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ファッション小売のデジタルトランスフォーメーションの本質は販売スタッフのスター化だ。

映画「マイノリティリポート」で、主人公のトムクルーズがショッピングモール内を逃げるシーンが大好きだ。逃げる先々で、網膜から個人情報を判断されパーソナライズされた広告が目の前にポップアップしてくる。そんなモールは煩くて絶対に行きたく無いなと思いつつも、未来はそこなんだろうかと空想を重ねる事ができる。

デジタルトランスフォーメーションが叫ばれて久しい。DTなのかDXなのかははっきりして欲しいが、DXとする。ファッション小売のDXに関して今日のフリーディスカッションの中で本質に迫った気がするので備忘的に書いておく。

ファッション小売業として、DXの主軸は小売分野だ。PLMも需要予測も重要だがやっぱり小売現場に刺さり込まなければファッション小売のDXとは言えない。

ではその本質を一言で言うと「思いっきりデジタルツールでパワーアップされた販売スタッフが、リアルとバーチャルの両方の世界で個客と繋がり、スターになっていく状態」だろうと思う。

お客様は今後益々リアルとバーチャルの世界を行き来する。5Gによって顕著になるだろう。その世界では販売スタッフもお客様と一緒にリアルとバーチャル両方で繋がるべきだ。(今でもインスタで相互フォローをしているスタッフとお客様はリアルとバーチャルで繋がっている)

今後スタッフはデジタルツールでパワーアップされなければお客様の変化についていけない。個人でインスタ頑張ってるレベルでは到底太刀打ちできない。個客カルテを用いお客様が提供可能としている個人情報は即座に分析して、ありとあらゆる在庫を瞬時に把握し、タイムロス無く魅力的なコーディネート提案に繋げなければお客様を失う。お客様の時間はより貴重になる。きっと接客はエンターテインメントを体験する時間と比較されるようになる、つまり接客は上質なエンターテインメントにならなければならない。

昨今のECと言う概念は消えるだろう。お客様の都合により、決済手段や配送手段の選択肢の一つとして、ネット決済や宅配が選択されるようになる。いつどこでどうやって購買しようが、お客様以外の誰かがお客様を強制できる理由は何一つなくなる。希望する商品が手許に届けば、店舗なのかECなのかは、お客様とってはどうでもいいことだ。

一方スタッフはリアルとバーチャル両方の世界でスターになり得るチャンスを得る。スターになったスタッフの時間は貴重だ。スターになったスタッフには熱狂的なファンが生まれる。時間あたりの購入額がスタッフの接客を受けられるかの一つの尺度になったりするだろう。

きっと僕らの売り物にはバーチャルの服も加わってくる。商品がバーチャルになった時、スタッフの個の強さは比類なき強さに昇華する。バーチャルでの洋服生産はリアルよりもプロセスが少ない。スターなスタッフが、お客様にオンリーワンの商品を作れたりする、そんな商品に値引きは無縁だ。そしてお客様もバーチャルな世界ではリアルよりも自由な服装を好む気がする、クリエーションを受け入れやすくなる。恐らく近い将来クリエーションはバーチャルからリアルに広がるようになるだろう。

そんな時代にリアルの店はどんな姿になっているべきなのか。劇場型なのか、全室個室なのか、リアルの場所はパーソナライズできるのか。立地の重要性がどこまで続くのか。どこの店なのかよりも、誰から買ったかが重要になるかもしれない。そこではきっと、お客様とスタッフの間に相互のリスペクトが産まれやすくなるだろう。お互い一人の人間として、フェアに時間を供給し享受する。

つまり、ファッション小売のDXは、販売スタッフの無限の可能性を引き出すデジタルツールの導入と言う形で行われるべきだ。5年くらい悩んできた事の本質が見えた気がする。

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