ。

お客様の反応や感想を見ながらその場や終わった後に次のテーマを決めていくという完全LIVEのイベントです。

今回、最終的に決まったテーマは「食べるコーヒー」チョコレート。


これは10月開催の1回目と11月開催の2回目のMinimal’s Tableを経て決まっていきました。

そして、第3回目でチョコレートにコーヒー豆を混ぜ合わした試作品を用意してお客さんの意見を聞きながら最終調整をかけていきます。まさにお客様とコーヒーのプロと三位一体で造る“食べるコーヒー”チョコレートプロジェクトです。

※詳しい内容なこちらから


そして、今年の1月25日に無事発売されて、発売から数日の現在時点でほんとんで売り切れてしまいました。

このMinimal’s Tableに参加したお客さんからはありがたいことに大変高い満足のお声を頂いております。

1回の参加費が5,000円なのですが、3回連続で出て頂けるお客さんが多くいらっしゃります。

そして、1月25日発売直後からMinimal’s Tableの参加のお客様が多く店頭に買いに来て頂きました。

おもろいことに多くの皆さんお友達やお知り合いを連れてきてくださります。

そして嬉しそうにスタッフよりも詳細に詳しく「食べるコーヒー」チョコを説明しており、その友人の方たちも買っていっていただるんです。

もちろんご自身も「食べるコーヒー」チョコを嬉しそうに買っていかれます。

店頭でのあるお客さんの会話がとても印象的でした。


「山下さん、このチョコレートが1350円(税抜)って価格安くないですか?あれだけ苦労して繊細に味わいを作ったんだからもっと高くしていいですよ!2,000円とか(笑)プロセスの思い入れがわかるから本当にこのチョコレート価値があるし、誰かと会うとき持っていって、自分も関わったと自慢します(笑)」


まさか値段が高いと言われることがあっても、安いとクレームを頂くとは(笑)

これは本当に嬉しいお言葉でした。

実はこの経験から学ぶことは、

まずお客さんが半分以上ブランド側の立場で
新規顧客を連れてきて頂けており、

その方にセールストークをしてくださり

さらには自分も買って頂ける。

そして、買ったものを更に誰かに伝えて頂ける

こんなありがたいことがあっていいのでしょうか。
しかも、お客さんはお金を払ってMinimal’s Tableに参加頂いているのです。


■体験する事の本質は自分事化

この現象は買い手としてのお客さんと売り手としてのブランドという境界線が曖昧になっているという事だと思います。

経験経済とか、体験消費の価値が上がっているとよく言われますが、この本質は自分事化であると思っています。

体験する事が大事ではなく、体験を通して体験したものが自分のモノになる事が大事なのです。

つまりはMinimal’s Tableで、
開発プロセスを体験して自分の意見を伝え、参加し、その場で議論となったり、共有されるというプロセスを通して買い手として立場から開発者側、売り手側にどんどん近づいてきて、いつの間にか「自分も開発関わった商品」という認識になっていきます。

そうなると、無意識のうちに

ブランド≒自分という認識

になっていくのだと思います。

つまり、お客さんと一緒に楽しむ事でブランドと顧客という関係からもう半歩踏み込んで一緒にブランドを創っていく仲間であったり、新しいことを仕掛ける共犯関係になっているのです。


■高級ブランドの上顧客とクラフトブランドの違い

なぜクラフトが共感を生むかと言うと、まず一番想いを持っている造り手との距離が近いと言う事があります。

造り手の顔が見えて、距離が近いという事はその熱い想いや夢、志に触れる事ができます。

そして、距離が近いという事はお客さん自身の想いもその造り手に伝えることができるのです。

圧倒的にインタラクティブである事が自分事を加速します。

今サロンモデルが流行っているのはまさにこの現状なのだと思います。

クラフトはお客さんとブランドの境界を曖昧にして、共犯関係になりやすいのです。

ロイヤルカスタマーと言う意味では高級ブランドの上顧客もある意味でとても近い距離で対応されてますが、これはあくまで顧客とブランドと言うサービスを受ける側とする側の境界線がきっちりひかれています。

そう、高級ブランドは完璧な接客が求められるのです。お客さんの期待は高く、その期待を常に超えていく事が求められます。

一方でクラフトはもちろん、そういう側面もありますが、もっと人間臭い。言ってみればブランドのキャラクターや関わっている人たちの顔が見えるので、人間として不完全さや余白がいい意味で存在します。そこにお客さんが入って頂ける余地がある事がより自分事化を進めるのだと思います。

そのブランドや造り手のキャラクターや人間味が見えるので、身近に感じる気軽さをクラフトという言葉は内包していると思います。


■プロダクトに透ける美意識

加えて、クラフトが共感を生む理由として、

プロダクトの主張がわかりやすいという事もあると思います。

例えば先ほどの「食べるコーヒー」チョコは市販のコーヒ豆をチョコレートコーティングしたものとはあきらかに見た目も味わいも違います。
市販のモノはコーヒー側には苦味をチョコレート側には甘味をもとめて設計されることが多いですが、
今回はコーヒー側には果実味やスパイス感と言うフレーバーを、チョコレート側にはコーヒー豆にまけないカカオ濃度のボディー感とコーヒーと共通するスパイス感を求めて設計されており、一般にイメージするモノと明らかに違う事がわかりやすく出来上がっています。

ではなぜクラフトだとこうなるかと言うと、

そこに明確に造り手がいてその人の嗜好性や個性が確実にプロダクトに反映されるからです。

※美意識の塊。大好きな日本酒「喜久醉」

工業製品はある意味でマスに対して皆が好きなモノを作るコトで収益を上げてきました。カドを削って万人に受けれるまーるいモノを作ることに重きが置かれていました。

しかし、クラフトは思いっきり造り手やブランドの個性がでており、一言で言うと「わかりやすく尖っている」事が多いと思います。

しかもその尖りにお客さんの意見も入っていく感覚があればそれはブランド側や造り手のモノだけでなくなっていきます。

更には、クラフトはある意味で効率を度外視してプラダクトにこだわる事がどこまでもできます。だからこそ個性がわかりやすいし、奥行きもストーリーもある

お客さんはそのこだわりやストーリー、そして想いを知る事で、共感します

そうなると、そもそも同じカテゴリーのコモディティ商品と比べることがなくなるのです。

だから相対的に高い価格だとしてもその人自身が共感すればその価値になるのです。


■情報の非対称性が無くなる時代は個人が好きなクラフトを見つける事できる

もちろん、昔からクラフトというモノは存在していましたが、なぜ「今」共感を集め、多くのカテゴリーでクラフトが成長しているのか

それは情報の非対称性が無くなってきている時代だからだと思います。

誰もが情報にアクセスできる時代は、絶対的な価値観ではなく、個々人の相対的な価値観で物事の良し悪しや高低が決まると思います。

情報に簡単に触れる事ができるので、クラフトのある意味で変質的で万人受けしない部分に共感する人が見つかるのです。

皆がいいからいいという時代は終わり、自分にとっていいモノは何かを考えるに足る情報を簡単に取れることが21世紀の消費の在り方を大きく変えると思います。


■情報の非対称が無くなる時代は残酷

情報の非対称性がなくなる時代にモノづくりをしているメーカーとしては、まずは自分たちが良いと思う価値観を明確にして、変質的ともいえるこだわりと哲学をもってプロダクトを創ることが重要だと思います。

造り手と距離が近く、インタラクティブな事が自分事化を進めると書きましたが、

プロダクトに初めて触れた時にそこからお客さんの何か琴線に引っかかるものがなければ、そもそも興味が生まれないのです。

情報の非対称性はある意味でこだわりを持った小さなクラフトブランドに光が当たるというチャンスをくれますが、一方で残酷です。

情報が氾濫するので、お客さんは多くの情報に触れます。数多の有る情報から琴線に触れる事ができなければ埋もれていきます。

しかも情報が多いのでだいたい初めて触れた時に印象に残らなければその他大勢として忘れ去れてしまいます。

だからこそモノ言わないモノにモノを言わせるほどのプロダクトを造ることが重要で、それを行っているブランドがクラフトとして生き残り、今共感を集めているのだと思います。

そうです、クラフトが本当に共感を得るのはやはりプロダクトが素晴らしいからだと思います。

そして、プロダクトから持った興味でお客さんが情報を深掘ってみた時に、そこに造り手がおり、ブランドとしての奥行きがあるとそれは共感になっていきます。

何でもかんでもクラフトと言えばよいわけではなく、偽物は淘汰されていきます。

メディアで取り上げれて、連日すごい行列だったお店が、一年後に跡形もなくなっているという事が良く起こります。

情報の非対称性が無くなっていく時代において本当の意味でモノづくりにアイデンティティをもつクラフトブランドがお客さんの共感を集めていくのだと思います。


■時に狂ったぐらいのモノづくりを追究する

Minimalはカカオ豆という素材の香りや個性豊かさに括っているブランドです。

美味しいチョコレートは大前提で、一口食べる事でカカオ豆の個性が見える、素材の持つ土地の背景や情景までが浮かぶ。

そんなチョコレートを世の中に提示できたら最高です。そして、それは私たちだけではできなくて、カカオ豆の生産者、お客さんと一緒に進化していきたいと切に願います。

まだまだ先は遠いですが、クラフトチョコレートのブランドとして多くの皆さんに共感頂けるように、そのビジョンをぶらすことなく、思いっきり狂ったモノづくりに邁進したいと思います。

※Minimalのバレンタイン商品

Minimal のバレンタイン商品はこちらから


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今年は自分たちのモノづくりを映像にしました。ぜひこちらご覧ください。


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