降り落ちる雨は、黄金色#3
▷第一話【降り落ちる雨は、黄金色#1】
佳代はいけ好かない女だ。こんなやつに、振り回されたくない。言葉を交わしたくない。私の聖域に踏み込むな。彼女は愛されるのが当たり前みたいな、小動物的な瞳をしている。ここは無視してやり過ごそう。そんな私の気持ちを知らずに、佳代が話かけてきた。
「カンブリア紀すきなの?」
「別に」
「きみ変わってるね」
私は直ちに戦闘体勢をとった。屈辱だ。自分の大切にしているものを守るために、戦わねばいけない。胸の奥を炎でジリジリと焦がされている感覚がする。
「...悪い?」
「あたしも好きだよ」
自分の事をあたしと呼ぶ女の子に初めて出会った。その時、空想上の生き物を見た時のように笑ってしまった。彼女の存在はとてもファンタジーだった。つられて佳代も笑った。きれいにカールした睫毛が揺れている。私はその時初めて彼女の瞳を真っ直ぐと見た。照れくささを感じたが、いい友達になれると確信した。
それから私達は昔からの親友みたいに、絶滅動物について語り合った。
「アノマロカリスって空飛べたのかな」
「ふるさと納税でダイオウグソクムシもらえるみたいだよ」
「教室の水槽で飼おうか」
カンブリア紀が好きな事を初めて人に話した。私は学校で初めて呼吸をした気がした。
つづく
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