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音楽はいつも魔法を求めている。〜映画『メイキング・オブ・モータウン』を観て!

 自分にとって大切な存在になるだろう大好きな作品に出逢った時に言うべきことは、曲なら「聴いてみて」本なら「読んでみて」、映画の場合は「観てみて」ですよね? 感動と確信が深い時ほど、ほかの言葉は不要です。それだと100文字にもならずに終わってしまうので、確信の周辺にあることを少しだけ書き綴ろうと思います。

 ブラックミュージックベースのポップスとして1960年代に一時代を築いたレーベルMOTOWN.僕も大好きなレーベルの一つです。このドキュメンタリー映画では、レーベル創設者のベリー・ゴーディが、生涯の仲間のスモーキー・ロビンソンと一緒に過去を振り返り、リアルにMOTOWNの歴史を語っています。その証言には、ダイアナ・ロス、マービン・ゲイ、スティービー・ワンダーといった音楽の神様のような人たちが登場しています。彼らにとって、MOTOWNが特別な存在であることがよくわかります。少年の頃のマイケル・ジャクソンの天才ぶりも凄過ぎです。全てベリーが見出し、世に送り出したアーティストたちなんですね。

 MOTOWNには、黒人文化の担い手という役割もあったようです。黒人公民権運動で有名なマーチンルーサーキング牧師も登場し、黒人と白人がコンサートで一緒に盛り上がる音楽を創ったベリーの役割を絶賛しています。ニール・ヤングがMOTOWNと関わりがあったのは知りませんでした。(白人の)大物音楽家がMOTOWNはアメリカの歴史であり文化だと語っています。トランプ大統領によって分断が顕在化している今のアメリカのBLACK LIVES MATTERSにつながる話がたくさんありました
 BLM運動を自分の問題に感じることはここに書きましたが、その理由がこの映画を観ると改めて実感できます。

 MOTOWNとデトロイトという街の深い関係も示唆されています。ベリーが、ポップソングの製作工程を、実際に働いていたフォードの自動車製造ラインから思いつき、そのメタファーで会社の組織編成の参考にしているのが面白いです。その後の世界中のプロデューサーにMOTOWNは影響を与えました。日本でも90年代を席巻したビーイングは、MOTOWNを意識した制作体制でした。憧れの音楽Factoryです。
 映画の中で多くの人から「魔法(Magic)」という言葉が何度もでてきます。音楽の魔法を信じてヒット曲を出そうとする人たちのバイブレーションが素敵でそれが映画に熱を与えています。若い時からずっと、老人となったこの映画の中でもベリーは常にポジティブに熱情的に語ります。何か似た人を観たことがあるなと考えて記憶をたどって思い出したのは、キティレコードを率いた多賀英典さんです。僕がお仕事した時は既に業界の超大物でしたが、新人アーティストのデモを持っていくのを本当に楽しみにお待ちでした。気に入ると文字通り小躍りして喜んでくれます。出来が悪いと思うと、こちらがびっくりするくらい落胆して、本当に申し訳ない気持ちにさせられました。この音楽に対するピュアさは凄いなと当時20代だった僕は大きな影響を受けました。多賀さんは経営的にMOTOWNも意識していましたが、ベリーの熱情に一番の共通点があったんですね。当時から僕は多賀さんの伝記映画を作りたいと(あまり訳わからずに)言っていたのですが、今回改めて、「メイキング・オブ・キティレコード」の記録を残すことに取り組みたいなと思いました。

 1900年代後半の現代社会を象徴する自動車産業、その中心地だったデトロイトの経済力と人を引きつける力と、MOTOWNが生まれ、一斉を風靡したことと無関係では無いと、この映画を観ると感じます。
 歴史をアナロジー(類推)で見るすることが好きな僕としては、今や錆びた街と言われ破産が話されるほどデトロイトが没落した時代の変遷を感じながら、2020年代だとどこがデトロイトに当たるのだろか?と考えました。時代感と経済力だと深圳が近いですかね?でも文化大革命と共産党政府のネット検閲が長い中国人にアフリカンアメリカンのような文化的な多様性と蓄積は無いですね。新しいアートフォームを生みだすのには、あるにしても、まだかなり時間が掛かる気がします。
 もしかしたら、「街」の捉え方自体をデジタルを含めた新しい解釈をするべきなのかもしれません。

 そんな難しいことを考えなくても、超名曲が創られていく過程や、リリースするかどうか判断する会議の実情などが赤裸々に語られているので面白くない訳がありません。ビルボードでチャート一位になった時に、抜かれたビートルズから祝福されたとか、胸アツの良い話が満載で、音楽が好きな人や音楽に関わる人は、もちろんmust-seeです。

 僕にとって、音楽はいつも魔法を求めるものであると同時に、素晴らしい音楽を聴くことは個人的に大切な体験です。この映画を観たことが、本当に素敵な貴重な個人的な体験で、終わった時に映画館で1人で拍手していました。残りの人生であと10回くらいは、この映画を観ることになるでしょう。今の時代なのでDVDはとりあえず買わずに、サブスク配信サービスに入るのを待ちますけれど。DL購入はしちゃうかもしれません。
 そして、今最も確実に言えることは、この映画が好きな人とは、一緒に楽しくお酒を飲めるだろうなということです。
 だから、みんな「観てみて」!

2021年3月付追記:Netflixで配信が始まりました!Must-See Movieだよ!!

●THE MAKING OF MOTOWN on Netflix

もちろんSpotifyプレイリストはありました!
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モチベーションあがります(^_-)