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#大熊長次郎
私の好きな短歌、その37
静にぞねむらせたまへ人間の命死にゆく時のをはりに
大熊長次郎、『大熊長次郎全歌集』より。(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p239)
作者は結核にかかり、自殺した。その時遺書と共に残された歌のうちの一首。この時の一連の歌は、辞世の歌として穏やかながらも迫力を持つ。その中でもこの一首がおそらく最後の一首。我が生命ではなく「人間の命」とし、結句を「時のおはりに」としたことで、普遍的な意味を
私の好きな短歌、その36
受話器に友のいふこゑはうたがひなし三ヶ島葭子の命おはりぬ
大熊長次郎、『真木』より。(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p236)
端的に事実を述べた歌で心に響く。初句と二句の破調が気の動転を表しているようだ。「いふこゑ」も、「声」だけでいいものを「言う声」としてありやはり狼狽を感じる。下二句の単純さ、「命おはりぬ」と言い切ったことで無常感が醸し出された。ああついに、という無念が、単純な