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若いうちにいろいろな経験をした方が良い

…ということはよく言われることかと思いますし、私もよく言われてきました。視野の狭い私は年寄りの繰り言とか先輩風を吹かされているとか、ナチュラルに意地の悪い解釈をしてガン無視してきてしまったのですが、それは今になって強く後悔していることのひとつです。

この意味ですが、他者理解の引き出しをつくるということだったのですよね。

この話は顧客理解講座でもしているのですが、結局のところ、他者を理解するとはその人の心情や行動を正確に洞察し共感するということです。その人が本当のところどうなのかは、絶対にその人にはなれないので絶対にわからないことですが、洞察し共感することはできます。

そして、その人と近い体験を持っている人の方が洞察や共感はし易いのではないでしょうか。例えば、いじめられた人の痛みは、いじめられたことのある人の方が洞察や共感をし易いと思います。
ちなみにこういう「痛みの記憶」は優れたマーケターになるためのひとつの条件ではないかと思っているのですが、機会がありましたら別に触れたいと思います。

若いうちからいろいろな経験をすると、このような他者を洞察し共感するための「引き出し」が、その経験に応じて形成されていきます。そして、おそらくですが経験を積むに従って、その経験同士をくっつけたり分解したりする、具体化・抽象化ができるようになっていくのでは、と思います。

例えば、お酒好きな人のことを理解するケース。
同じようにお酒好きな人にとっては、ドンズバで当てはまるので比較的容易なことと思います。自分の「お酒」にまつわる「引き出し」をそのまま探せば良い。

しかし、お酒が嫌いな人にとって、お酒好きな人の気持ちを洞察したり共感するのは、お酒好きな人よりも難易度が高いことと思います。そしてお酒が好きになるような体験を積むことは、たぶん嗜好や体質の関係で難しいことでしょう。

でも「その人がどうしてお酒を飲むのか」「飲むとどうなるのか」「なぜお酒が好きなのか」ということが理解できればどうでしょうか。

どうしてお酒を飲むのか。多いのはストレス解消目的ですよね。人によっては憂さ晴らしなどもあると思います。
飲むとどうなるのか。もちろんっ払います。気持ちよくなって、悩みとか嫌なことがフワーッと霞みがかったようになっていく。考えなくて済む。生理的な快感に身を委ねられる。
なぜお酒が好きなのか。そんな経験を飲むだけで再現できるから。それが精神的な疲労を忘れさせてくれるから。リフレッシュ。

さて。

ストレス解消はもちろん、憂さ晴らしも「したことがない」という人はあまりいないと思います。誰しも経験があることではないでしょうか。
生理的な快感に身を委ねて、何も考えずに済む。これも探せば経験があるはずです。芸術やスポーツ観戦にいしれた経験がある方はそれなりにいらっしゃると思います。また、例えば睡眠欲求に身を委ねているときも近いかもしれません。布団にくるまってフワフワしているときですね。
そんな経験をもう一度味わいたくなるのは、むしろ人として自然なことと思います。

このような感じで「お酒」そのものを楽しむことができなくても、今までの人生経験の引き出しから、「お酒を楽しむ」を要素分解したパーツに当てはまるものは、持って来られると思うのですよね。
そしてそれらの材料を使って、お酒が嫌いな人でも嫌いなりにお酒好きの洞察をはかることができますし、何なら共感もできる。

いかがでしょうか?
そのものズバリの経験がなくても、こうして何とか他者理解をしようとした経験に、思い当たるところがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。「若いうちにいろいろな経験をする」意義というのは、こういうことだと思います。

これらをひとことで言うと「想像力が働く」ということなのでしょう。

そして当然、これはマーケターにとって重要な意味合いを持ちます。他者理解の延長線上に顧客理解/消費者理解が存在するからです。
他者への想像力がないマーケターは、マーケター足り得ないと思います。

そういうわけで、このnoteの読者にお若い方がいらっしゃいましたら、とにかくいろいろな経験をされることを強くお勧めします。「喰わず嫌い」はマーケターにとっての自殺行為と考えていただいて良いとさえ思っています。

そして、自分がもう若くないと思われている方。
大丈夫です。よく言われることですが、これからの人生でいちばん若いのは今です。
もう既に、人生においていろいろな経験を積み重ねて来られたと思います。だからこそ、努めてコンフォートゾーンから脱してみる、というのが大事ではないかと思っております。

私自身、そうありたいなと。私がそうでなくなったときに、恐らくは感性が鈍り、使いものにならなくなっているのでしょうね。

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