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#松倉米吉
私の好きな短歌、その32
かなしもよともに死なめと言ひてよる妹にかそかに白粉にほふ
松倉米吉、『松倉米吉歌集』より。(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p193)
作者は結核であった。一首の「妹」は恋人。共に暮らしていたわけではないが、ときおり訪ねて来ていたようだ。病気をうつしたくはないが会いたい、会えて嬉しいがうつしたくはない、という作者の揺れる気持ちが初句切れの「かなしもよ」に込められている。目の前に、ともに
私の好きな短歌、その31
吾の身の吾がものならぬはかな日の一年とはなりぬ日暮待ちし日の
松倉米吉、『松倉米吉歌集』より。(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p189)
当時作者は金属メッキ工場の職工である。すなわち一首は、自分の身が自分のものではないかのように、仕事をこなすだけの毎日が積み重なり、そのまま何も変わらずに一年が過ぎた、ということ。「はかな日」が結句で「日暮れ待ちし日の」と言葉を変えてより具体的になっ