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#20 『AWAKE』公開中に考えたこと

このnoteは2020年12月25日より全国公開中の映画『AWAKE』の監督・脚本をした山田篤宏が最近買ったMac Book Airを使ってスタバで書いています(ドヤ)。

大分ご無沙汰してしまいました。気がつけばもう2月ですか。公開から一ヶ月以上を過ぎまして、すでに上映終了となった劇場もあります。水は低きに流れ、人は易きに流れる、ということで、公開前二ヶ月間はほとんどnoteの締め切りに追われるように生活していたわけですが、公開して定期更新の縛りを自ら外した途端にこの体たらく…いやすみません。こんなんじゃ磯野に「書けよ」と言われかねません。あ、一応上塗りで言い訳しておきますと、公開に合わせて全部出し切る感じで書いたんで、ネタが無いよね、っていうもうこれどうしようもない事情もあるにはあります。

という中で、我らが新宿武蔵野館さんでの上映は延長して頂いた結果、2月4日(木)まで、となっております。そして池袋HUMAXシネマズさんでは2月11日(木)までの上映延長が決まっております!感謝!

※池袋HUMAXシネマズさんでは冴えない衣装が増えたりしています

もちろん、地方においてはまだこれから始まるというところもあるわけでして、「俺たちの戦いはまだこれからだ!」という感じもありますかね。引き続きよろしくお願いいたします。

で、今回はかなり地味でぼんやりした話になりますが、公開してからこっち、こんなことを考えてました(います)、という話を書こうかな、と思います。改めて久々に言いますが、「初めての商業映画を撮った者」の感想と思っていただければ、と。

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(※あまりにも内容が地味なんで、ところどころ当時の写真でお茶を濁します)

・自分の映画が全国でかかっていることに違和感がある

思い起こせばまだ一ヶ月ちょい前なんですが、すでに遠い昔のような気がする2020年12月25日。僕は朝イチで横浜ブルク13という劇場に向かう電車に乗っていました。それは、当劇場で行ってくれていた「磯野展示」を自分で見たい、と思ったからです。朝イチと言っても既に初回の上映は始まっている時間帯でして、電車に乗っているその瞬間も「知らない誰かが自分の映画を観ている」というのはなんとも不思議な感覚がありました。

こちらとしては、全ての内容は頭に入っているので、例えば上映開始後15分だとこの辺だな、とか1時間だとこの辺りかな、なんてのもすぐ想像付くわけです。なんかこう、うまく説明できないんですがそれを初めて観る人が体験している。あ、今ちょうど磯野出てきて面食らってるところだろうな、みたいな想像ができる、しかも全国で同時多発的に、というのが理解の範囲を超えていました。初日の舞台挨拶で「全然実感がない」というのを連発したのもそんな気持ちからです。

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※幼少期英一の机に(勝手に)置かれた将棋ロボ

・なんか同窓会みたいになった

そして、間違いなく自分史上一番メディアに出させてもらったというのもあって、結果なんか公開前後は同窓会?みたいになりました。金メダル取るとめっちゃ親戚が増えるよ、みたいな話ほどじゃないですが、昔の知り合いがいきなり連絡をくれて、「映画観たよ」「良かったよ」、または「公開おめでとう」みたいなことを言ってくれる機会が増すごとに、上記の「実感のなさ」は多少なりとも和らいで行きました。たまに言いますけど、こちとら20年越しとかでようやく商業デビューに漕ぎつけてるわけでして、その間に親しくなった人には「いつかいつか」という話をしてるわけですよ特に若い頃。そんな中で見届けてもらったというのは相当嬉しいもんでした。

世が世ならねー、よしじゃあ感想聞かせてよ、ご飯行こうよ!となるわけですが、それが憚られるのが惜しい。まあちょっとペンディングで、連絡くれた皆様にはまた改めてその機会を貰えればなーと思っています。

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※奨励会対局(大人編)の撮影時

・評価をどう受け止めるか問題

で、公開して一番何が違ったかというと、これです。「(言ってしまえば)何のしがらみもない人から評価がもらえる」という点。公開前ももちろん試写などでご覧いただいた方を中心に、様々な評価や感想は頂けるんですが、それらはあくまでも関係者や業界内でのご意見なので、なんというかまた質が違うところがあったんですよね。この質の違いには公開してから気づかされました。そして、『AWAKE』の場合は概ね最大限好意的に受け止めてもらったのが本当に良かった。

作品に自信がないのか!って怒られるかもしれないんですが、そりゃ面白い作品にしようとベストを尽くしたというのは間違い無いんですが、正直自分では見倒してるので客観的な評価は全然わかんないんですよ(性格もあるんですけど)。そんな中で、公開以降は悪い評価を目にするのが怖いので、「俺はエゴサはしない、多分しないと思う、しないんじゃないかな」と思ってまして、上記の初日に横浜ブルク13を目指している時も、その時までやってたエゴサーチは一切しなかったんです。ただ、初日の舞台挨拶前のちょっとした空き時間にエゴサ神となっているプロデューサーから、「全然悪い評価が無いから余裕でできるよ!」と聞いてからは、タガが外れたようにエゴサしまくってます……もう自己肯定感の麻薬。いやほんと褒めていただいた方ありがとうございます。こういったご意見を拝見するにつれ、ようやく公開の実感が生まれてきた、というのは本当です。

もちろん、好みの問題的なことはありますし、エゴサをする中で必ずしも好意的ではないレビューを目にすることもありました。これがね、効くんですよ…どのくらい効くかというと、大体100対1くらいのイメージで効きます。良レビュー100でようやく1つの批判を中和できる、みたいな。比較がそもそもおかしいんですけど、なんか心象的にはそんなところがあります。で、あと流石に本来のエゴサーチの意味である、自分の名前での検索と、星取りレビューを採用してるサイトは怖くて見れないです。星はホントダメだ…気にしちゃう。

そんな感じですが、映画そのものの評価のみに留まらず、一部の方々には僕個人にまで言及して頂けているというのが大変意外かつ、ありがたいことでした。正直本作はどエンタメと思っておりまして、作り手の顔が良くも悪くも見えないだろうな、というのは覚悟していたので……。温かいお言葉の数々に、また作品を作っていくことを今はただただ決意しています。

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・陸のタイトル戦撮影中、チーフ助監督五藤さんと本気対局の一コマ(当然勝った)

・活弁シネマ倶楽部の話

そんな流れでご紹介したいのは、公開日に収録して頂いて、初日以降に公開となった「活弁シネマ倶楽部」さんの動画です。若葉くんと二人で出演して、一時間くらい映画の話をさせてもらっています。

聞き手の一人であるライターのSYOさんが、「幾ら貰ったの?」ってくらいの『AWAKE』の回し者のようなサポーターになってくれてまして、自分にとってはほとんどカウンセリングじゃないかと思うくらいの有難い内容でした。偉そうに言わせてもらうと、これでようやくおぼろげながら映画監督としての自身の立ち位置を認識できた番組でもあります。めちゃくちゃマニアックなことも多いですが、他所で話していない話も多くしてますので、ある種集大成的な趣もあります。長いですがお時間あれば是非ご覧ください。

・自分で映画館に観に行くのか問題

最後に、自分の映画を自分で映画館に観に行くべきなのかどうなのか、ここは色々迷いました。ていうのものですね、その昔『チャーリーズ・エンジェル』の主演3人来日舞台挨拶付き上映、っていうのをBunkamuraに観に行ったことがありまして、その豪勢なイベント、主演の3人、キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リューが全員登壇して、しかもその後一緒に映画を観る、というものだったんですね。なので確か普通のスクリーンではなく、オーチャードホールという大劇場でやっていたような記憶があります。で、上映中終始会場全体がその3人が座っている席を気にしながら映画を観ているのではないかというような、微妙な空気に包まれまして……。あれ以来、観客に気を使わせるくらいなら、自分はなるべく端の方にいよう、気づかれないように……と思っています。とはいえ、結局のところ『AWAKE』も数回観ているんですが。

あともう一回は、この先まだ続く上映の中で、公開時の盛り上がりとはまた違ったシチュエーションで、自分としては最後の一般上映でのスクリーンを経験できたらな、と思っています。そのタイミングでわざわざ『AWAKE』を選んでくれたのか、はたまた、たまたま『AWAKE』を選んでくれたのかというお客さんと共に、隅っこの方で観られたら楽しいだろうな、と。

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※そりゃあ撮ってもらっちゃいますよね、という電王手さんとの2ショット。


というわけで、ぼんやりした更新にお付き合い頂きましてありがとうございました。久々につき、いつも以上に締め方がわからなくなっておりますが、引き続き『AWAKE』をどうぞよろしくお願いいいたします。