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テオ・ヤンセン展から、キャリアについて考える

山梨県立美術館で開催中の「テオ・ヤンセン展」に行ってきました。「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」とも呼ばれるテオ・ヤンセン。物理学から画家へと転向した異例の経歴を経ています。就職活動の中で、自分のこれからのキャリアについて考えており、図らずとも自分にとってなかなかタイムリーな展示でした。

物理学を専攻しながら絵画の制作を行なっていたテオ・ヤンセン。風景画、そしてプログラミングを用いた絵画を経て、今回の展示である「ストランドビースト」にたどり着いています。なぜ、絵画から「ストランドビースト」という立体、しかもプラスチックを用いた新たな生命体の制作に至ったのか。

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転機となったのは、インスタレーション(*特定の場所にオブジェなどを置いて、場所や空間全体を作品として体験させる現代美術の表現手法の一つ)ともいえる、「空飛ぶUFO」を制作したこと。この経験から、『現実と想像の境界を曖昧にする』ということを求めるようになったそうです。

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砂浜で、風の力で動くストランドビーストは本当に生きているかのように錯覚させられます。これは、絵画ではできないことです。2次元の絵画ではなく、現実に存在する立体物「ストランドビースト」であるからこそ、私たちは「本当に生きているかのように」感じることができます。そして、それを可能にしたのがテオ・ヤンセンが物理学で得た知識と技術。

アート=ひらめき、才能

だと思われがちですが(個人的な意見です)アイディアがあっても、それを形にする技術や知識がないと、作品は形になりません。何度も何度も考え、手を動かし、アウトプットとインプットを繰り返し、ストランドビーストが生まれ、進化を繰り返して……

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わたしたちが「本当に生きている」とテオ・ヤンセンが求めた通り現実と想像の境界が曖昧になっているように感じるのは、物理学を専攻したというキャリアがあったからだと、展示全体を通して感じました。

「芸術」という一つの分野を極めること、ではなく物理学を学んだことが彼のアートに還元されています。

キャリアについて考える中で、「好きなことを仕事にする」「大学で学んだことを活かす」「何か一つのことを極める」という仕事が自分にとって幸せなのか・向いているのかと迷っています。ただ、直接好きなことや学んだことを仕事としなくても、どこかで還元されることがあるのかもしれないし、正直、それは実際に仕事をしてみないとわからないな、などと美術館の展示を通して考えていました。
本当は純粋に展示を楽しむつもりだったのに……(笑)

新たな生命体である、ストランドビースト。

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実際に動いている様子を間近でみて、わたしは少し「怖いな」と感じました。未知の生命体というか宇宙人のようで。見慣れてくると愛着が湧いてくるような気もしましたが……どう感じるかは人それぞれだと思うので、ぜひ、実際にその目でストランドビーストの命を感じてみてください。

ちなみに、今回の展示では制作の途中でたまたま生まれたという「隠れハート」を見ることができます。他の展示会だと人が多かったり、展示場所が高かったりなどの理由で見ることができないため、実際に見ることができるのはかなりレア!だそうです。かなりわかりにくい場所にありますが(わたしも教えてもらうまで気づきませんでした)ぜひ、探してみてください!

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文・写真:鈴木愛美(山梨県立大学国際政策学部4年)

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