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思春期の男子の思いっきり切ない映画3本(+おまけ)

note に #おすすめ名作映画 という募集が出てきたので僕も何か書いてみようと思うのだが、僕は万人にオススメできる映画なんてあるわけがないと思っている。

それで逆にとてもニッチというか、タイプを絞って3作の邦画を紹介するので、タイトルにピンときたり説明文に興味を持ったりした人だけが映像を探して観てくれたらいいなと思う。

で、選んだのが

思春期の男子の思いっきり切ない映画3本

思春期の男子の悩みは深い。僕らの頃は特に女の子のことだった。

女の子にモテたい、あるいは、もうちょっと年齢を重ねてくると、好きな女の子をなんとかモノにしたい、と一日中そんなことばかりが頭の中を占めていた(んだけど、今の子たちは違うのかな?)

しかし、学年一のモテ男とかクラス一の人気者とかではない凡庸な僕らにとっては、好きな女の子に好きになってもらうのは至難の業というか、むしろ絶望的なのだ。それでも僕らはついつい自暴自棄になって突撃し、涙で枕を濡らすことになる。

そして、そういうプラトニックな部分に加えて、純愛と何ら矛盾することなく頭の中に併存したのはセックスへの憧れである。一度もセックスしないうちに死ぬのだけは嫌だ!──中学生の僕は当時真剣にそんなことを考えていた。

そういう男子の切ない心情を扱った映画を3本紹介する。1本目は筋肉少女帯の大槻ケンヂの小説、2本目はみうらじゅんの漫画、3本目は花沢健吾の漫画がそれぞれ原作である。

3本目の『ボーイズ オン・ザ・ラン』の主人公はすでに 29歳なので、「何が思春期だ!?」と思うかもしれないが、この男子特有の呻吟を心の中に抱えている限りは、いくつになっても思春期なのだと僕は思っている。

僕は年間に何百本も映画を観る人ではない。せいぜい数十本だ。でも、特筆すべきは、2005年以降はそのほとんど全てについてレビューを書いて、自分のブログに残しているということだ。今回はそこからの引用を中心に紹介して行きたい。

映画『グミ・チョコレート・パイン』(2008年、ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督・脚本)

「さすがにケラだ!」と納得の脚本だった。

ロビーのポスターを見て「おっ、監督、外人やんけ!」と言ってた少年2人組がいたのが妙におかしかったが、もちろん外国人ではない。「え、そうなのか」と思った人はググってみてほしい(笑)

当時僕が書いた文章から何箇所かを引用してみる:

青春はやっぱ、音楽だった。映画でもあった。そして僕らの時代は(そして、このグミチョコの時代も)マイナー志向、アンダーグラウンドに対する憧れがあった。そして、恋だ。そして性の目覚めだ。焦りだ。バツの悪さだ。間の悪さだ。不器用さだ。そして妙な真面目さだ。

筋は突飛であったり、都合よく運び過ぎたりして必ずしも必然性はないのだが、そこにしっかりと説得力がある。痛々しくて切なくておかしいのである。

12kg 太ってダサダサ高校生・賢三役の石田卓也がいて、アイドルの黒川芽以が同級生の美甘子の役で、むしろ「今考えたらどうしてああいうのを可愛いと思ってたんだろ?」風に映っていて、それが妙にリアルで、そして脇を固める柄本佑が素晴らしい演技をしてる。

「あなたのせいよ」と書き残して自殺してしまった美甘子。彼女ともう少しでいいところだったのにそこまでたどり着けなかった賢三。美甘子が語る「人生はグミ・チョコレート・パインだと思う」という台詞が活きている。

ね、こんな台詞、外国人に書けるわけがないよね(笑)

映画『色即ぜねれいしょん』(2009年、田口トモロヲ監督、向井康介脚本)

明らかにみうらじゅんの自伝的な作品。

僕はこう書いている:

スウェーデンがフリーセックスやなんて、そんなアホなぁ、と今の子たちは思うかもしれないが、僕らはみんなそれを信じて、そして真剣に憧れていた。

みうらじゅんがインタビューで語っているように、「セックスなんて一生できないんじゃないかな」と本当に心配してた。

そういう時代のそういう映画なのである。

最近ではいろいろな映画の脇役で引っ張りだこの渡辺大知の俳優デビュー作である(彼は元々は歌手である)。同じく俳優としてはまだ名前が売れていなかった銀杏BOYZ の峯田和伸も出演している。

そして今作のマドンナは臼田あさ美だ。男子の純真な心を翻弄するという役柄には最高のハマり役である。

彼女については、僕はこう書いている:

んで、何と言っても、マドンナであるオリーブ役の臼田あさ美が、こりゃもう絶品である。『やったぜベイビー!』の宮崎萬純、『グミ・チョコレート・パイン』の黒川芽以と並ぶと言って良いのではないだろうか。

これも切ないのである。少年の憧れどおりには決して物事は運ばない。

映画『ボーイズ オン・ザ・ラン』(2010年、三浦大輔監督・脚本)

主演は『色即ぜねれいしょん』にも出てきた峯田和伸、共演は、『グミ・チョコレート・パイン』の黒川芽以である。

そう書くと、読んでいる人は僕が彼らのファンだからこれらの映画を推しているのではないかと思うかもしれないが、全く逆である。僕はこれらの映画を通して彼らのファンになったのである。特に黒川芽以については虜になってしまった。

さらに言えば、僕は三浦大輔という監督が好きではない。ただ、初めて観たこの映画だけは忘れられないのである。

当時書いた記事からあらすじを紹介すると:

主人公は田西敏行29歳(峯田和伸)。フーゾクを除けば童貞である。ガチャガチャのメーカー卸である中小企業「斎田産業」に務めていて秋葉原回りの営業をやっている。同じ会社の植村ちはる(黒川芽以)に恋心を抱いているが、どうやって接したら良いかも分からない。

そこにライバルの大企業「マンモス」の営業マン・青山(松田龍平)が現れ、田西に親切めかして近づいてきて、結局恋も仕事も全部奪って行く。この松田龍平がまあ見事な嫌われ役を演じていて、本当に憎々しい。

で、田西は一念発起して青山への復讐を誓い、ボクシングを習い、身体を鍛えて、ついにマンモスに殴り込みをかけるのであるが、まあ、そうそう巧く倒せるもんじゃない。そういう切ない話なのである。

最初は巧く行きかけたちはるとの恋も、途中からは田西がどんなに誠意を見せても木っ端微塵に拒まれる。この黒川芽以が良い。今いちイケてないくせになんとなくそそるところが良いのである。

本当に情けない男を描いているのだが、この並外れた情けなさが逆に普遍性に転じたとき、僕ら観客はついつい落涙してしまうのである。

テレビドラマ『やったぜベイビー!』(1986年、日本テレビ、全5話)

上記の文中にも出てきたので、ついでにもう1作紹介しておく。これのハッシュタグは #おすすめ名作ドラマ ということになる。こちらはテレビ番組なので、残念ながらもう一度見ることはほとんど不可能だとは思うが…。

これはビートたけしの自伝的小説『あの人』を原作としたドラマだった。脚本は矢島正雄と小木曽豊一。

ビートたけしの自伝と言えば、昨年 Netflix で公開された『浅草キッド』(劇団ひとり監督、柳楽優弥主演)を思い出す人も多いと思うが、こちらはたけしがもっと若く、17歳のガキだったころの話で、舞台は東京都足立区である。

ビートたけしの少年期と思われる竹村アキラを演じたのは、当時男闘呼組に属していた高橋一也(現・高橋和也)である。その悪友たちが永瀬正敏と、ウッチャンナンチャンの内村光良と南原清隆。そしてマドンナが宮崎ますみ(現・宮崎萬純)だ。

これも切ない。青春と恋とセックスへの憧れの話だ。アキラがマドンナに振られるシーンが痛々しくて、未だに脳裏にこびりついている。

さて、以上が僕がオススメする「思春期の男子の思いっきり切ない映画」である。

思いっきり切ない映画なんて観たくねーよ!という方もおられるだろう。はい、そういう人は観なくて良いです(というか、この文章をここまで読んだりしていないと思うけど)。

だけど、僕らも確かにあんな風だったのである。そこをくぐり抜けたからこそ、なんとか今日まで生きてこられたことだけは確かである。


これをお読みいただいて、もしも元になっている当時の僕のブログ記事を読みたいと言う奇特な方がおられたら、こちらをご参照ください:


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