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定性調査を実効性高く楽しくやるために(1)

定性調査、お好きですか?

私は定量調査よりも定性調査が好き(そしてもっと好きなのは観察調査)で、定性調査の機会はできるだけ持つようにしています。前にも書きましたが、定量調査で得られる情報はサマリーであり生々しさに欠けるので、答え合わせにはいいのですが答えを見出す(インサイトを見出す)にはちょっと不向きです。そして私は答え合わせよりも答えを探す方が好きなタイプです。

しかし、いろいろ進め方に気をつけないと、ただひたすら脂汗をかく羽目になってちっとも楽しく無くなりますし、知見ではなくストレスだけが溜まることにもなりかねません。それを避けるために私が気をつけていることを、何回かに分けてお話ししますね。

定性調査(ここではインタビュー調査)の段階としては、概ね以下の通りです。

1)背景や目的を定める
2)誰を呼んで/どんな話を/どういう形態で聞くのかの概要をまとめる
3)スクリーニング調査をかけて対象者を集める
4)インタビューフローを決める
5)日程やオペレーションを定め、見学者を集める
6)実査を行う
7)実査と同時に解釈のすり合わせを行う
8)報告書をまとめる

このうち1)は以下にまとめた通りです。まだの方はぜひお読み下さい!​

1)をしっかりと行えば、自然と2)は決まってきます。意思決定に必要な情報が何かをしっかりと定義できていれば、誰に何を聞くべきかは論理的に導き出せますし、あとはそれに適した環境を整えるだけです。座談会形式にして話の盛り上がりを促すのか、モデレータと一対一にして話しにくい話を訥々と喋ってもらうのか。

なお、聴取対象の属性/セグメントの特徴かどうかは、別のものと比較してを見ないと判断できません。そこも含めて誰に聞くべきかを考える必要があります。ただ、これもやはり論理的に導き出せることですし、その意味で大切なのはとにかく1)です。

また、これはよく言われることですが、仮説の対象としている行動や性向がそれなりに極端な人を選定しておくと、その「」がよく見えます。調査依頼部門からはなるべくマスに近い人の意見を聞きたいとリクエストを受けることがありますが、行動や性向の差が見えにくくなりますので、そこは定性調査の目的の丁寧な説明が求められる部分になります。

3)のスクリーニング調査は、2)で決めたことが漏れなく聴取できているかということですが、意外とうっかり漏れたりするので、チェックリストつくるなどして気をつけたいところです。「あれ?これだと○○条件の人が識別できなくないか?」みたいなことはよくあります。そのままスクリーニング調査が走ってしまうと取り返しがつかなくなります。

ただ、調査票が完璧に出来上がったとしても、該当する対象者が少なければ、条件緩和していく必要があります。というか、この条件緩和が必要なかった定性調査の記憶がありません(笑

当然、妥協できる部分と妥協できない部分の峻別は必要ですが、ここは調査依頼部門の意思を汲むことがある程度必要になってきます。リサーチャー視点では優先度が低いことでも、依頼部門にとって優先度が高いことがあり、そこを無視してしまうと実査で揉めます。「この人の属性は○○だけれど、その人の意見を参考にしていいの?」みたいな、はっきりと言えば余計なことに神経を使う必要が出てきて、実査に集中できなくなります。

このあたりは依頼部門にとっての勘所というか、依頼部門の上長が気にするポイントを把握しておく必要があります。繰り返しになりますが、ここに手を抜かないことが、ストレスのないスムーズな実査に意外なほど繋がりますので、ぜひ気をつけていただきたいところです。

こうして候補者の優先度をつけていきますが、インタビュー調査においてはもうひとつ、喋れる人に来ていただくという大事なポイントがあります。せっかく来ていただいた対象者の方にはたいへん申し訳ないのですが、やはり無口な人より喋れる人の方が、得られる情報が多いのでリサーチャーにとってはありがたいものです。

これはスクリーニング調査ではなかなか判別が難しいのですが、自由回答を取得し、その内容から判断することがポピュラーなやり方でしょうか。私はほぼ必ずそうして、可能であれば回答内容から熱量が感じられる人を選ぶようにしています。けっこう精度が高い印象がありますので、スクリーニング調査票には、必ず自由回答設問を入れておくことをお勧めします。

この段階から調査のキーパーソンになる対象者が見え始めます。「実査には絶対に来てくれよ…」とか祈る気持ちが入ってきます(笑)。

(つづく)

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