将棋観戦のすすめ

こんにちは。皆様お元気ですか?

最近本当に大変ですね。苦しい思いをされている方たくさんいらっしゃると思います。1人の棋士として、とても微力ですが、熱戦、良い将棋、面白い将棋をお見せする事で少しでもパワーを…と思います。
将棋の公式戦は元々無観客試合で、新聞の観戦記やモバイル中継やabemaTV、ニコ生など動画中継のお陰で皆様の元に届くというもので、変わらず対局させて頂き、ありがたいです。

私は最近は対局以外の予定が殆どなくて。無くなったというより元々あんまりないんですけど。
家に引きこもることには自信があります。なんとかマイペースを保っていこうと思ってます。
趣味もあんまりなくて、将棋のモバイル中継を見るのが本当に毎日の楽しみです。
ほぼ家にいるので休日も平日もなくて。休日は対局が無いから中継も無いじゃないですか。ガーンって感じです。

今回は、皆様が棋譜中継を見やすくなるように、プロの公式戦においてどんな駆け引きが行われているかを自分なりに紐解いて行きたいと思います。

最近棋譜中継された中だと、王位リーグの佐々木大地ー永瀬拓矢戦は凄い粘り合いでしたね。

プロになって少し分かってきた事なんですけど、将棋ってちょっと形勢が良くても全然勝つまで大変なんです。
分かりやすい勝ちの局面になればプロなら誰しも「読み切る」事が容易に出来ます。
しかし、「的確な粘り」という技が存在して、それをやられ続けると、勝ちを「読み切る」局面までなかなか行かないんです。
棋士それぞれ「読み切り」を発動出来るゾーンがあって、そこに引き込むまではジリジリ間合いを詰める作業が必要。間合いも色々あって、単純に速度計算しやすい局面まで「距離」を詰めるだけではなくて、様々な「角度」みたいなものもあると思います。
例えば、振り飛車党だと「美濃囲いが残っている」とか、「捌いて、駒効率が良い」とか、手が見えやすくなって勝ちまで読み切りやすい条件、というのがあるんです。

「読み切る」ゾーンのリーチが長い人は詰め将棋が得意な人に多いですね。
間合いの詰め方が絶妙で、リスク管理が徹底している棋風の人は「手堅い」とか「激辛流」とか言われたりします。

で、先程のお二人。スピーディーに勝たれてる将棋もたくさん見ますが、どちらも「的確な粘り」という技のレベルがSランクなんですよ。
なので、どちらも相手に「読み切り」を発動させない。
段々と時間も無くなってきますので、そこからはもう暗闇の中で間合いの探り合いです。
夜戦。私から見たらもう真っ暗闇としか言いようのない混戦に入っていきましたが2人ともギリギリの所で致命傷を負わない。 この辺りは、死線をくぐり抜けてきた棋士の野生の勘とか生命力とかの世界です。

結果、持将棋で指し直しに。ここまでくると体力面でも凄いですね。


さて、私自身は三段リーグを戦うにあたって、「三間飛車」という型にこだわって、「研究」を用いて一気に自分だけ間合いを詰めて「読み切り」を発動して逃げ切る。というのが勝ちパターンでした。
同じ戦法しか指さないことで自分の独特の間合いや「角度」に持ち込みやすく、少ない持ち時間でも「読み切り」を発動させやすかったのです。
また、相手からすると持ち時間や三間飛車の経験が少ない事で「的確な粘り」をなかなか出来なかったんですね。

棋士になって、苦戦が増えました。持ち時間が増えたことで「的確な粘り」をされやすくなったこと。そもそも序盤の「研究」で上を行かれる事もあれば、研究は薄くても先輩棋士には「経験」だけで間合いをかわされることもしばしばありました。なかなか自分の間合いに持ち込めないし、「読み切り」をさせてもらえない。
課題は山積みです…

ここまで読んで頂いた方、ありがとうございます。なんとなくニュアンスが伝われば嬉しいです。

つまり、総合的な力が大事なんです。
近年のプロ将棋は、「研究」にすごくウエイトが置かれているように見えがちだと思うのですが、全然そんなことは無いと思うんです!
「研究」で追い詰めたように見えても「経験」で致命傷を負わないようにかわされて、「的確な粘り」を連発されて間合いをずらされ、こちらが分からなくなったところで「読み切り」を発動されて一気に持って行かれる。

自分自身こんな感じの負け方をたくさんしています。なんとも悔しい負け方です。総合的な力を上げていきたいです。

練習メニューは、研究も実戦も詰め将棋も、体力を考えると走り込みやうな重も求められます。今のプロ将棋はエクストリームスポーツと言ってもいいのではないでしょうか?

どの練習に比重を置くかは人それぞれ。それによって棋風=プレースタイルが変わります。女流棋士の方は男性棋士に比べて棋風が尖っている人が多くて個性がわかりやすくて面白いですよ。

どうでしょうか、プロの公式戦。
新聞の観戦記を読んだり、モバイル中継を見たり、動画中継の解説を聞いたりしてみたくなって来ませんか?

人に何かをオススメする時は敬語の方が良い気がしたので敬語で書きました。

なにとぞ、宜しくお願い致します。

山本博志




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