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Present for you! MVメイキング

えのぐのオリジナル楽曲「Present for you!」のMVが先日公開された。作詞・作編曲はキノシタさんが担当している。

MVについては全編アニメ調になっているのが大きな特徴だ。今回こちらのMVの映像面を全面的に任せて頂き、大部分を私個人のワンストップで制作した。

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自分が担当した箇所を列挙してみると、概ねこんな感じ。

・構成/コンテ/レイアウト
・カメラワーク(旋回シーン等の立体的なもの)
・背景(手描き/3D)
・オブジェクトのモデリング
・エフェクト(爆発や花火など)
・コンポジット

つまるところ、人物と楽曲以外のほぼ全てだ。

「空飛んでもらっていいですか?」と言い出したのも自分だし、雲も自分で描いたし、傘マークですら自分でパスを引いた。リボンのスプラインを組み、雪だるまを描いたのは最後の最後だった。

無論、メンバーを始め様々な方がスタッフとして関わっているため「一人で作りました」というのは語弊がある。が、裁量といい作業量といい、感覚的にはかなり大きいものだった。

なかなか珍しい事例だろうし、個人的な技量がフルに活かせた事例だったので、いくつか要点をメイキング記事としてまとめてみたい。

要するに、久しぶりに物書きをしたくなった。note面白そうだし。

なお、本記事は事前に許諾を得て公開している。作品の裏側を公にすることは本来非常にデリケートな問題を抱えている。ご快諾頂いたえのぐのマネージャー様に心から感謝申し上げたい。

絵コンテのような何か

とにかくコンテという単語には苦手意識がある。自分にとっての映像制作はモーショングラフィックスが入り口であり、ツール上でトライエラーを繰り返しながら作るものだからだ。スタートの時点ではゴールに自由度を持たせていたい。引き合いに出すのもおこがましいが、エヴァンゲリオンで知られる庵野監督の特集番組を見ながら「頭の中で作りたくない」という言葉には強く共感した。

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しかし、今回はコンテをかなり厳密に引いた。そう、感覚的にはこれでも厳密な方だ。えのぐメンバーの撮影を何度でもできるわけではないし、アニメのような「カット」を単位として分けられる映像を作る上でコンテは非常に効果的だからだ。

いわゆる絵コンテ的なレイアウトではなくグリッド状になっているのは、少しでも絵を見ながら俯瞰的に考えやすくするためだ。実験的ではあったがそこそこ効果的だったように思える。

なお、共有する段階ではテキストを加えて絵コンテの状態にもするし、Vコンテも作る。1枚ずつの画像を手動で切り出すなんて石器時代のような真似は避けたいので、グリッドの大きさは計画的に。

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メンバーのレイアウトやポーズについては撮影時のアドリブで決まった部分も多い。口頭で要望を伝えつつとはいえ、ほぼお任せで個性的なポーズを多数とって頂いた。私自身あまり撮影に慣れてないせいもあり「えのぐ、まじですげぇな」と何度も思った。

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飛行シーンもどうなることかと思いきや、皆さん難なく飛んでいただいた。えのぐ、まじですごい。

着地のシーンは短いながら何度も撮りなおした箇所だ。「もう少し、こう、ふわっと」みたいなふんわりしたディレクションに付き合って頂き、本当に有り難いなと思う。

撮影終了頃には「まじで全部作るんだよな…」と、自分で切ったコンテに対し責任感と不安を抱いていたことを付け加えておく。物量とんでもないぞこれ。

コマ落としによるアニメとしての記号化

全体をアニメ調にまとめるのが今回のミッションだ。いわゆる「アニメ塗り」ばかり注目されがちだが、個人的にはフレームレートの管理が肝要だと思う。

2コマ打ち、3コマ打ちという言葉を聞いたことはあるだろうか。ざっくり説明すると、いわゆる日本の「アニメ」は24fpsで作られていて、その上で作画は2fないし3f毎に可変的に行われる。誤解を恐れずに書くと、2コマ打ちなら12fps、3コマ打ちなら8fpsだ。テレビが約30fps、スマホやPCのUIやゲームが60fpsで描画されていることを考えるとかなり低い数字だ。

しかし不思議なもので、アニメルックの映像を機械的に8fpsに落としても「アニメ」にはならない。カメラワークはfpsが落ちていなかったり作画のタメ/ツメがあったりと、アニメ制作工程の生んだ特殊な映像が「アニメ」として記号的に認知されている。アニメ調を目指すのであれば、その特性を把握する必要がある。

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AfterEffectsでこれを実現しようとした場合、真っ先に思いつくのはポスタリゼーション時間だ。しかしピンポイントでフレームを指定できないもどかしさがあり、結局タイムリマップで管理。アニメの撮影用ツールを導入し、かなりのシーンを手打ちでフレーム調整をしている。図はそれをグラフとして可視化したものだ。

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例えば平行移動に近い動きなど、コマを落とさないほうが良いシーンもある。その選択は可変的で、中でも3サビ前のこのカットは途中でその切り替えが発生している。カメラワークや影処理なども相まって、最も難しいカットだった。

人物のシェーダの完成度に加え、このような調整をすることで、違和感なくアニメと認識できるラインに達せたのではないかと思う。が、本当の作画アニメを見ると「アニメーターってやっぱすごいわ」という気持ちになるのも確かだ。

法線マップを利用したハイライトのコントロール

今作は夜が舞台だ。イルミネーションの中をメンバーが駆け回り、夜景をバックに空を飛ぶ。しかし夜だからといって、人物を色調補正で暗くしてしまうと沈んでしまう。目指すのは夜のシミュレーションではなく、あくまで「アニメの夜」だ。

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そこで重要になるのが輪郭のハイライトだ。人物を際立たせるのはもちろん、今作においては周囲のイルミネーションの説得力が格段に向上する。この幅わずか数ピクセルの光の線は、今作で特に力を入れて調整した部分のひとつだ。

ハイライトは作画ではもちろん色分けするし、通常のCGであれば光源やシェーダーを調整する。しかし今回は背景は同時並行で作っているし、なにより目指しているのはアニメだ。狙ったところにピンポイントで光を入れたい、となるとシミュレーション的な手法はかえって遠回りになりがちだ。また特にイラストベースの場合アルファをそのまま輪郭として使う方法も見受けられるが、ポーズによっては限界がある。今回は3D情報があるのだから避けたいところだ。

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そこで今回は法線マップを使ってハイライトを制御している。法線マップとはポリゴンの面がどの角度を向いているかという情報をRGBにマッピングしたもので、これとnormalityを用いることでコンポジット上で擬似的に光源を操作するのが代表的な活用方法だ。しかし今回は法線マップに直接キーイングをかけ、キーカラーと閾値を都度調整することでアニメ調のハイライトを生成している。

こう書くと調整が難しそうだが、結果的にはカラーピッカーでRGBの値を動かすとまるで光源の角度を変えているような挙動になる。思ったより調整は直感的だ。さらに特定色のみをマットにするとピンポイントなハイライトができるし、特定色「以外」をマットにすることで、周囲から照らされるようなハイライトができる。使用機会が多かったのはもちろん後者だ。

なお、この手の処理にはOLM Open Toolsが非常に便利だ。今作でもほぼ全てのカットで使用している。

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これにより、自由度の高いハイライト調整が可能になった。実はこの手法は試行錯誤の中で偶然できたと言っても良いもので、今後とも広く使えそうなテクニックとなった。メイキングを書いて、避けよう、車輪の再発明。考えてみれば至極自然な方法で、既に再発明かもしれないけど。

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特に効果を発揮したのが1サビ冒頭の飛び立つカット。左からはイルミネーションの黄色い光が、右からは夜景の青い光が照っている。短いが場面の転換を伝える大事なカットだ。

なお、この手法は法線マップをベースとしている都合、セルフシャドウ的な処理ができない。肌の色をマットとして組み合わせて使ったり、アルファの境界からの距離で閾値を切ったり…と、あれこれ工夫している。が、シーンによっては余分なハイライトを削るために1コマずつマスクを切ったのも良い思い出だ。1年に1回位で良い。

おまけいろいろ

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夜景は3Dでラフを組みブラシで手描き。「街らしさ」は規則的すぎてもランダムすぎてもいけない、というかそんな一次元的な特徴量には落とし込めない難しさがある。PLATEAUが話題だが、制作時に使えたら夜景も変わったかもしれない。

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この夜景の背景は各所で共通する他、最後のシーンには朝焼けとしても使うため、かなりのリソースを割いた。ぼかすことを前提に局所的に描き込んでいくことでリソース配分を最適化できたのかもしれない。これもワンストップのメリットだ。なお、自主制作以外でしっかり背景を描き込んだのはほぼ初めての経験だった。

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爆発エフェクトはC4Dのクローナーとメタボールで作成したものをコマ落としで作画エフェクトっぽくしている。角度は自由が利くし、シード値によってパターンを量産できる。スマブラを見てると、ゲームのエフェクトは本当に良く出来てるなと度々思う。

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3サビ後半の旋回シーンのカメラ。回り込み系のカメラワークを作るときはいつもこんな感じで、入れ子の階層が深くなりがちだ。これを共有することで撮影データに対しカメラワークを「後付け」していく。

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プレゼント箱は全てモデリングした他、イルミネーション制御用のスプラインを用意した。シンプルながらバリエーション数が必要で根気のいる作業だった。イルミネーションはクローナーオブジェクトでシード値を切り替えることで点滅効果を出している。

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雪の地面はフラクタルノイズでマップを作り、CC Glassとカーブで調整。AEで完結するお手軽バンプマップ的な手法だが、思いの外よくできたのでそのまま採用。

終わりに

読んでいただきありがとうございました。note、初めて投稿してみたんですが口語体で文章を書きたくなる魔力がありますね。そしてUIがさすがに素晴らしいの一言。今後も気が向いたら書いてみようと思います。

最後にYouTubeからクレジットを転載しておきます。

Present for you!

- Music/Lyrics -
キノシタ:https://twitter.com/k1n0shita​

-Movie-
yama_ko:https://twitter.com/yama_ko​

-Cast/Vocal-
鈴木あんず:https://twitter.com/anzu15_225​
白藤環:https://twitter.com/erimakitamaki​
夏目ハル:https://twitter.com/haru_neee​
日向奈央:https://twitter.com/hinao_23ku

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いやほんとお疲れさまでした。ありがとうえのぐ。


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ワクワク映像制作おじさん。カードゲームが好き。 作品・仕事まとめ→ http://yama-ko.net