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シロヤシオの木の下で。初めてのハンモック

3年前、北アルプス蝶ヶ岳からの下山時に出逢い意気投合した女性がいる。

「そのお花、なんですか??」

くらいのひょんな会話から始まりノンストップで山の情報交換をしながら下り、徳沢でカレーとビールで乾杯し名物コーヒーゼリーソフトクリームを平らげた頃には何故か身の上話にまで及んでいて、上高地で仲良く温泉をご一緒しすっかり打ち解けた。

追記しておくと、最近の私は山では割りとドライなたちで、端的な会話・情報交換はするけれど、あまり人と行動を共にするタイプではない。

そんな私の安心領域にスッと入ってきた彼女のコミュニケーション能力の高さというか懐の深さって、すごい。実に気持ちの良い人なのだ。

お互いのSNSを交換し、今度は一緒にお山に行きましょう、と解散した。

なんやかんやあり、その山行の実現は2年越しとなった。

奥多摩は三頭山で再会を果たしたが、東京と思えない美しいブナの森の虜となった。

そこで彼女が一言。

「今日、ハンモック持ってきたよ」

胸の奥のマグマが疼いた気がした。

その日は山頂が氷点下くらいで何だか早く温泉につかりたい気分だったので、ハンモックタイムはお預けとなったが、その日からずっと心のどこかにハンモックがいた様に思う。
後日シロヤシオ目的で西丹沢に行った時、私のファーストハンモックタイムが訪れた。

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実に手際よく、ものの3分もかからずそこにはハンモックが張られた。

この絶妙ブルーカラーが実に彼女らしく、美しかった。

Cocoonのウルトラライトハンモック storm blue 236g

ブランドテーマは「Sleep gear for adventures」とのことで、良質な睡眠にこだわりがあるよう。ハンモックの上部に「リッジライン」がついていて、ハンモックのたるみを一定に保ってくれる事がベストな寝心地につながるようだ。

また、長辺の長さが325cmと長い。多くの軽量ハンモックは300cm以下が多いなかで、長くする事でハンモックの中で体を動かした時の圧迫感が緩和されるとの事。(Hiker’s depotアイテムページより

ちなみに設営方法は2ステップ

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最初に、ツリーストラップを木に巻きつける。

木と木の間は、このハンモックだと大体5mほどが良いのかな。位置は瞳の高さを目安に。

ツリーストラップは幅があるので、幹への負担が緩和されているようだ。

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そして、ハンモック本体から出ている紐の輪っかとカラビナ等でくっつけ、このツリーストラップのニョロニョロ出ている紐を引っ張ったり緩めたりし調整する。

以上。

実にシンプルだ。


さあ、いざ。

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あああ・・・至福。

まず驚いたのが、この生地だ。絶妙に体重がかかる部分が伸びる。手触りはまるでシルクのように上品なのだ。

「20 Denier Hexagonal Ripstop Nylon」この冒頭の数字が生地の厚さに比例していて、20は結構薄めなほう。故にこのしなやかさなのではと納得。

想像以上に素晴らしい寝心地に感動した。Cocoon とは上手く言ったものだ、正に私は繭に包まれたような気分なのである。

彼女はハンモックキャンプも楽しんでいると言っていたが、このまま寝れるのも納得だ。地面の凸凹や傾斜、冷えも気にならないしテントより全然野営にはいいのでは無いか。

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そして見上げればシロヤシオ。至福の極みじゃ。

思えば歳を重ねるにつれ、自分の中で山での過ごし方に変化を感じていた。

登山初期は、富士山に登った興奮と衝撃が強くて、毎年富士山を楽しみに過ごした。7回登った。

その後、山に泊まる事の楽しさを知った。

衣食住を背負って山に入り、山で過ごす夜と迎える朝の時間の美しさに、富士山を遥かに超える感動が全身を突き抜けた。

日本百名山というスタンプラリーを集める様な楽しみにも虜になった。コースタイムより速く歩けた事や、沢山のピークを踏めた日は体が疲れている事さえ喜びだった。雨でも構わず山に入ってとにかく有名な山や道を自分の足で歩きたかったし、身近な友人を誘って皆で喜びを共有できる事が楽しかった。SNSで発信する事にも喜びを感じていて、いいねがつきやすいハッシュタグを調べたりもした。

だんだんと一人でプランし山に入る事も多くなった。メジャーなプランより、ストーリー性やオリジナリティを求める様になった。人付き合いは、前ほどオープンではなくなり、狭く深く、心地よさを優先して物事を判断する様になった。旅にからめた登山も多くなった。釣りを覚えだした。

そして今。

前のように休みのたびに山に入るような日常ではなくなった。

久しぶりに入った山で見た木々が美しくてため息が漏れた。歩いて過ぎていってしまう美しい森や木漏れ日がもったいなくて、もっとゆっくり感じたくなった。

そこに、ハンモック。

まさにドンピシャだった。あの日疼き出したマグマが静かに溢れ出したのである。

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もう8年くらいの付き合いになる、モンベルのくたびれた靴下もすごく喜んでいたように感じる。・・・そして、靴下を買おう、と強く思った日でもあった。

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