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定性調査を実効性高く楽しくやるために(7)

だいぶ間が空きましたが、続きです。
今回は6)と同時に7)についても触れられればと思います。

1)背景や目的を定める
2)誰を呼んで/どんな話を/どういう形態で聞くのかの概要をまとめる
3)スクリーニング調査をかけて対象者を集める
4)インタビューフローを決める
5)日程やオペレーションを定め、見学者を集める
6)実査を行う
7)実査と同時に解釈のすり合わせを行う

8)報告書をまとめる

前回は実査のときに「狼狽えない」ことの重要性を書きましたが、今回は純粋に分析視点となります。

まず、インタビュー調査では概ね4〜6グループの設定にすることが多いと思います。これは当初の課題意識をもとに「誰に聞くか」を定めていくと、だいたいこれぐらいの数に収まるためです(これ以上の数になるときはテーマの抽象度がかなり高い。ひょっとしたら絞り切れていないのかもしれません)。

ただ、私自身の経験則でも概ね以下のような進行がなされるため、4〜6グループというのは適正な数と感じています。

1グループめ 様子見、ポイント発見
2グループめ 仮説発見(漠然とした思いつき)
3グループめ 仮説立案(素案)
4グループめ 仮説構築(精査)
5グループめ 仮説検証
6グループめ 仮説確認(それならこうじゃないか→やっぱりそうだった)

5グループめまでで、仮説の全体像がだいたい見えてくる感覚がはっきりとありますね。

ちなみに、ユーザビリティテストの世界ではヤコブ・ニールセン博士が「5人のユーザーテストで問題の85%はわかる」とおっしゃっているそうです。

むろんこれは、漫然とインタビューの進行に任せれば勝手にそうなるわけではありません。インタビューにより得られた情報を参加者がああでもない、こうでもないと同時進行で検討することが必要です。

検討により見出した「発見」を精査し、これはと思うものをインタビューフローの中にどんどん取り込み仮説を形にしていく。
一方で、もともとフローに入っていたことでも、筋から外れているものは容赦無く切り落としていく。

見落とされがちなことですが、インタビューフローはグループを経るごとに変えていくものなのです。

そして、新しいフローにて実施されたインタビュー内容から見出した「発見」をもとに、同じことを繰り返していきます。

つまり、インタビューにおいて決定的に重要なのはその検討を質高く実施する環境です。以前に運営本部の必要性や、見学者に意思決定者を入れる重要性を力説したのは、まさにこのためです。

余談ですが、とある調査会社の方から「グループインタビューを調査会社のメンバーだけで行い、発注者側が参加しないことはザラにある」と伺ったことがあります。
これだと、よほど調査会社側に自由な裁量権を与えているのでなければ、最初に設定したフローがほぼそのまま最後まで使われることになります。何がどう深堀されるのか私には想像もつきませんし、そのアウトプットがどう意思決定に寄与するのかも全くわかりません。個人的には、ちょっと信じられないアプローチです。

話を戻しますが、その意味ではインタビュー中にリサーチャーは「分析者」と「ファシリテーター」の、少なくともふたつの顔を同時に使いこなす必要が出てきます。

少なくとも、と書いたのは「モデレータ」と「オペレーション責任者」という顔を加えて同時に持つケースがあるためです。これも以前に、私はプロのモデレータにインタビューをお任せするケースが多いこと、事前にオペレーション上の不測の事態の芽を徹底的に潰しておくことを記載しましたが、これらは実査中にリサーチャーの役割を減らし、分析に集中できる環境を整える意味合いを持つということです。

同時に四つの顔を持つのは…正直に言って私の手に余ります。

さて「分析者」と「ファシリテーター」それぞれの役割ですが、分析者はそのまんま、目の前で起きているインタビューの内容を分析し、自分なりの仮説を導き出していく存在です。アンケート調査でローデータや集計表を分析するのと同じようなものです。

一方でファシリテーターは、自分も含めた見学者が質の高い検討・議論を実施し、次のアクションに向けて相互の意見をすり合わせながら合意形成を促す役割です。

何が言いたいかといいますと、リサーチャーはインタビューで話される内容だけに集中してはいけないということです。見学者がインタビュー内容にどのような反応をしているのかも視界に入れ、時にはこちらから話しかけて反応を確かめる必要がある、ということです。インタビュールームと同時に見学者ルームも見なければいけません

長くなりましたのでまた次回に。次回で終わると思います。

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