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降り落ちる雨は、黄金色#27

 津田が逮捕されたニュースのコメント欄を見ると、そこには悪意に満ちた中傷が溢れていた。私はそのコメントを見て吐いた。

 ネットで一度炎上すると、社会復帰できない位に制裁を受ける。本名。顔写真。卒業文集。性癖。家族。住所。すべてが晒される。

 津田は池袋のホテルで未成年に如何わしい行為をした後に、金銭を支払ったとそのニュースサイトは報じていた。

 ふざけんじゃねえ。私の中に怒りがこみ上げてきた。部屋にあった津田の本をびりびりに破り、八つ裂きにした。あんなにも彼のことを尊敬し、津田のアドバイスに従って作品を作ったのに裏切られた。悔しい。私は汚れてしまった。私は影響は受けすぎた。その日、 生まれてはじめて声を上げて泣いた。

 赤い眼を擦りながらスマホに入っている、 津田の連絡先やメールをすべて消した。

 私の体には、得たいの知れないどす黒い何かが渦巻いている。気持ち悪い。書いて、汚れてしまった過去を浄化して埋葬しなければいけない。そうしなければ、私はずっと救われない。

 突然降りてきた、インスピレーションを逃さない為にパソコンのキーボードを無心で叩き続けた。いつか読んだ、津田の本にある一文を思い出した。

「喪失は創作の母である」 

 まったくその通りだ。人は何かを失うとつくりたくなる。今の私がまさにそうだ。彼は小説家としては本当に一流の人だった。津田に憧れていた私、 さよなら。書き溜めたプロットを削除して、津田との日々を吐き出すように小説に書いた。

 執筆中、私は神様に自分の罪を全て 告白しているような神聖な気持ちになった。 作品をつくることで新しい自分に生まれ変わり、清められていく。とても穏やかな気分だ。

つづく、、

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