僕と学級経営

幸せな卒業式から1週間、子ども達との充実の日々の喪失はしっかり寂しさとなって僕の心にポッカリと穴を開けましたが、子ども達がくれた30通の手紙はそんな寂しさを少しずつ満たしてくれる素敵な手紙でした。

「先生の作る楽しいクラスで新しく出逢う子ども達も幸せにしてあげてください」と書かれた手紙がどれだけ僕の勇気になったか。僕と同じ幸せを感じてくれた子ども達は余裕で僕の勇気です、ありがとう。

今年も指を折って終わっていく寂しさを数えられた幸せは、一歩間違えば終わることを楽しみに指を折る虚しさになっていたかもしれない危うさの隣にあります。それぐらい学級は生き物で、一歩間違えたら僕だって楽しみに指を折る側だったかもしれないのです。

学級経営って上手いとか下手で語るのではなく、1年あれば上手くいかない時もあるけれどそれすら一緒に乗り越えていけるかどうかぐらいに考えられる方が結果的に上手くいってるように見えるんじゃないですかね。

上手いの定義がガシッとルールにはめ込んでしまうことや、いわゆる王国を作って従順な子どもにすることだと考えられていることもあるんで、僕は上手い下手の基準がそんな感じなら、上手い時も下手な時もあるけれど目的に向かってブレずに進めるのが良いんじゃないかと思っています。素敵な3月があったか、僕の学級経営はみんなの目にはどう映ったか、また大人になったら教えてね。

僕はみなさんの学級経営の真似はできないし、きっとみなさんも僕の学級経営の真似はできないと思うんです。そこにはHow toを覚えただけじゃ及ばない、人と人とのストーリーみたいなものがあるんですよ。僕だからできること、みなさんだからできることを探すのが学級経営の一歩目かなと思います。

では今回もしばらく僕のお話にお付き合いください。

どんな人になって卒業式を迎えて欲しいか?

僕は卒業式の日に子ども達にこんな言葉を掛けました。

「大丈夫よ、自信持って。みんなは十分に誇るに足るオリジナルだった」

4月、人と違う事を恐れて、誰かと同じでいることを求めて、どっちでもいい、なんでもいい、やめときます、が口癖の子ども達に僕が求めたのは「自分を生きること」でした。

これから予測不能な社会に飛び込んでいく子ども達と、自分はどんなことが好きで、どんなことに幸せを感じて、どんな価値を与えることができるのかを徹底的に見つめる1年にしようと考えたのです。誰かと同じであることは傷つかないで済む簡単な方法だけれど、必要とされる価値にはなり得ないと感じたのです。

僕は学級目標は担任からの初めてのプレゼントだと思っています。

今年の学級目標は「I AM 自分を生きてるか。」でした。

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『I AM 自分を生きてるか。』
7年目。義務教育最終学年の中学3年生の自分はどんなことが好きで、どんなことに幸せを感じて、どんな価値を与えることができる人なのかを知る1年にしようという願いを込めて。今後道に迷う時に何度だって自分に問うことができるようにシンプルに。ロゴはクラスカラーの青から僕の大好きなティファニーブルーを選択。3年2組が1つになれるように⚪︎で囲む。

卒業式の日には、自信を持って自分を生きていて欲しいと願い、そこを目的に4月のスタートを切りました。

何事もどう在りたいかという目的が大事です。ゴールがあるなら歩くスピードやルートは別に違くたって良いんだと思います、それが先生の数だけ学級経営があると呼ばれる所以ですね。

①道徳による学級経営

このクラスが始まって1回目の道徳は授業参観で自作の物語を用いて、違うことは特別だという話を僕と子どもと保護者とで一緒に考えました。

道徳の授業は僕の学級経営の核の1つとなりました。毎回違ったテーマで自分の価値観を根拠に語り合う、そんな機会を毎週積み重ねることは人とは違う自分がいること、また自分とは違う人がいることを丁寧に受け容れていく時間だったと思います。

どうしても蔑ろにされてしまいがちな道徳もそれぞれの価値観を語り合い、心を耕す大事な時間になりました。「あ、言ってもいいんだ」どんな自分も受け入れられる、こんなにも面白い時間はないですから。

②プレゼンによる学級経営

今年の朝の会、帰りの会のプログラムはこんな感じでした。

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朝の会は時間が5分程度しかないため、連絡事項の伝達で終わりますが、帰りの会は15分あるため自由に時間が取れます。中でもこだわったのがプレゼンの時間です。

月曜日は僕のプレゼンで僕の好きなことや得意なことを伝えます。受験生なので「なぜ日本人はリスニングが聞き取れないのか?」や「英語を正しく発音した時に一番近い日本語は〇〇である。Yes≒家康を例に」をプレゼンしてみたり、栄養学をやってみたり。8割は好きな漫才とコントをみんなで見てましたが。だって笑いが多い方が良いじゃん!

火〜金はくじ引きで順番を決めてプレゼンを行います。好きな音楽を紹介する者、クイズを出してみる者、ヨガをやってみる者、地動説を発見した者、「自分の好きなことを熱く語れ!」をテーマにみんな自分の魅せ方が本当に上手になったなと思います。iPadで作るプレゼン資料や動画編集のクオリティもめちゃくちゃに高まった1年でした。子どもはすげぇ。

自分の好きなことを楽しそうに語るとそれがやがて価値になって仕事になるよね、という話をしてきた1年でした。

③班活動による学級経営

係活動のやり方は多種多様、色んなパターンがありますが僕は班(局)に係を与えて、その中にも細かいタスクがあって一人一役を行う班活動のやり方を採用しています。(筑波の蹴球部の真似してれば…ミンナミトマニナレルッテキイタカラ…)

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班活動には係活動のタスク達成に応じたポイントに加えて、課題提出状況やロッカーの整頓状況、授業態度に応じたポイントが入ります。

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毎日チェックしてできたら5pt、できなかったら0pt

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3週間の合計ptの高かった班から次の節の教室の席配置と係を選ぶことができます。席替え(メンバー替え)は各学期に1回の年3回ですが、3週間に1回班の位置が変わるのであんまり不満は出てこなかったです。

この活動の本質は、自分の仕事によってクラスが回っていることを感じること。誰かのために働く、自分の価値を提供し、その対価が得られる社会の縮図です。

本当はポイントみたいな外発的な動機が無くても頑張れる子達なんですが、ちょっと競争性があった方が頑張れるのはトレーニングと同じですね。

④''先生のひとりごと''と''あしあと''による学級経営

僕の1日の仕事は、朝ホワイトボードに僕のひとりごとを書くことから始まります。

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これが効いていたかはわからないけれど、僕の言葉を楽しみにしていたという子がこの間の手紙から何人もいることがわかったので良かったなと思います。何が引っ掛かるかなんてわからないですからね。

あとは''あしあと''というコミュニケーションツールも使っていました。A6サイズのノートに何を書いても良い、いわば僕との交換日記です。文量も内容も自由。絵でもオッケー。以前は毎日やっていましが、それだと空き時間に教材研究できないので火曜日と金曜日のみの提出にしました。好きな音楽やおすすめのアニメ、僕への大喜利など自由、ガチの恋愛相談もありました。30人いると1日の中で喋れる時間も限られてくるんですが、このやり取りをしている間だけはその子と向き合えるのでずっと続けています。

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⑤でも結局大事なのって…

僕の学級経営の核は色々とあって、良かれと思って色んなことをやってきたわけですが、結局大事なのって月並みなんですが、どれだけ本気の時間を子ども達と過ごせたかに尽きると思うんです。

本気で彼らの悩みと向き合って、本気でこうなりたいを支えてあげられる、本気で思ったことを伝えて、本気で叱ることだってある。本気で良くなって欲しいと思ったらたまには手を差し伸べないで見守ることも必要だし、大人の本気の姿を見せることだって大事だし、時にはかっこ悪い姿だって見せて良いと思うんです。本気で愛せばきっと1年後には届くんじゃないかなって思ってます。

僕今年黄金の3日間失敗してるんですよ、特活主任という立場から年度初めの大きな行事に追われて学級よりも学校を優先して、全然目を掛けてあげることができなかった。3日目の日記には「終わった…」とひと言。それでも、1年間かっこ悪い姿もたくさん見せてきたけど、一生懸命さだけは失わないで子ども達に向き合ってきたら、子ども達が助けてくれました。だから本当に幸せな3月を迎えることができた。

これ読んで欲しかったのって、この春初めて教壇に立つ先生方なんです。少しは参考になりましたでしょうか?

7年前の僕がめちゃくちゃ不安で怖かったのを思い出したんで書いてみました。「黄金の3日間失敗すると1年終わりだよ」なんて意地悪にもプレッシャーを掛けられた僕の初任者時代なんですけど、そんなことは決してないですからね。本気で3日間を過ごしてみる、それは前提にありながらも、愛さえあればいくらでも回収できるぐらいに1年間はすいも甘いも噛み締めて味わうには十分な時間だって話です。みんなで頑張りましょ!また素敵な実践があったら僕にも教えてください!














今年もまた素敵な出逢いができるといいな。

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