【開業者インタビューVol.5】趣ある日本家屋をリノベーション。旬を活かして届ける『洋菓子店 まるにつた』
須坂市では小布施町や高山村、各自治体の商工会などと連携のうえ、これから創業される方や創業間もない方への支援事業を行っています。こうした取り組みの中で、やまじゅうも、須坂市のみならず広域を対象に、開業や事業拡大を目指す方へのサポートに取り組んでいます。本シリーズ【開業者インタビュー】では、当施設が関わった開業者をご紹介します。
お話を伺ったのは、小布施町にある『洋菓子店 まるにつた』の店主・田中友里さん。ホッと落ち着く和の空間で、地域の旬の食材を活かした洋菓子を作る田中さんに、開業までの道のりやオープンから今までの様子をお聞きしました。
住宅街にある隠れ家的な洋菓子店「まるにつた」
ーーついに店舗がオープン!ということで、今日はお伺いするのを楽しみにしていました。やまじゅうの利用中から環境や雰囲気にこだわっていらした姿が印象的でしたが、完成した店舗について教えていただけますか?
そうですね。もとから古民家や古いものが好きで、のんびり落ち着いて過ごせる場所を探していました。ここは平成の頃に建てられた建物ですが、純和風の様式で庭も素敵で。店舗のコンセプトは、ご近所の方もちょっと寄りたくなるようなイートインスペース付きの洋菓子店です。
主には金曜と土曜が営業日で、果樹農家を営んでいる実家のフルーツや地域の旬の食材を使い、常時10種類ほどの生菓子を用意しています。
ーーお座敷や縁側を利用したイートインスペースは、本当にゆったりできる雰囲気ですね。近くの方にも利用してほしいとのことですが、この辺りはどのようなエリアなのでしょう。
小布施町と中野市の境のあたりにあって、近隣には農家が多いです。お年寄りの方も多いので、店内には足腰への負担が少ない椅子席を多く用意しているのもこだわりです。無理に格好をつけず、自宅のようにくつろいでもらえたら嬉しいです。
ーー取材日時点でオープンから2週間ほど。今、感じていらっしゃることはありますか?
オープンの日は、仲間を呼んでイベントを企画しました。庭にピザ屋さんとコーヒー屋さんのキッチンカーに出てもらい、友人とコラボのアフタヌーンティーセットを用意して。アフタヌーンティーだけで50名以上の来客があり、朝から夜までパーティのような雰囲気でしたね。来客の多さに少し焦りましたが、翌営業日からは、私自身もゆっくり余裕を持って営業できています。
やまじゅうでのトライアルと並行し、物件探しに奔走
ーー田中さんにやまじゅうを利用いただいたのは、2022年から2023年にかけて冬の時期でした。コラボカフェという、私たちにとっても初めてのスタイルでご利用いただき、にぎやかで楽しかった思い出があります。
もう2年も前になるんですね。あのときは小布施町にあるカフェで一緒に働いていたメンバーに声をかけて、ランチやワークショップも織り交ぜながら利用をさせてもらいました。偶然ながら独立意欲の高いメンバーが集まっていて、お互い独立に向けて刺激し合えた良い時間だったと思います。
ーーやまじゅうでの経験から、今に生きていることはありますか?
お客様とのやり取りや接客、集客の部分だと思います。これまではパティシエとして働いてきたので、厨房にいることがほとんどで、店頭に立つのは初めてでした。特に経験できて良かったと思うのは、お客様がたくさん来てくださったときの対応です。利用中は、タイミングよくテレビの取材が来てくださったこともあり、外まで人が並ぶほどの混雑を味わって。
仲間やスタッフの皆さんと一緒だったからこそ乗り越えられたし、乗り越えたからこそ今は動じずに接客対応ができるようになりました。
ーーテナント探しも並行していましたが、二転三転を繰り返していた記憶があります。その辺りはいかがでしたか?
周辺環境も含めて「いいな」と思う物件は増改築ができない場合が多く、法令上の制限などは、良い勉強になりました。
実は今この建物は、義理実家の母屋を借りているんです。私がトライアル出店や物件探しで右往左往している最中にいくつかの部屋が空いてしまい、「ここでやってみる?」と声をかけてもらったのがきっかけでした。
ーーご家族から声がかかったんですね。
はい。嫁の立場だったので、母屋を使うことにためらいもありましたが「活用してもらえたら嬉しい」と言ってもらって。
当初は民泊なども検討しましたが、大切にしている家を汚されてしまったら悲しいし、まずは自分のやりたいことをやってみようと決心が固まりました。家の周辺は地域交流が盛んで、お祭りのときには獅子舞が各家を練り歩き、神輿を担いだ子どもたちがついて回る風習が残っています。人が訪ねてくることを前提にした家なので、居室も庭も広く立派だったのも決め手になりました。
経験やつながりを作り、広げながらの開業準備
ーー決心から2年の準備期間を経て店舗がスタートしたわけですが、その間はどのようなことに注力されていたのでしょう?
開業準備中は、いろんなイベントに顔を出してコネクションを広げていきました。「まるにつた」として出店を始めたのは2023年の春頃からです。
松本市出身なので北信地域には友達が少なくて、「この1年は売り上げに繋がらなくても出店を続けよう」と決めて動いていました。目的は仲間作りなので、お菓子の販売は得意なものや無理のない範囲に絞り、午後は会場に出ておしゃべりをしていましたね。そういう出店者さんが多いイベントばかりだったので、マルシェをきっかけにいろいろな出会いが広がって、本当に楽しい時間でした。
ーーそうした繋がりを活かした店舗づくりも特徴かと思います。具体的に仲間の力を借りているところはどんなところですか?
エプロンとコックコートは、マルシェで知り合った出店者さんにお願いをして刺繍を入れてもらいました。当初からトレードマークになっているターバンも、仲良しの出店者さんから購入したものです。
さらにいえば、入口にかけた暖簾や席で使うランチョンマット、装飾のドライフラワーも、イートインで出している紅茶やコーヒーも、全体的にマルシェでできた仲間のものを取り入れています。とにかく周りに多彩な人が多いんです。
ーー田中さんの人柄や、巻き込み力みたいなものもありそうです。せっかくなので内装について、お気に入りの箇所も教えてください。
この家に住んでいた祖父や親族が遺してくれた箪笥や屏風、テーブルセットなどでしょうか。片付けをしながら、まだ使えるものを探す作業は楽しかったです。着物の帯などもリメイクして空間づくりに役立てました。
ーー古いものが好き、とおっしゃっていましたもんね。逆に苦労したことは?
覚悟はしていましたが、厨房の動線や機器の使い勝手を考えるのが大変でした。特にオーブンは長く使うものなので、どんな種類を入れるか、どう入れたら使いやすいか、慎重に検討しましたね。そうしたところでは、やまじゅうをはじめこれまでの経験が役立ったと思います。大工さんや専門の業者さん、さまざまな人の手と知恵を借りて出来上がった厨房です。
周囲の力を借りながら、地域も家族も自分もしあわせな起業を
――改めて、開店までの道のりを振り返っていかがですか?
迷ったり思うように進まなかったりしましたが、結果的には、とても幸せな形で店を持つことができたと思います。最初に決めた「まるにつた」という名前は、我が家の家紋から付けた名前です。
洋菓子に果樹園の果物を使うのと、響きの可愛さに惹かれて決めたので、まさか母屋を店舗にするとは思ってもいませんでしたが、これもひとつの巡り合わせかなと。やっぱり嬉しく思います。
――ご自宅で開業することに対しては、不安などありませんでしたか?
不安はありませんでしたね。私の場合は、仕込みのコントロールもしやすいですし、子どもの世話もすぐにできる。自宅で開業って、子育て中の女性にはメリットが大きいのではないかと思っています。事業を進めるには家族の協力も必須なので、以前よりもお互いの話をするようになって、家族の絆は一層強くなりました。
――まさに順風満帆なスタート!これから開業される方、やまじゅうを利用される方にメッセージがあればお願いします。
おすすめしたいのは、お店を始める前につながりを作ること。マルシェに出店したりトライアルをしたり、期限を決めて外に出ると、改めて地域にはたくさんの仲間がいると気づきます。特に北信地域は企画をする場所も人も多いので、いろんな出店者さんが集まって盛り上がっている気がしますね。
今後は「まるにつた」を会場にしてワークショップをしたり、庭にキッチンカーを入れてミニマルシェをしたり。この場所もたくさんの人に楽しんでもらえるようにしていきたいと思っています。
多彩なメンバーが集まっているので、気軽に遊びに来てください。
店舗情報
洋菓子店 まるにつた
住所/上高井郡小布施町押羽659
営業時間/11:00〜17:00
営業日/金・土曜
Instagram/@marunitsuta
やまじゅうでは、起業や開業にチャレンジする皆様をサポートいたします。
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