定量調査について※追記・リバイス予定

前の話

マーケティングリサーチャーが関わる調査の大半は定量調査なのではないでしょうか。

ここでいう定量調査とは、いわゆるアンケート調査のことだと思ってください。だいたい今でも、私の手がける調査のうち8割ぐらいは定量調査です。定量調査はアウトプットが「量」の観点で出されますから、エビデンスとしてわかりやすいですよね。

「量」を示せるというのはすごい武器で、偉い人がハンコ押してくれるのは大抵この条件を満たした時です。それは大事なお客様のお金を預かって事業している責任者なんですから、そのお金をドブに捨てて責任を問われるような決断なんてしたいわけがありません。勝算が必要で、それを数字という形で最もわかりやすく表せるのが定量調査だと思います。

当たり前のようなことですが忘れがちなのは、「量」は「差」を表しやすい。これがわかりやすさに繋がっています。1より2の方が大きいのは誰の目にも明らかですよね。
定量調査は、どこまでいってもこの性質をいかに使いこなすかにかかってきます。

そして、差を表すのに最もポピュラーな分析手法が「クロス集計」です。ご存知の方も多い…というか大半の方がご存知かと思いますが、全体をある種類の軸でいくつかに分け、その差をみる手法です。
あるモノに対する満足度が全体で50%だった時に、性別で分けて男性が30%、女性が60%、だから女性の方によく効く何かがある、などという使い方をします。

あくまでも私の印象ではありますが、分析による意思決定サポートという意味合いでは、クロス集計に落とし込めないと上手く行かないことが多かったです。
クロス集計以外の様々な多変量解析を行うことはあります。しかし、リサーチの依頼元である実働部門がすぐに腹落ちして動き出すことを目指すのであれば、ひと目見てすぐに理解できる手法を選ぶのが自然なことかと思います。

だから事業会社のリサーチ分析は「クロス集計に始まりクロス集計に終わる」といっても過言ではありません。

その意味ではクロス集計に落とし込めるようなサンプル設計や設問設計にできるかが大きなマイルストーンになってきます。
以前に、リサーチの依頼を受けた時は大半の時間を背景や目的の理解の時間に費やすということを書きました。ここの理解がしっかりしていると、そのマイルストーンを高い質でクリアすることができます。
つまり、調査企画を立てる前の段階で

■どのサンプルの属性で差を出せば良いのか仮説を立てやすい
■どんな設問で差を出せば良いのか仮説を立てやすい

という状態になることができます。
当然、調査企画は相当に明確な分析イメージとゴールイメージを持つものになりますし、実働部隊としては「結果が出たらどう動くか」というこがイメージしやすくなります。

正直なところ、ここまでが上手く行けば実査以降はほとんど「答え合わせ」みたいなノリです。課題の背景と調査目的の理解に、高い顧客解像度が組み合わさるとほとんどリサーチが不要なほど腹落ちした仮説を立案することはできます。
実際に「この仮説しっかりしているから、もう調査いらなくないですか?」ということを何度か申し入れたことがありますが(笑)、やっぱり「量」で「差」を客観的に示せる、というのはハンコ押す側の方々にとっては抗い難い魅力があるようですね。逆の立場になったら絶対に私も欲しいですし。
とはいえ、ここまで上手く行っていれば、実働部隊は中間報告レベルでもう動き出すことができます。顧客に価値をそれだけ早く届けることができるということです。

さて、この「背景や目的の徹底理解」とは別に、定量調査を成功に導くために大切なことがもう二点。ひとつは言語化、もうひとつはクロス集計軸の定め方です。

言語化は、設問や選択肢を考える際、いちばん仮説を顕著にあらわせる言葉(リサーチでは「ワーディング」という言葉をよく使いますね)を探すときに必要となります。
これもまったく個人的な見解ですが、クロス集計で上手く差が出ないと悩んでいるメンバーから相談を受けた時、よくよく話を聞いてみると選択肢のワーディングが仮説のニュアンスを反映仕切れていない、なんてことがよくありました。「そのワーディングだと、むしろこう受け止める人が多くないか?」というアドバイスをして「ああ〜」と深いため息が出る、などということも割とあった記憶があります。

そもそも背景や目的の理解が甘いと、しょうもない選択肢で構成された毒にも薬にもならない設問になります。そして、せっかく背景や目的の理解が深くても、ちゃんと言語化できないのであれば、やはり同じことになってしまいます。
だからリサーチャーは語彙を増やしましょう。語彙を増やすには、たくさんの表現に触れて、それをアウトプットすることを繰り返すほかありません。

とにかく読んで書く!できれば手書き!自由にかける真っ白な自由帳的なもに書ければベスト!
仕事できる人って、高性能なノートPCなどの他に、必ずフリーハンドで書けるものを準備してたりしませんか?手書きのノートやホワイトボードとか。私もそれに気づいてから意識して用意するようにしましたが、それらを使うことで言語化・概念化能力が磨かれる側面は相当強いです。

もうひとつのクロス集計軸ですが、リサーチの背景や目的を理解すれば、重視すべき集計軸は勝手に見つかります。例えば女性の反応が気になるということでしたら性別になりますし、特定エリアの反応が見たい場合にはエリア別になります。

当たり前のことを言っていると思うのですが、集計表の仕様を出すときに、そこが抜けることは意外と多いのです。そもそも仕様すら取り交わしをしないケースもあります(このあたりのプロセスの不備は「この調査を何のためにやっているのか」を理解しているかについて、相手に大きな疑念をもたらしますので、よくよく注意が必要です)。

うっかり調査の背景や目的を忘れた状態で全問クロス集計のデータを見てしまうことは、どの集計軸を重点的に見れば良いのかわからない状態のままデータに触れることを意味します。その状況は、無味乾燥な数字の羅列の海に放り込まれたようなものです。リサーチが嫌いになる人は大抵こういう状態になってるんじゃないかな(笑)
その状況から実のある分析ができる人は相当すごい人です。私のような凡事徹底しか生きる道がないリサーチャーは、まずリサーチの背景や目的を重視してみましょう。

ともかく、「クロス集計を上手くやるコツ」は、「リサーチの背景や目的を常に心にとどめる」ことに他なりません。最初の段階で理解することとは別に、下流工程に行っても常にこころにとどめておく、ということです。
これは数字を読み解くメソッドというよりも、ロジカルシンキングなどに近い分野かと思います。

なお上記のような仮説検証型とは別に、探索的に(つまり仮説を探すために)クロス集計軸を見ていくということもあります。

探索型といっても仮説ゼロのノープランで集計表を見ることを意味しません。しかし、見るべきところの定まり具合があやふやな状態なのは確かです。

これが楽しくなってくるのは、集計表を見ていて「ん!?」と思わず声が出てしまうような、「引っかかり」を覚えたときです。これがないと無味乾燥な数字をひたすら見続けることになり、結果としてリサーチが嫌いになる、という結末に繋がりやすくなります。

その「引っかかり」をもたらすのが顧客解像度です。自分の持っている顧客の一挙手一投足が、集計表のこのグラフやセルに表れていることを脳が勝手に判断するようになります。しかしそもそもその顧客解像度が低いから調査をする。うーん、どうしよう、という流れになりますね。

そこで定性調査の出番です。
もちろん、定量調査でも顧客解像度を上げることは可能です。しかし「全とは個の集合体である」ことを考えますと、顧客解像度の向上において、「個」がはっきり見える定性調査の果たす役割は大きくなってきます。

次の話

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事業会社のマーケティングリサーチャー。テーマパーク運営会社から人材サービス会社に転職。リサーチャー歴12年(現在進行形)。顧客理解を通じて自身が成長することの楽しさを多くの人に伝えていきいます。40代にして学び直しの大切さに気づいて、遅まきながら別領域も勉強中。二児の父。

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マーケティングリサーチャーが育つということ
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