対局日記③

3/10の新人王戦は、後手番で相振り飛車になった。▲76歩△34歩に室谷さんが▲66歩、僕が△32飛のオープニングだ。
対局の後、三間飛車をやってもらおうと思って。と言われた。なんだか嬉しかった。
お互いに自信を持っている戦型だけあり、序盤から長考合戦。
うまく攻めを組み立てて一気に優位に立ったように見えた。
が、そこからかなり追い込まれた。1分将棋をあんなに長く指したのは久しぶりだった。
最後はなんとか勝つ事が出来た。

藤井先生との対局を控えて、作戦の本命が相振り飛車だったのはもちろんだが、藤井先生の相振り飛車の巧さを考えると居飛車で藤井システムをガチガチに研究するべきか?と考えたりもしていた。
まぁ、少し考えれば、付け焼き刃では通用しない事はわかったのだが。

室谷戦の後、あれ、棋士になってから相振り飛車7連勝くらいしてるのでは?と気付いた。そして相振り飛車が結構好きな事にも。
もう飛車を振って突っ込むしかないと決意を固めた。

そこからの1週間は予定も無く、良い過ごし方を出来た。
病院に行って髪を切って服を買ってメガネを見に行って、それからよく寝た。

もちろんそれ以外の時間は研究だ。しかし、いかんせん的を絞れない。先手を引くか後手を引くかでもガラッと違う。
数ある候補の中で、本譜の作戦も一つの案だった。
△35飛〜△85飛の急襲… 短兵急だと思われがちだが、研究すると有力だと感じた。僕は飛車が動き回るのが好きなので、棋風にも合っていた。
しかし深くは研究出来なかった。文字通りの乱戦だからだ。

3/18はあっという間に来た。今から振り返るとそんな気がする。
朝、総武線が遅れている事が分かって、色々慌ててしまった。余裕を持っていたはずが9時53分の入室になってしまって内心後悔が凄かった。
序盤から気息を整えるために時間を使った。

藤井先生が13手目を指した局面。ようやく落ち着きを取り戻した僕はこの日最初の長考に沈んだ。
通常なら何気ない局面だったが、研究していた△35飛の急襲を決行するチャンスの局面になったからだ。
考えるうち、不思議と迷いが消えた。
25分24秒使って、僕は前に出た。

この日はよく集中出来ていて、なんというか猪突猛進という感じだった。
こんな風に憧れの先生に生身でぶつかっていける。1vs1で勝つか負けるかのシンプルなこの世界の、大きな魅力だと思う。

結果が幸いした事は運が良かったと思う。今は、それなりにだが、将棋に向き合えているから、運や勢いを味方に付けて、ドンドン突っ込んで行きたい。
地力を固める事も大切だ。正直しんどい時もあって、自分が果たして強くなっているのか、これから強くなれるのか、分からなくなる。

将棋以外の事を置いてけぼりにしていいのか?という気持ちもある。
自問自答して、結論めいたものが出ても、簡単に揺らぐ。 揺らがない訳がない。

色々考えて来た、という過程に意味がある事を願う。
そうして点が線になっていくのだろう。太く、柔らかい線になって欲しい。

続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?