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降り落ちる雨は、黄金色#26

 短編作品を百本くらい書いたある日、いつも通りに自分のサイトを開くと見知らぬ人からのメッセージがあった。

 その人はコンテンツプロデューサーと名乗っていた。彼は、マンガやイラストや小説を集めたサイトを運営していた。メールには、私の短編小説を運営しているサイトに載せたいという内容だった。

 運営しているサイトを覗きに行ってみた。水色や白を基調とし、 明朝体の文字を使ったシンプルなデザインだった。このサイトなら作品を安心して任せられると思い、私は小説の依頼を引き受けた。

 すぐに小説のおおまかなな話を考え、津田に送ったが相変わらず返事がなかった。その時は、彼の仕事が忙しいと思い気に留めなかった。

 小説の資料用の本を探しに、図書館に行こうとして外に出ると気分が高揚してきた。 いつもと同じ道なのに見るもの全てが美しく光って、愛おしく思えた。木々のざわめきや小鳥のさえずりが、私を祝福してくれる。

 捨てられなかった絶望が、黄金に変わった。踊りだしたい気持ちだ。ミュージカルの映画で突然人が歌ったり、踊り出すのが理解できなかったけど、今なら分かる。それは生きる喜びだ。

大声で笑いながら「ざまあみろ」と叫んだ。 道行く人が私を変な眼で見ている。でも今は全然気にならない。むしろ「ありがとう」と言いたい。今日は私の新しい誕生日。

 これからもこんな風に、ずっとドキドキしたい。 私はようやく新しい世界を手に入れたのだ。この世界はわたしのものだ。

家に帰りパソコンをつけると、とんでもないニュースが飛びこんできた。

「小説家の津田正義。淫行で逮捕」

私はその一文をずっと眺めていた。

つづく、、

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