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若者のキャリア展望等とロールモデルとなる先輩社員の有無(令和元年版「労働経済の分析」より)

若者のキャリア展望等とロールモデルとなる先輩社員の有無の関係について紹介します。

以下、特記するものを除き、令和元年版労働経済の分析からの引用またはキャプチャーです。

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●我が国において、ロールモデルとなる先輩社員がいる39歳以下の若者は、必ずしも多い状況にはない。働く方自身のロールモデルとなる先輩社員をみつけるためには、その前提として、働く方自身の勤め先企業におけるキャリア展望が明確になっていることが肝要であることが示唆された

続いて、39歳以下の若者に着目して、我が国におけるロールモデルとなる先輩社員の有無をめぐる状況や課題を整理してみたい。ロールモデルとなる先輩社員がいることは、キャリア展望の明確化が図られるとともに、自身に類似するキャリアをもった先輩社員の仕事における成功を通じて、自身の自己効力感(仕事への自信)を間接的に高める効果(代理学習)も期待され、ひいては、ワーク・エンゲイジメントを向上させる可能性がある。他方、詳しくは後述するが、我が国において、ロールモデルとなる先輩社員がいる39歳以下の若者は、必ずしも多い状況にはない。そのため、我が国におけるロールモデルとなる先輩社員の有無をめぐる状況や課題を明らかにしていくことが有用だと考えられる。
まず、第2-(3)-26図の(1)から(5)により、我が国におけるロールモデルとなる先輩社員の有無をめぐる状況を整理していきたい。

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同図の(1)によると、我が国において、「ロールモデルとなる先輩社員がいるといった所感(注)をもっている者」は27.9%となっている一方で、「同所感をもっていない者」は72.1%となっており、後者が大勢を占める状況にあることが分かる。
(注) 職場にロールモデルとなる先輩社員がいる(いない)は、調査時点の主な仕事に対する認識として、「職場にロールモデルとなる先輩社員がいる」と質問した項目に対して、「いつも感じる」「よく感じる」(「時々感じる」「めったに感じない」「全く感じない」)と回答した者としている。

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次に、同図の(2)により、ロールモデルとなる先輩社員がいるといった所感をもっている者の割合を性別で比較すると、「男性」が28.7%である一方で、「女性」が27.1%となっており、男性と比較し、女性の方がロールモデルとなる先輩社員をみつけにくい状況にある可能性がうかがえる。

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さらに、同図の(3)により、ロールモデルとなる先輩社員がいるといった所感をもっている者の割合を性別及び年齢別で比較すると、「15~24歳」では、男性が52.1%、女性が44.9%となっており、半数前後はロールモデルとなる先輩社員がいるといった所感をもっている状況にあることが分かる。他方、年齢階級の高まりに伴って、男女ともに、同割合は低下していく傾向にあることがうかがえる。さらに、男性の同割合から女性の同割合を差し引いたギャップを年齢別に比較すると、「15~24歳」が7.2%ポイントと最も高く、次いで、「25~29歳」が6.9%ポイント、「30~34歳」が6.9%ポイント、「35~39歳」が1.8%ポイントとなっていることが分かる。つまり、男性と比較し、女性の方がロールモデルとなる先輩社員をみつけにくい状況は、特に「15~24歳」「25~29歳」において顕著にみられる特徴であり、「30~34歳」「35~39歳」では、相対的にみれば、男女共通の課題になっていることが示唆される。この解釈としては、女性がロールモデルとなる先輩社員を探すに当たって、「15~24歳」「25~29歳」では、同性の先輩社員を探す傾向にある一方で、管理職になる者も増加してくる「30~34歳」「35~39歳」では、趨勢的に上昇傾向にはあるものの、女性の管理職者比率の水準は必ずしも高くない状況にある中、同性の先輩社員に限らず(むしろ限ることができず)、男性も含めた先輩社員がロールモデルの候補に含まれるため、同年齢階級における男女間のギャップが相対的に低い可能性が考えられる。

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続いて、同図の(4)により、ロールモデルとなる先輩社員がいるといった所感をもっている者の割合を採用形態別で比較すると、「現在の勤め先企業に新規採用された者」では、同割合が30.8%である一方で、「現在の勤め先企業に中途採用された者」では、同割合が26.3%となっており、後者が低いことが分かる。中途採用者において同割合が低い要因としては、中途で入った故に勤め先企業におけるキャリア展望が描きにくい状態になっており、ロールモデルとなる先輩社員をみつけにくい可能性に加えて、中途採用者の仕事遂行能力が高く、そもそもロールモデルを要していない可能性も考えられるだろう。そこで、15~39歳以下を対象とし、新規採用者と中途採用者に分けた上で、勤め先企業におけるキャリア展望の明確性と自己効力感(仕事への自信)をスコア化した値(注)について、性別で比較すると、男性では、新規採用者の勤め先企業におけるキャリア展望の明確性が2.25、自己効力感(仕事への自信)が2.70となっている一方で、中途採用者の勤め先企業におけるキャリア展望の明確性が2.41、自己効力感(仕事への自信)が2.98となっている。また、女性では、新規採用者の勤め先企業におけるキャリア展望の明確性が2.00、自己効力感(仕事への自信)が2.53となっている一方で、中途採用者の勤め先企業におけるキャリア展望の明確性が1.94、自己効力感(仕事への自信)が2.62となっている。
(注)質問項目に対して、「いつも感じる(=6点)」「よく感じる(=4.5点)」「時々感じる(=3点)」「めったに感じない(=1.5点)」「全く感じない(=0点)」とスコアを付した上で、平均値を算出している。

特に、女性の勤め先企業におけるキャリア展望の明確性をスコア化した値に着目すると、15~24歳と35~39歳では、新規採用者と比較し、中途採用者が低い値を示している(注)。
(注) 女性の中途採用者の勤め先企業におけるキャリア展望の明確性をスコア化した値に着目すると、15~24歳が2.11、25~29歳が2.03、30~34歳が1.82、35~39歳が1.95となっている。一方、新規採用者の同値は、15~24歳が2.32、25~29歳が1.87、30~34歳が1.69、35~39歳が2.11となっている。

すなわち、男女ともに、新規採用者と比較し、中途採用者では、自己効力感(仕事への自信)のスコアが高い状況にあり、相対的にみれば、仕事遂行能力の高さから、ロールモデルを要していない側面を持ち合わせている可能性も示唆された。もちろん、両者ともに、ロールモデルとなる先輩社員がいるといった所感をもっている者の割合は、必ずしも高い状況にはないことから、ロールモデルの在り方を改めて再考してみることが重要だと考えられる
が、その際には、新規採用者と中途採用者によって、ロールモデルとなる先輩社員の有無に対するニーズが異なる可能性があることに留意が必要であろう。また、特に、女性の15~24歳と35~39歳では、勤め先企業におけるキャリア展望の明確性のスコアが低い状況にあり、中途で入った故に勤め先企業におけるキャリア展望が描きにくい状態になっており、ロールモデルとなる先輩社員をみつけにくい状況にある可能性も示唆され、この点についても併せて留意が必要である。

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さらに、同図の(5)により、ロールモデルとなる先輩社員がいるといった所感をもっている者の割合を職種間で比較すると、「教育関係専門職」が46.4%と最も高くなっており、次いで、「建設・採掘職」が34.5%、「営業職」が33.6%、「医療・福祉関係専門職」が31.5%、「接客・サービス職」が31.0%、「技術系専門職(研究開発、設計、SE等)」が29.6%となっている一方で、管理職(リーダー職を含む)が21.7%と最も低くなっており、「事務系専門職(市場調査、財務、貿易・翻訳等)」や「事務職(一般事務等)」といった事務職関連の職種において低いことが分かる。すなわち、職種間で比較すると、仕事を遂行するために求められる能力や専門的な技術・技能について、比較的にイメージをもちやすく、後輩社員が先輩社員の仕事
ぶりを目にする機会も多いことが想像される職種では、ロールモデルとなる先輩社員がいるといった所感をもっている者の割合が、相対的に高い可能性が示唆される。
続いて、ここからは、ロールモデルとなる先輩社員がいることによって期待される効果について確認し、ロールモデルとなる先輩社員をみつける前提として、勤め先企業におけるキャリア展望の明確化が図られていることの重要性について言及した上で、ロールモデルとなる先輩社員の有無に関する労使間の認識をめぐる状況を示していく。

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まず、同図の(6)では、調査時点から1年前のロールモデルとなる先輩社員の有無と、調査時点の自己効力感や勤め先企業におけるキャリア展望の明確性をスコア化した値、ワーク・エンゲイジメント・スコアとの関係性を整理しており、ロールモデルとなる先輩社員がいることによって、働く方のいずれの所感も向上している可能性が示唆される。

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次に、同図の(7)では、調査時点から1年前の勤め先企業におけるキャリア展望の明確性をスコア化した値と、調査時点のロールモデルとなる先輩社員がいることをスコア化した値(注)との関係性を整理している。
(注)質問項目に対して、「いつも感じる(=6点)」「よく感じる(=4.5点)」「時々感じる(=3点)」「めったに感じない(=1.5点)」「全く感じない(=0点)」とスコアを付した上で、平均値を算出している。

同図の(7)によると、両者には、正の相関があることがうかがえる。比較時点の工夫はしているものの、上記のような逆の因果関係も想定されていることに留意が必要であるが、勤め先企業におけるキャリア展望の明確化を図ることは、ロールモデルとなる先輩社員がいる社員を増加させる可能性が示唆される。すなわち、働く方自身のロールモデルとなる先輩社員をみつけるためには、その前提として、働く方自身の勤め先企業におけるキャリア展望が明確になっていることが肝要であることが示唆される。

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最後に、同図の(8)では、ロールモデルとなる先輩社員の有無に関する労使間の認識ギャップを示しており、既出ではあるが、働く方でロールモデルとなる先輩社員がいるといった所感をもっている者の割合が27.9%である一方で、自社の職場に若手社員のロールモデルになる先輩社員がいると認識している企業は48.6%であることが分かる。すなわち、企業が想定している以上に、働く方はロールモデルとなる先輩社員がいるといった所感を持つことができていない状況にあることが示唆される。

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以上のように、我が国におけるロールモデルとなる先輩社員の有無をめぐる状況について整理した上で、ロールモデルとなる先輩社員がいることによって、自己効力感(仕事への自信)、勤め先企業におけるキャリア展望の明確性、ワーク・エンゲイジメント・スコアも向上している可能性が示唆された。その上で、働く方自身のロールモデルとなる先輩社員をみつけるためには、その前提として、働く方自身の勤め先企業におけるキャリア展望が明確になっていることが肝要であることも示唆された。つまり、JD-Rモデルに関する説明の中で、「獲得のスパイラル」について言及したが、働く方の勤め先企業におけるキャリア展望の明確化とロールモデルとなる先輩社員をみつけることが、中長期的な観点でみて、ポジティブな循環を実現していくために重要と考えられる。こうした好循環の実現に向けては、企業が想定している以上に、働く方はロールモデルとなる先輩社員がいるといった所感を持つことができていない状況にある可能性に留意しながら、ロールモデルの在り方について、労使でしっかりと話し合っていくことが重要である。
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厚生労働省の資料ではロールモデルを次のように定義しています。

◆ ロールモデルとは
 ロールモデルは、社員各自がモデルにしたい人材のことであり、性別や職位など特定の人ではありません。
また、ロールモデルは必ずしも一人とは限らず、例えば、発想の豊かな人、交渉能力の高い人、事務処理や緻密な仕事に長けている人など、自分が不足している知識や身に付けたい態度・行動に応じて、複数の人をロールモデルとすることもできます。
 ロールモデルとして活躍する人材には、後進をサポートしていく役割も期待されます。例えば、今まで女性がいなかった職位や職種に初めて登用・配属された場合に起こりがちな「どう振舞えばよいのか分からない」「誰に聞けばよいのか分からない」といった戸惑いを持つ女性社員に対し、直接アドバイスを与えることもできます。また、その存在を組織の中で「周知(見える化)」することも重要です。
 会社にとって、ロールモデルを作ることは人材育成そのものです。人材育成を進めるなかで、モデルとなる社員が育成されます。そして、社員は目指す目標を持ってキャリアを形成し、今まで以上に能力を発揮できるようになります。そのようなモデルとなる社員が増えることで組織の活性化に繋がります。
(厚生労働省「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」)

女性活躍の視点でまとめられた資料ですが、日本生産性本部が受託して作ったもので、大変参考になります。

働く男性には、一般的に各企業に各年代が揃っていますので、ロールモデルとまでは呼べなくても、将来の姿をイメージしやすかったと思われます。
これに対して、女性の管理職や経営者は比較的少ないため、国としても女性社員のロールモデルやメンターの設定を働きかけている、ということでしょう。

若い社員にとっては、身近なロールモデルがあると心強いですね。
伍魚福でも、継続して人財を採用、育成することにより、一人ひとりが自分なりのロールモデルを設定できるようにしたいです。

そんなことを考える中、「我以外皆我が師」という言葉を思い出しました。
調べると、吉川英治が新書太閤記の中で秀吉に語らせている言葉だそうです。
私も子供の頃から吉川英治の小説が好きで、よく読みましたので印象に残っていたようです。
反面教師も含めて、そういう心構えで常にあらゆるものを師として学び、成長を続けたいですね。

最後までお読みいただきありがとうございました! 伍魚福の商品を見つけたら、是非手にとってみて下さい。社長のいうとおりになってないやないかーとか、使いづらいわー、とか率直なコメントをいただけるとうれしいです。 https://twitter.com/yamanaka_kan