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【読書感想文】友情と勇気が試される火星の大地『レッド・プラネット』

火星を舞台にした冒険と友情の物語。ジムとフランクは、学校の寮で火星コロニーの人々の命に関わる「移住禁止政策」を知ってしまう。この政策が実施されれば、火星コロニーに住む人々は厳しい寒さで命の危険にさらされることになる。急いでコロニーへ知らせなければならない二人は、通信手段が使えない中、過酷な火星の環境を乗り越え、冒険の旅に出発する。

この作品のテーマは、人類の未来と成長だ。火星という過酷な環境の中で、主人公たちは自分たちの成長を促され、同時に人類の未来についても深く考えさせられることになる。

見どころの一つは、ハインラインが描く火星の生態系と、その中に存在する未知の生物たちである。特に、マーロウとサットンが遭遇する火星人たちは、非常に独特で興味深いキャラクターとして描かれている。彼らは地球の常識を超えた存在であり、火星人との交流を通じて、地球の価値観が揺らぐ様子が印象的で、常に新しい発見がある。

私が本作を読んで感じたのは、友情の力と、人間の勇気がどれほど重要であるかということ。ジムとフランクが直面する困難は、時に絶望的に思えるが、彼らの絆がそれを乗り越える原動力となっている。また、火星の風景や環境描写も素晴らしく、まるで自分がその場にいるかのような感覚を味わえた。

しかし、作品には気になる点もある。特に、男女の描写については、当時の価値観が色濃く反映されており、現代の視点から見ると違和感を覚える部分がある。女性の役割が限られている描写は、もう少し配慮があっても良かったのではないかと思う。とはいえ、これはハインラインの作品全般に見られる傾向でもあり、時代背景を考慮する必要がある。

これらを考慮しなければ、本作は最後までワクワクしながら読み進めることができ、心に残るメッセージを堪能できるだろう。

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